以前では考えられないシェア拡大。
Ryzen、大躍進
コンシューマ市場において、AMD製CPUが急激にシェアを拡大しているようだ。
これはBCNによるPOSデータの集計から判明した事だが、単体CPUにおけるAMDの販売数シェアは68.6%と過去最高を記録し、初めて50%を突破する事になりそうだという。
このAMDの大躍進の背景には、Intel製CPUの供給不足という問題が影響しているわけだが、当然AMD製CPUであるRyzenの動きが影響している事も間違いのない話である。昨年2018年8月までは、AMD製CPUのシェアは20%前後で推移していたようだが、2018年9月以降、つまりIntel製CPUの供給不足が顕在化してきた頃から、AMD製CPUのシェアは30%を突破し、2019年1月には40%を記録、その後は40%台を維持し、2019年6月には406.7%にまで到達した。
6月の末頃には50.5%と初めて過半数を超え、その翌月である7月には、第3世代RyzenであるZen2アーキテクチャを搭載したRyzen 3000シリーズが投入され、そのシングルスレッド性能の高さから一気にシェアが伸び、68.6%という高いシェア率に到達したとみられる。
IntelのCPU供給不足があったとしても、ここまでAMD製CPUがシェアを伸ばしたのは、やはり間違いなくその性能の高さがIntelに準拠できるぐらいにまで到達したという結果があったからではないかと思う。
Intelの戦略
Intelは2018年秋に現行の14nmの生産キャパシティの拡大に向けて10億ドルの投資を行い、米国、アイルランド、イスラエルの工場の生産体制を強化している。Intel全体では年間合計で150億ドルを投資し、最新の10nmの生産体制の確立にも投資をしてきている。
この結果から、Intelも供給不足に対して生産の対策は行ってきてはいるのだが、諸事情から全てのモデルに対して需要を満たせる状態にはなっていないようで、基本的には高付加価値CPU、つまりCore i7や9、Xeonといった製品の生産強化という方針で動いているようで、普及価格帯のCore i3や5、Celeronといった供給という点においては、需要を満たせる状態ではないようである。
Windows7のサポート終了という所から、今後まだまだPCの入れ替え需要が起きる事は予想されるわけで、Intelもその需要に対して生産体制の強化は続けていくようだが、今後、このAMDのシェア率がどのように変化していくかは、ちょっと見物かもしれない。
AMDとしては、今後はGPUを内包したAPUの製品強化を図っていく必要がある。現在のAPUであるRyzen5系製品は、中身はまだZen2アーキテクチャになっておらず、GPUもまだVega系が使われている。
もし今後Zen2+RDNAの組合せによるAPUが登場すれば、普及価格帯でもAMDのシェア率はさらに伸びる可能性がある。
地味ではあるが、IntelとAMDの戦いは競争原理に則った戦いなので、消費者としては有り難い話である。