新型Threadripperも解禁。
11月25日
AMDがメインストリーム向け最上位のCPUとなる16コア/32スレッドの「Ryzen9 3950X」を11月25日に発売すると発表した。価格は749ドルで、日本での販売だと1ドル=110円で換算しても82,390円なので、実売は9万円程度になるのではないかと予想される。
元々は9月中での発売を予定していたのだが、歩留り(だと思われる)の問題から延期されていた。
メインストリームとしては初の16コア/32スレッド製品ではあるが、多コア故にベースクロックは若干低めの3.5GHz、ブーストクロックは4.7GHzと設定されている。また搭載するL2とL3キャッシュの容量は合計72MBに達し、TDP(Thermal Design Power)は105Wになる。
性能指標は、ライバルのIntelコアでいえば対抗馬としてCore i9-9920X(12コア/24スレッド、3.5~4.4GHz)になる。しかしCore i9-9920Xはクロックが低いため、ゲーム性能ではCore i9-9900Kが上回り、クリエイティブアプリケーションが中心の処理性能になる。
Ryzen9 3950Xは、ゲーム性能でCore i9-9900Kと同等でクリエイティブアプリケーション性能でCore i9-9920Xに18~79%高い性能を実現できるとしている。
いいとこ取りをしているような感じの味付けのようだが、AMDのコアはどうもベースクロックなどが高めに設定されている事が多く、熱問題で性能が伸び悩む事があり、意図的にクロックダウンさせてやると上手い具合にブーストクロックがかかり、性能が伸びる傾向がある。
これらは実際にベンチマークを採ってみないことにはわからない話でもある。
また、IntelはもうすぐCascade Lake-Xを投入予定で、価格的にもっとも近いコアとしてCore i9-10940X(14コア/28スレッド、3.3~4.6GHz、価格784ドル)が登場する予定なので、直接のライバルは今後Core i9-10940Xになるものと思われる。
Eco-Mode
Ryzen9 3950Xは、空冷のCPUクーラーを付属しない形で発売される。空冷での運用ができない、という事ではないようだが、メーカーとしては280mm以上のラジエータ付きの一体型簡易水冷クーラーの利用を推奨している。
つまり、かなり発熱する事が予想されるのだが、そこで注目されるのが、新たに搭載される予定となっている「Eco-Mode」という存在である。
このEco-Modeは、消費電力を製品定格の約44%減の65Wにする事で、性能低下を23%減、つまり本来の定格性能の77%にしながら、動作温度を7℃低下させるというモードである。
先程、AMDのCPUはクロックダウンする事で性能が伸びるという事を書いたが、消費電力を抑える事で、より電力当たりの性能を引き上げる事を目的としたモードがEco-Modeになる。
最高性能を引き上げる機能ではないのだが、TDP 65Wレベルの消費電力で8割弱の性能で運用する事ができるので、最高性能は追求しないがハイパフォーマンス性能は欲しい、という人には向いている機能かもしれない。
32コアのスゴイヤツ
さて、もう一つ発表されたThreadripperの話。
このRyzen9 3950Xの発表とほぼ同じタイミングで、HEDT用CPUである第3世代Zenコア搭載のRyzen Threadripperが発表された。
第3世代Ryzen Threadripperは、大幅なプラットフォームの刷新が入り、従来と異なるソケット形態となった。従来は「Socket TR4」だったものが、新しい「sTRX4」というものになった。
チップセットも「AMD TRX40」というものになり、CPUとはPCI Express4.0x8で接続される。CPU側に56レーンのPCI Express4.0を持ち、このうち4+4レーンはそれぞれNVMe x4及びSATA 6Gbps x4と排他利用で接続できる。
もちろんチップセット側にもPCI Express4.0を16レーン持っており、4+4レーンはSATA 6Gbps x4と排他利用できる。
要するに、プラットフォーム全体で言うと最大72レーンのPCI Express4.0を持つという、コンシューマ向けとしてはとんでもない帯域幅を持つ構成になる。
他にも、CPU側に4基のUSB3.1を持ち、チップセット側にも8基のUSB3.1を持つ。インターフェース関係でこれで困るという事はまずないだろう。
メモリに関しては、QuadチャネルのDDR4-3200が接続可能。搭載しているダイが複数であるため、どのようなメモリアクセスになるのか分からない。メモリアクセス速度がどうなるかは以前のThreadripperと同様の問題が考えられる為、実際の動作を確認してみる必要はあるだろう。
Athlon 3000G
最上位クラスのCPUばかりの発表でなく、同日にはローエンド向けのAPUである「Athlon 3000G」も発表された。こちらは11月19日に発売され、価格は49ドルとなる。
2コア/4スレッドで、3.5GHzで動作する。GPUとしてはRadeon Vega 3グラフィックスを内蔵し、TDPは35Wとなる。
競合するコアはIntelのPentium G5400で、PCMark10で25%、ゲームで約2倍の性能差がある、とされている。
このAthlon 3000Gの最大の特徴は、倍率ロックフリーになっているという点である。
つまり、49ドルのAPUだが、オーバークロックによって更なる性能向上が見込める為、冷却性能を引き上げてやれば、まだまだ性能は延ばせる可能性を秘めている。
ちょっとしたミニPCを自作で組んでみよう、という人にとっては、実に魅力的なAPUではないかと思う。
Intelも何とか対抗しようといろんな手を打ってきてはいるが、今のAMDは凄まじい勢いが感じられる。
ただ、最上位品に関して価格は魅力的ではあるものの、性能の伸びに関してはそろそろ頭打ちかな、という気がしてきた。ただ、それでも優位である事に違いはない。
AMDが今一番注力しなければならないのは、やはりGPUではないかと思う。APUにしても内蔵するGPUの強化で今よりずっとパワフルになるわけで、Intelも今、Xeアーキテクチャでこの部分の底上げを狙っている。
何時までも同じIntelだと思っていたら、また追い越される可能性がある以上、AMDにはさらなるGPU開発をお願いしたいところである。