レビュアー向けには評価キットが届いている模様。
メモリ周りが強化
Radeon VIIが今年初めに情報公開された時、私的には意外な発表だと思った。
何故なら、7nm世代のGPUとしてはNaviが情報として先行していて、ハイエンドモデルの話が出てきていなかったからだ。
NVIDIAがRTコアやTensorコアを搭載したRTXシリーズを発表した時、AMD側はどのような対応をするのか気になったものだが、AMD側が出した答えが、丁度良いタイミングでRadeon VIIだった。
結局はレイトレーシング機能や深層学習的なユニットを装備しない、純粋にGPUとして構成されているRadeon VIIは、7nmプロセスという特徴と16GBというHBM2を実装した製品でしかなく、基本的なアーキテクチャとしては前世代のVegaをそのまま引きずったものである。
しかも、搭載しているGPUユニット数は、Vega64から比べて少ない構成であり、当初私は性能的にはVega64と余り変わらないものになるのか? と思った。
しかしAMDの主張は異なっていた。
性能的には従来より上を行くものとして発表されたのである。
おそらくは、その搭載したメモリ量が大きく関与しているものと考えられる。製造プロセスが微細化しただけでは性能は向上しない。製造プロセスが微細化し、同じ面積で搭載できるトランジスタ数が増えるからこそ、性能は上がるのである。だからAMDが従来品より上の性能だと主張する最大の理由は、倍に増えたメモリ量の恩恵ではないかと今もって予想している。
というのは、NVIDIAのハイエンドシリーズは、メモリを10MB以上搭載しているものが多いのである。最近のゲームは高画質なのでテクスチャデータなども大量に扱うので、ビデオメモリの量が次第に8GBでも足りなくなる事がある。特に4Kを扱うようになれば、確実に足りなくなるので、メモリ量は大きなキーになる。
そういう意味で、Radeon VIIは16GBという広帯域メモリが性能の鍵になるが故に、性能的に従来品を超えてきているものと思われる。
買いなのか?
AMDが言う所の性能であれば、現在AMD製ディスクリートGPUとしては最高峰に来るのがRadeon VIIになるわけだが、その価格は実はVega64が登場した時と同じプライスが付けられている。
その価格、699ドル(税別)で日本円だとさらにその上を行く。
このRadeon VIIは実際問題「買い」なのか?
個人的な見解で言うと、よほどGPU性能に固執しない限りは、見送りで良いものではないかと思う。
製造プロセスとしては14nmから7nmへと微細化し、動作クロックも上昇しているかもしれないが、アーキテクチャは同じだし何より消費電力は微細化しているにも拘わらず同等という状況である。
唯一の利点は前述したメモリ周りの仕様変更で、16GBあるHBM2の帯域の広さとその容量で、今まで性能が伸び悩んでいた部分でメモリアクセスが高速化する事で処理性能の底上げがある程度である。
そのメモリ周りの処理性能の底上げをどこまで重要と考えるか?
「買い」かどうかは、全てそこに集約されると思う。
また、今回のRadeon VIIは、サーバ向けRadeonの「Radeon Instinct MI50」から64bit倍精度浮動小数点演算機能を取り払ったような仕様になっている。この「Radeon Instinct MI50」には上位モデルの「Radeon Instinct MI60」が存在しているので、個人的にはこちらの上位モデルのグラフィックス版も欲しい所。
おそらくワットパフォーマンスの問題でRadeon VIIとしては下位モデルで十分と判断したのかもしれないが、ハイエンドが欲しいと考えている人も少なくはないハズである。
そういう時、ごく少量で上位モデルを出してくる可能性も否定できない。
そう考えると、Radeon VIIが本当に買いなのかは、結構難しい判断になるように思う。
ま、どっちにしても今の私は様子見としている。
予算が全くないというわけではないので、買おうと思えば買えるが、購入メリットを見出すのが難しいという判断から様子見としている。
おそらく2月7日以降にレビューが一斉に出てくるだろうから、まずはその結果を見て判断する事になるだろう。