結構前から疑問には思っていたのだが。
有機ELのPC用モニター
ずっと以前にはあったかもしれないが、随分と技術革新を繰り返した現代において、私が一つ疑問を持っている事がある。
それが有機ELパネル(OLED)採用のPC用モニタが発売されない事である。
有機ELパネル採用の4Kテレビなどは発売されても、何故か有機ELパネル採用のPC用モニタは発売されないままで、出荷台数に問題があるのかもしれないという漠然とした理由は想像はつくものの、その本当の意味での理由はわからない。
現在有機ELパネルを採用した4Kテレビの主流のサイズは、55~65インチと比較的大きなサイズのパネルのものだが、スマホではiPhone Xシリーズが有機ELパネルなので、作ろうと思えば43インチや32インチ、27インチの4K解像度を持つ有機ELパネル採用PCモニタは作る事ができるハズである。
仮に4Kという解像度がなくてもいい。
有機ELパネルは、その構造の観点から考えて同じ解像度の液晶モニタよりも綺麗な解像感のある画になる事がわかっている。
また、明暗をハッキリ表示する事ができるので、液晶よりも確実にHDR表示をするのにも向いているし、そもそもバックライトを必要としないのでエリア駆動であるとかそういう規制も不要になる。
唯一存在する問題点があるとすれば、リフレッシュレートの問題があるかもしれないが、パネル素子をコントロールするという意味では液晶と甘利変わらない為、120Hzくらいのリフレッシュレートは簡単に出せるのではないかと思われる。
このように利点の多い有機ELパネル採用のPCモニタだが、やはり製造コストが高くなるという理由からだろうか、未だに発売される気配がない。
個人的には、32インチの4K解像度を持つPCモニタなどが発売されれば、ユーザーに受け入れられるのではないかと思うのだが…。
高機能な高解像度モニタ
私が求める機能を持つモニタが、所謂一般的なPCモニタの中でも高機能・高品質なものなのかもしれないが、CPUやGPUの性能向上に比して、今一つ液晶パネルや有機ELパネルの性能向上が追いついていないような気がしてならない。
GPU側は、FreeSyncやFreeSync2、G-Syncなど、高リフレッシュレートに対応する機能に既に対応しているし、接続規格もDisplayPort1.4やHDMI2.0bなど、高解像度やHDRに対応する規格も確立している。
しかし、何故かパネルの対応は全く出来ないわけではないのに、対応製品が出てこなかったりしている。もちろん、パネルの製造は製造ラインの確立等困難を極めるので、製品パリエーションを多数持つ事はコスト増大に繋がる問題だという事は理解するが、世間が追求している機能を実現するだけの性能を保持した製品が出てきていないのもまた事実である。
これでは、折角の高機能も実現できないまま時間だけが経過してしまい、技術そのものが過去のものになってしまう恐れがある。
何故、スパッと実現可能なパネルが出てこないのだろうか?
もし、高い普及率を求めているのだとしたら、もう既にいろんな製品で機能は実装済みだと思うのだが、それでもまだ普及が足りないという判断をしているのだろうか?
製造単価引き下げが難しい
おそらく、製造単価の引き下げが難しい事が狙った製品がなかなか出てこない最大の理由なのだろうと思う。
再編した株式会社ジャパンディスプレイ(JDI)が、結局潰れる寸前にまで進んでしまい、台湾の電子部品メーカー2社と中国のファンドが800億円を出資することが決まってしまった。これにより、台中連合が議決権の49.8%を握る筆頭株主となるわけだが、これによって国内メーカーの意思は通りにくくなった。
事実上、中国メーカーへの技術流出となる可能性が濃厚で、一体何の為に日立と東芝、Sonyの液晶部門が統合してこの会社を作ったのか、意味がなくなってしまった。
もちろん、JDIだけが液晶パネルを製造するメーカーではないが、液晶パネルそのものはゴム印産業と同じで、1画素を設計できればあとはそれをひたすら均一に並べて製造するだけのローテク産業になってしまっているが、それだけに大量生産するのが基本の利益を生みにくい産業になってしまっている。
だから大量に生産して売れるものでないと、パネルはなかなか製造しない。これが新機能に対応するパネルが少ない最大の理由であり、仮にそうした機能に追従したパネルが製造されたとしても、そのコストが膨大になる理由である。
ただ、ここで最も悩ましいのは、PCを含めたIT関連業界は、より高精細かつ高機能なパネルを求めているという事実である。
そうしたニーズがありながら、コストが高いと売れない…そうしたジレンマが、進歩する技術に対して製品があまり展開しない理由になってしまっている。
見守るしかない
非常に残念だが、今の所、欲しいスペックのPCモニタがあったとしても、そうした製品が出るかは、もう見守るしか方法がない。
或いは、発言力のある人を味方につけ、SNSなどで必要スペックを拡散、そういう製品が欲しいんだという運動をするしか道がない。そういう運動がひょっとしたら製品化を促す可能性もなきにしもあらずである。
昔ほど、尖った製品はなかなか出てこない。それは今のモニタ製造の構造を考えればすぐに分かる事である。
残念だが、数で勝負するしかない産業構造の時代に突入してしまった、と諦めるしかない。
まぁ…小さな希望に全てを託すという方法もないワケではないが…結局は受け身でしかない事に変わりはない。
…うーん、もう少しフレキシブルな対応を期待できる状況かと思ったんだが、産業構造を改めて確認してみたら、結構無理っぽい。
時代の変化とは恐ろしいものである。