全てを内製化するのか?
10億ドルでIntelから買収
Appleが、Intelのスマートフォン向けモデム事業を10億ドルで買収する事を発表した。2019年第4四半期の決算に計上するという。
この買収により、およそ2,200人の従業員がIntelからAppleに移籍する事になり、Appleはプロトコル、セルラー標準、モデムアーキテクチャやモデム操作に関する17,000件の無線技術に関する特許を保有する事となる。買収された側のIntelは、PCやIoTデバイス、自動車といった非スマートフォン分野でのモデム製品の開発は継続し、今後需要が拡大するであろう5Gに注力するという。
簡単に言えば、Intelのスマートフォン向けモデム分野のみ、Appleが吸収し、Intelはスマートフォンから完全に撤退する、という方針を明らかにした、という事とみていいのではないかと思う。
Appleは、一次特許の問題でQualcommと対立していた時期があり、Qualcomm製モデムチップの代わりにIntel製モデムを採用していた時期があるが、今年4月にはQualcommと和解し、Intelはその後スマホ向け5Gモデムの開発からの撤退を発表した、なんて事もあった。
なので今回Appleが買収したのは、スマホ向け5Gモデムの開発から撤退した後のIntelのモデム事業を買収したという事になり、今後Appleがスマホ向け5Gモデムの開発を継続するものと見られる。
全てを内製化するつもり?
Appleは2017年にGPUに関しても従来使用してきたイマジネーションテクノロジーズ社が開発してきたPowerVRシリーズを2年内にやめるとして独自開発の道を選んだ。その時、同時に電源用のパワーマネジメントICも従来のダイアローグセミコンダクター製チップを辞め、独自開発に切り替えた。
Appleは基本のコアこそARMベースであるAシリーズだが、その周辺を固める回路は、どんどんと自社製のものに切り替えてきている。
ここまで内製化が進むと、技術をコントロールするのは楽になるだろう。が、同時に開発の幅はどんどんと広がっていくわけだが、それをしてでも内製化を進めていきたいと考えている節が見て取れる。
昔、SonyがPlayStation3で、半導体を内製化して東芝、IBMとの共同開発で高機能チップ「Cell Broadband Engine」を開発、その後量産で製造プロセスをシュリンクさせる事で利益を出していく方針を採ったが、何となくAppleも同じような方向に進んでいるような感じに見える。
ただ、Sonyの時には開発リスクの方が高く、結果的には「Cell Broadband Engine」の開発コストを吸収する事ができず、PlayStation4ではAMDのAPUを採用するという道を選んだという、残念な結果を残した。
Appleは、スマートフォンの世界で同じ道を歩むとは限らないが、恐ろしく内製率が高くなっているというのは、今の買収劇を見ていても分かる。
正直、相当なリスクを背負った戦略だと私は見ているのだが、私などがそう思うレベルとは異なる内容で進めているのがAppleなので、内製化のメリットはリスク以上のものをもたらすという事なのだろう。
ただ、Appleは中身に関しては内製化を進めているが、外装などまでは考えていないのではないかと思う。液晶などのパネル部材も含まれていないのだから、ホントにブラックボックス化できるものだけを内製化し、それ以外は安い外注で…という戦略なのだと思う。
そしてその戦略製品に人気が集中する日本…というのも、ある意味Appleの狙い通りなのかもしれない。