Noble Audioというメーカーを知っているか?
Wizardが手がける魔法装置?
Noble Audioというハイエンドイヤフォンブランドがある。
高いモノになると数十万円はする高級イヤフォンのブランドで、2013年にジョン・モールトン博士によって設立されたメーカーである。
専門がイヤフォンで、世界的メーカーなのだが、このモールトン博士が実に専門家で、元々聴覚学の博士号を取得していて、聴覚学の講師をしたり、難聴の治療や予防、リハビリ、補聴器の調整などの専門家を経験し、さらに蝸牛インプラントの劇助手としても活動していた人である。
このモールトン博士がタイの補聴器メーカーに努めていた2008年ごろに会社で作ったいくつかのカスタムイヤフォンの写真を米国のヘッドフォン関連コミュニティに投稿し、そこでその技術が話題となりWizardという愛称で呼ばれるようになった。
…コレ、会社としては機密漏洩にならんのか?(爆)
結局その後、自ら独立してNoble Audioを設立するに至った。
そんなモールトン博士が、ワイヤレスイヤフォンを手がけたというから、見逃せない。
まだ商品化していないのだが、クラウドファンディングのMakuakeで「FALCON」と言う名のワイヤレスイヤフォンを公開した。
Makuake -Noble Audio FALCON-
http://j.mp/33vDEvv
実際には、このクラウドファンディングは10月14日18:00に終了してしまっているのだが、一般販売は今月末から行われる。
価格は16,800円前後と、高級ブランドとは思えない程リーズナブル。
しかもモールトン博士が調整して形状設計しているものになるので、とても音が良いというのである。
気にならない方がオカシイ。
音質、仕様、全て良し
完全ワイヤレスイヤフォンとして、最近やたらと注目を浴びたのは、ソニーの「WF-1000XM3」であるが、コイツはソニー独特という音質にチューニングされているので、どちらかというと中低域がやや強い傾向にある。しかも防水ではないので、雨の日に使うには多少不安が残る製品なのだが、Noble AudioのFALCONはその上の仕様を行く。
まず基本的にワイヤレスイヤフォンで一番気になるところと言えば、その接続性である。ブツブツ途切れる問題があると、使用する以前の問題になる。
しかしFALCONは最新のQualcomm製のSoC「QCC3020」を採用し、送信側デバイスから親機側イヤフォンを経由して子機側イヤフォンまでデータをブリッジ伝送する「True Wireless Stereo(TWS)」方式を採用し、さらにそれだけでなく左右イヤフォンへそれぞれデータを伝送する「TrueWireless Stereo Plus(TWS+)」にも対応させてある。
残念ながらTWS+に対応したスマートフォンはまだほとんどないので、これからの機器への対応という事になるが、もちろん現行機器で接続しても接続性は相当に高い。
というのも、Bluetoothデバイスとの接続安定性を高めるアンテナ設計技術「High Precision Connect Technology」を搭載していて、さらに多くの機器との評価を行って確認されている。よほどシビアな環境でなければ途切れる事はまずないと言えるぐらいの品質になっているようなので、安心して良いだろう。
また、再生可能コーデックとしてはSBC、AAC、aptXに対応していて、iPhone、Android問わずに使える。
またバッテリーも10時間再生が可能で、左右ユニットのマスタースワップ機能も備えている。マスターとなった方のバッテリーは消費されがちなのだが、電源を入れる度にバッテリー残量の多い方をマスターユニットとして認識し、バッテリーの片減りを防止する事ができる。
付属する充電ケースはFALCONを3回充電できるので、最長40時間の音楽再生ができるので、これで困る事はまずないだろう。
また、この充電ケースは高速充電に対応し、イヤフォン本体は最大でも1時間で満充電となり、充電ケースも1.5時間で満充電になる。ケースで充電された本体は満充電になると自動的にスリープモードになり、過充電を防ぐようになっている。
そして特筆すべき事は、完全防水を実現しているという事である。
IPX7の完全防水設計になっているのだが、ソニーの「WF-1000XM3」ですらそこまでに到達できていないワケで、これは実にスゴイ事である。
新型ドライバーを搭載
そして気になる音質だが、モールトン博士がチューニングしているだけに、そこは安心してよい部分だが、搭載しているドライバーユニットも今までにないものが搭載されている。
「Dual-layered Carbon Driver(D.L.C. Driver)」というユニットが内蔵されており、これは振動板の樹脂層の上に、カーボンファイバー層を重ねた特殊二重構造になっていて、従来製品によく搭載されるグラフェンドライバーと比較して歪みを半分に低減している。
このドライバーユニットを活かす為に、アコースティックダンパーによるチューニング、DSPによるドライバー特性の調整、物理的なチューニングなど、そうしたチューニングをモールトン博士が実施しているワケである。
ま、言葉でどんなにスゴイ事を言っても、感じ取る事はできないので、実際には試聴するのが一番なのだが、もし店頭に並ぶような時期がきたら、ぜひ一度聞いてみる事をお薦めする。私もぜひ聴いてみたい一品である。
ポイントは、その聞こえる音が完全防水の上に達成されているものである、という事。
「WF-1000XM3」のようにノイズキャンセリング機能はないが、良いものは良いという事がよくわかる仕上がりではないかと予想している。
買い足してもいいかな…
私は現在、Jabra Elite Active 65tという製品を使用している。
補聴器や聴覚計測機器を一社で製造できるjabraが手がけたJabra Elite Active 65tも、その接続性に関しては十分な性能を持っていて、特に左右のユニット間の通信には医療機器で使用されるNFMIによる通信を採用していて、音声遅延が全くない素晴らしい製品である。
ただ、後発だけあって、Noble AudioのFALCONは価格的にも、性能的にも上を行く事は間違いない。今ならその仕様をも比較した上で迷わずFALCONをオススメするだろう。
そんなワケで、私的にはJabra Elite Active 65tも使いつつ、FALCONを買い足してもいいかなぁ、と思ったりもしている。
というのは、iPhone Xで使用するイヤフォンをFALCONにして、Jabra Elite Active 65tを自宅PCのBluetoothヘッドフォンとして使用するでもいいかな、という事を考えているからだ。
もっとも、私は自宅では有線ヘッドフォンでAKGのK702をYAMAHA AG03経由で使っている時もあるし、ワイヤレスならソニーのWH-1000XM2が使える状態にあるので、ヘッドフォン環境は十分すぎる程充実している。ただ、イヤフォンの小ささは一度使うとその行動制約のあまりのなさに感動すらする。
ここにワイヤレスイヤフォンを追加するのもアリかな、と思い、FALCONを買い足すのも一つの選択肢かなと思った次第である。
最近は左右独立型ワイヤレスイヤフォンの商品数がバカみたいに多く鳴っているので、何が良くて何がダメなのか、判断が非常に難しくなっている。
だが、製造されたメーカーの出自を一つの参考にするというのは、有効な手段ではないかと思う。
もちろん、最終的には試聴するのが一番である。
自らに合った製品を選ぶのが一番賢い買い方なのは、今も昔も変わらない普遍の摂理である。