ありそうでなかったボイストレーニング向けチューナー。
KORG VPT-1
KORGから、今までありそうでなかったボーカル用チューナーが発売になった。
正式名称はKORG「VPT-1 Vocal Pitch Trainer」という製品なのだが、声を五線譜表示し、ピッチ(音程)の上下をLED表示、視覚的に歌のピッチを確認することができる。チューニングの厳密さは3段階で調整可能で、ギターなど楽器で使用するチューナーとほぼ同様の事が可能になるものである。
当然、基準音を発振する事もでき、入力した声に近い基準音を発振するサウンド・バック機能も搭載されている。
これでボイストレーニングが今まで以上に正確に捗る事は間違いない。
電源は単4形アルカリ乾電池2本(3V)で駆動し、約300時間使用することが出来る。
価格は3,800円(税別)なので、ちょっとしたボイストレーニングに使うにしても導入しやすい価格ではないかと思う。
KORG VPT-1 Vocal Pitch Trainer
https://www.korg.com/jp/products/tuners/vpt_1/
ま、こういう機器は一般ではあまり使うことはないかもしれないが、声を商売にしている人や一般でも音楽を趣味にしている人で、ボーカルを組み込んでいる人などは、使い道が多分にあるのではないかと思う。
こういう機器を見た時、VOCALOIDとかをやっている人が「これ、ひょっとして使えるかも…」とか思うかも知れないが、VOCALOIDとかは逆にピアノロールで声の音程を入力して出力するという、実際の人間とは逆の音の出し方をしているので、こんな機器などなくても正確に音程やピッチを合せて声出力しているので、全くの無意味である。
声も楽器
このように、KORG「VPT-1 Vocal Pitch Trainer」とVOCALOIDの関係を見たりすると、声はやっぱり楽器の一種だという事を改めて知る事になる。
世の中にはボイスパーカッションなんて特技もあったりするので、これもまさしく声…というか人間が出す音を楽器化している事と同義である。
そういう意味で、VOCALOIDを作り上げたYAMAHAは、その声が楽器になる、という側面をよく分かっていたんだと思う。そういう発想をしないと、VOCALOIDなどというものが生まれるとは考えにくい。
だが、一度VOCALOIDのようなものが広まってしまうと、人々の意識の中では、おそらくそんな小難しい事を考えて使う人などおらず、コレで何ができるのか? という事を追求し始める。それが昨今のVOCALOID人気を支えている根幹にある。
そしてまた、このような事は何もVOCALOIDという単一のプラットフォームで行わなければならない事とは違う、と考える人も出てくる。
そういう流れから出てきたのが、おそらく中国発の「Synthesizer V」ではないかと思う。
Synthesizer V
2018年12月25日、正式版がリリースされた「Synthesizer V」は、中国人の天才少年、Kanru Huaさんが開発した歌声合成ソフトである。
ソフトウェアの考え方としては非常にVOCALOIDと近い考え方のソフトで、メロディーと歌詞の情報を入力すれば歌わせる事ができる、という点でも非常に似ている。
Synthesizer V
https://synthesizerv.com/jp/
現在では、スタートアップ企業「Dreamtonics」が「Synthesizer V」を提供しているようだが、80USドルで永久ライセンスを購入する事ができるが、基本無料トライアルでもほぼ全機能が使える。
動作仕様としてはWindows、Linux、MacOSと3プラットフォームに対応し、日本語、英語、中国語の歌声ライブラリが用意されている。
もともとこの「Synthesizer V」は前身となるソフトウェアがある。それが「Moresampler」というソフトで、2016年あたりには知名度は結構あったものである。「Synthesizer V」はこの「Moresampler」を新たに設計し直した5世代目にあたるソフトウェアなのだそうだ。
初音ミクなどで有名になったVOCALOIDは、何だかんだと始めるには結構な費用がかかるが、こちらは80USドルで始められ、しかもそれらは全て日本語での運用が可能である。
しかも、この「Synthesizer V」は標準でスタンドアローン型として使う事もできればDAWのVSTインストゥルメントのプラグインとしても使用する事ができる。
VOCALOIDでもVSTプラグインとして使用する事はできるが、別に準備する必要がある。この辺りの身軽さでは「Synthesizer V」が圧倒的に有利ではないかと思う。
ま、音声ライブラリではVOCALOIDの方が圧倒的に充実しているので、VOCALOIDの方が良いという人も多いとは思うが、ソフトウェアは導入のしやすさとハードルの低さが普及の鍵なので「Synthesizer V」も目玉となる音声ライブラリが一つ出てくればVOCALOIDに並ぶソフトウェアになるのではないかと思う。
冒頭で紹介したKORG「VPT-1 Vocal Pitch Trainer」とは話のメインが異なってきたが、人の声は十分楽器であり、それを使ったいろんなコンテンツが今は簡単に作れるという事を言いたかっただけである。
実際にリアルタイムで自身の身体を楽器にするもよし、デジタルデータで声を楽器にするもよし、いろんな表現が可能な時代になった事は素直に喜ぶべき事だと思う。