後継は一つレンジがズレる?
225Wと180W
Radeon RX 5700は2種類がローンチされるらしい。
それはTBP(Total Board Power)が225Wのものと180Wのもの、という事らしい。このTBPは従来の指標であったTDP(Thermal Design Power)とは異なり、GPUが載ったボード全体の電力消費量を表すものと思われる。ちなみにTBPが225WのものはTDPが180Wになり、TBPが180WのものはTDPが150Wになると言われている。
こうしてみると、ボード全体の消費電力のほとんどがGPUに使われている事がよく分かる。
この数値を元に考えて見ると、以前のRX 470である120Wモデル以下は、今回のRX 5700系統とは異なり、さらにその下のレンジに入ってくる。RX470はレンジ的にはRX 570と同等クラスの話なので(実際にはクロックアップでもっと消費電力は上だった)、今回のRX 5700と同じぐらいのレンジにくるハズの話だが、そのRX 5700の下のレンジでも今回はTBP 180W、つまりTDP 150Wとなれば、レンジが一つ上に行くことになる。
製造プロセスが微細化され、省電力化しているかな、と思いきや、実は性能も上がってはいるものの電力レンジも上がり、クラスは一つ上にシフトしているであろう事が見えた感じである。
2系統に分かれるRadeon
今回のComputex 2019で、AMDのRadeonに関して見えてきたのは、コンピュート用途の方向性とグラフィックス用途の方向性では、今後のベクトルは2つに分かれるという事である。
キーノートでも旧来のアーキテクチャであったGCNから新アーキテクチャであるRDNAに変わる、とは一言も言われておらず、コンピュート用途では引き続きGCNが使われるという方向性が示された。
これはNVIDIAも全く同じで、NVIDIAの場合はコンピュート用途としてVoltaが、グラフィックス用途でTuringが採用されているが、遂にAMDも使い分ける方向で進む道が示されたと言える。
また、これによって使われるビデオメモリも2系統に分かれる感じになる。
それはコンピュート用途では高コストだが広帯域のHBM2、グラフィックス用途では低コストのGDDR6という感じである。
当初、AMDはHBM2を使用する事でより広帯域なメモリは良好なグラフィックス性能をもたらすと言ってきたところがあるが、実際は言うほどの性能に結び付いていなかった。おそらく用途的に向き不向きの問題があったためと私は考えている。
この2系統への分岐によって、グラフィックス用途のRadeonは従来よりも性能は格段に向上する…と期待したいところだが、コレばっかりは現実を直視しないと何とも言えない。
正直言えば、7nmプロセスで製造されているワリにNVIDIA製品と比較してワットパフォーマンスがあまり良くない感じも受ける。
まだまだ最適化が甘い可能性もあるので、これは実製品が出てからより詳細に結果を見たいところである。
見えないレイトレーシング
以前、このBlogでも書いたが、Naviのレイトレーシングのハードウェア実装は未だ見えていないところがある。
しかし、Naviを搭載する事が既に明言されている次期PlayStationでは、レイトレーシングをハードウェアレベルで実装すると言われているため、今後のNaviの機能拡張の一つとしてレイトレーシングが存在している事は間違いなさそうである。
PlayStation4の時もそうだったが、実装したGPUはPCのGPUとして提供されていたものの機能先取り版だった。今回も機能的には検討しているものの先取り版として次期PlayStationに実装する可能性もある。
ただ、今発表されているRX 5700は、そのダイの大きさから考えてレイトレーシングユニットを実装している可能性はほぼ皆無と言える。ダイの大きさが小さすぎるのである。だが、このダイ面積が小さいというのは、今の7nm製造にとっては重要な話で、現在立ち上がっている7nmプロセスである液浸版は、ウェハコストが極めて高額になってしまっているので、歩留りの関係から大きなダイは製造したくないというのが本音と言える。
可能性として、次期PlayStationに搭載される頃には、もっとコスト的に有利な製造プロセスが立ち上がっていると見る方が賢明で、そうなれば、レイトレーシングユニットを実装したダイサイズでの生産も歩留り的に可能になっていると考えられる。
AMDは極めてライバルより有利な位置に立っているとみられる。
それは製造プロセスとして7nmにもっとも近い位置に立っており、IntelやNVIDIAが同じ土俵に上がってくるまでにはあと1年くらいは係ると見られているからだ。
なのでこの1年でどれだけ先行できるかがAMDの決め手になる、と私は観ている。
NVIDIAが7nmプロセスでの製造に入り込んできたならば、今のままではワットパフォーマンスで絶対に勝つ事はできない。今のNVIDIAでの12nmプロセスと、7nmプロセスのAMDが同等クラスのワットパフォーマンスだと考えれば、その答えは言う迄も無い話である。
つまり、順調に見えるAMDの快進撃も、実は危うい地盤の上にある、という事である。
少なくともGPUは極めて危うい地盤であり、今後も油断はできない。
それでも以前よりはずっと良好な方向に向かっているのは間違いない。
全てのジャンルで適正な競争が活性化することを期待したい。