これは気になるポータブルヘッドフォンアンプ。
Nutube
Nutubeという現代版の真空管を知っているだろうか?
過去、当Blogでも取り上げた事があるが、KORGとノリタケが共同開発した新しい真空管である。
真空管特有の豊かな倍音特性を持ちながら、省電力化や小型化を実現したもので、デジタルとアナログの橋渡し的な存在である。
このNutubeを採用した製品が2017年あたりから登場しているのだが、あまり採用されたという話を聞かない。個人的には残念な感じしかしないのだが、ここにきてKORGがポータブルヘッドフォンアンプのキットという形で発売する製品が発表となった。
「Nu:tekt HA-S」と呼ばれるその製品は、2月下旬に発売する予定で、価格は25,000円前後になるという。
ハンダ付けを必要としない組立キットなので、初心者でも簡単に組立てられるというから、期待したい。
もう少しNutubeを説明しておくと、Nutubeは従来の真空管と同様に、アノード、グリッド、フィラメントで構成されている完全な三極管として動作するもので、真空管と同様の非常に豊かな倍音特性をもっている。しかし、通常の真空管はエネルギー効率が悪く、一般的に真空管アンプは消費電力が大きい。しかしNutubeはそうした真空管の弱点を克服、より小型で安定的かつエネルギー効率が高い事が売りとなっている。寿命は約3万時間と言われていて、一日10時間聞いても8年くらいは持つというのがNutubeの特徴である。
2つのモード
「Nu:tekt HA-S」はNFB(負帰還)スイッチを搭載していて、高音質でクリーンなサウンドと温かみのある倍音豊かな真空管サウンドを切り替える事ができる。負帰還スイッチがOFFの時は帰還しない回路を採り三極管の持つ倍音特性がより増強され、負帰還スイッチがONになると歪み率と倍音が低減されたHi-Fiサウンドになる。
このサウンドを切り替えられるという特性から、出力段のオペアンプを2種類搭載していて、一つはJRCの最高峰オペアンプ「MUSES01」が搭載され、もう一つは正統派「NJM4580」が搭載されている。これらオペアンプはソケットで実装されているので、交換も可能。回路図も同梱されているので、知識のある人であればカスタマイズが可能になっている。
組み立てキットで25,000円を高いと見るかどうかは、人によりけりだが、カスタマイズ製を考えたりすると、私的には十分「アリ」な製品ではないかと思う。
ちなみに電源はアルカリ乾電池2本で9時間駆動する。イマドキのUSB充電可能なバッテリーでないというのがマイナス点になるかは人それぞれだが…たしか乾電池型のmicroUSBで充電できる充電池というのがあったかと思うが、それで運用すれば事実上バッテリー駆動も可能ではないかと思う。
個人的には「Nu:tekt HA-S」は面白い製品ではないかと思う。
古き良き真空管アンプの音を手軽に楽しめるという意味では、デジタル漬けの日々を送る人にこそお勧めしたい製品である。