黎明期のマルチプラットフォームタイトル。
DAIVA の再販版の再販
かつてT&Eソフトが1986年から1987年にかけて手がけた壮大なプロジェクトとして、マルチプラットフォームで展開するソフトが存在していた。
「DAIVA」と名付けられたそのタイトルは、PC-8801 mkII SR版、FM-77版、X1版、MSX版、MSX2版、ファミコン版、PC-9801 VM版と7機種にそれぞれ別シナリオのゲームが発売され、シナリオ的には互いを補完しあうという構成を執っていた。PC-9801 VM版は最終的なまとめとなる完結版なので、立ち位置が異なるだけでなく、ジャンルも唯一シミュレーションゲームになっていたワケだが、そのコンセプトだけで言えば、現在でもなかなか見る事のない壮大なゲームプロジェクトであったと言える。
私の思いで言えば、早すぎたプロジェクトで、時代が時代なら、もっと良い作品になっていただろうと思われる作品なのだが、逆に現代ではコンシューマ機は複数のプラットフォームはあるものの、PCはほぼWindowsとMacという2大プラットフォームしかないので、現代ではこうしたマルチプラットフォームというタイトルになれなかった可能性はある。
こんな「DAIVA」だが、実は2003年にも一度全てのタイトルを纏めた復刻版が発売されている。もちろん、対応するOSは当時における現行OSに対応したソフトウェアとして発売されたのだが、今回、2019年版として再びWindows10対応版の「ACTIVE SIMULATION WAR DAIVA CHRONICLE RE:」として発売される。発売日は9月22日開催の「ゲームレジェンド31」を皮切りにプロジェクトEGGのパッケージ版としてで発売となる。
T&Eソフト
パソコンの黎明期に名作を発売した老舗ソフトメーカーであるT&Eソフトは、私にとっても忘れる事のできないメーカーである。
アドベンチャーゲームの名作「スターアーサー伝説」シリーズは、まだWindowsという共通プラットフォームが確立する前のパソコン世界を知っている人であれば、ほとんどの人が知っているタイトルではないかと思う。
この「スターアーサー伝説」シリーズは、後にVHD版というデジタルビデオ媒体を使ったソフトも発売されたので、その知名度の高さはそれだけでも理解できるものである。
また、名作「ハイドライド」シリーズもT&Eソフトから発売されたタイトルで、最終的には3作目までが作られた。
その他、高速シューティングゲーム「レイドック」シリーズ、1990年に入ると「ルーンワース」シリーズも発売され、パソコンソフトのみならず、徐々にコンシューマソフトの開発も行うようになっていった。
そして当時、非力なパソコンでも3D的な表現を実現したゴルフゲームの傑作「遙かなるオーガスタ」シリーズを1989年に発売している。これは計算は3Dで実施するが、表示するグラフィックスオブジェクトを2Dにする事で、当時としては比較的軽い処理で3D的表現をするという内容のものだった。
間違いなく、パソコン黎明期におけるソフトメーカーとして名を連ねるメーカーである事は間違いないが、そのブランドは2013年に株式会社スパイク・チュンソフトに吸収合併され、解散している。
知的財産
メーカーとしてのT&Eソフトは消えてしまったが、知的財産である作品は現代にも受け継がれる…これは何もT&Eソフトに限った話ではない。
パソコン黎明期には、非力なパソコンの処理をどうやって上手く処理してゲームを面白くするかという工夫に溢れた作品が多い。
イマドキのソフト開発は、結構力任せに開発できてしまうところもあって、目指すべきところが当時のソフトと異なるという問題はあるが、ゲームとしての本質的なところでいえば、黎明期のタイトルは面白いと思わせる作品が多い。
おそらく、ゲームメーカーは、そうしたゲームの本質を見直す時期にきていて、そこに対応できるメーカーが生き残っているのではないかと思う。
演出が綺麗(派手)だから生き残るのではなく、そこにあるコンセプトと表現、造り込みの丁寧さや緻密さなどが、滲み出てくるような作品でないと、ユーザーの心をつなぎ止めることができないのではないかと思う。
最近、レトロゲームの復刻が話題になったりするが、そういう底の部分にあるものをユーザーが感じ取ってしまうのが、今の時代なのではないかと思ったりする。
言うほど簡単なものではないのだが、ゲームの本質を振り返ってみれば、息つく答えは自分(製作者)がまず納得できるのか? という部分がまず必要なのではないかと思う。
モノづくりの難しさというのは、そういう部分ではなかろうか?
なにはともあれ、壮大なマルチプラットフォームタイトルが再び復刻する。
この機会にDAIVAに触れてみるのも良いのではないかと思う。