これから期待したい一品。
Surface Pro X
MicrosoftからARMベースCPU「Microsoft SQ1」を搭載した13インチタブレットPC「Surface Pro X」が発売され、店頭に並んだ。
2019年の秋にMicrosoftから製品発表があった時には、まだ未発売だったものだが、その当時からARMベースCPUが搭載されている事で注目されていた一品である。
製品ラインナップとしては、メモリ8GB/ストレージ128GBモデル、メモリ8GB/ストレージ256GBモデル、メモリ16GB/ストレージ256GBモデル、メモリ16GB/ストレージ512GBモデルの4つのモデルが存在し、価格は順に142,780円、164,780円、204,380円、241,780円(全て税込)となっている。
本製品はタブレットPCなので、2in1として機能し、キーボードとペンは別売りになる。本体と同時に発売されており、「Surface Pro X キーボード」が18,040円、「Surface スリムペン」が17,490円、「Surface Pro X signature キーボード(Surface スリムペン同梱)」が32,560円となる。
搭載されるWindows10は、Windows10 Home Editionで、ARMアーキテクチャで動作する専用OSになる。最大の特徴…というか問題は、x64アプリが動作しないという事で、x86アプリしか動作しない。使えるアプリケーションに相当な制限が発生するのが、最大の問題、と考えるが、それを割り切って使って行くしかない。
ただ、誤解して欲しくはないが、64bitアプリケーションが全く動かないというわけではない。Surface Pro Xで動作するのは、Windowsのx86アプリケーションと、ARM86アプリケーション、そして64bitのARM64アプリケーションが動作する。つまり、Windows上で動作するARM用の64bitコードである「ARM64」という分類になるアプリケーションは動作する。つまり、今後ARM64のアプリケーションが登場する予定がある、と考えて間違いないだろう。
その影響なのか、ウィルス対策ソフトに関してはWindows10に標準搭載されているWindows Defenderしか使えない、という制限もある。この辺りはよく理解した上でSurface Pro Xを見ていく必要がある。
ハードウェアとしては申し分なし
ハードウェアの特徴としては、13インチPixelSenseディスプレイ(2,880×1,920ドット)、Qualcomm製LTEモデム内蔵、11ac無線LAN、Bluetooth5.0を搭載し、インターフェースとしてはUSB3.2 Gen2 Type-Cが2個口、Surface Connectが1個口、nanoSIMスロットが1個口、搭載されている。
なお、Qualcomm製LTEモデムを内蔵しているだけでなく、これに接続されるSIMは、前述のnanoSIMだけでなくeSIMもサポートしている。
これらインターフェースでの問題は、ARM版Windows10向けのドライバを必要とする事である。このような制限事項の詳細は、Webサイト「Microsoftドキュメント」に掲載されている…としているが、正直「Microsoftドキュメント」を見ても非常に分かりづらく、一部はまだ英語サイトのままになっているので、大きな期待はしない方が良いと私は見ている。
そう考えると、一種「人柱的」な側面をまだ持っている製品というイメージが私にはある。
今後に期待
個人的に言えば、このSurface Pro Xは、第一世代としてまだまだ進化していく必要のあるデバイスだと思う。
特に致命的なのは、Windowsの標準的なx64アプリケーションが動作しない、という所を何とかしないと、安心して使えないように思う。
ARM64アプリケーションが発展していくかどうかは、ベースとしてSurface Pro Xのような「Microsoft SQ1」を搭載したPCがどれだけ普及するかで決まってくる。
それならば、ARM64アプリケーションが通常のx86系CPUで動作するように向かうか、ARM系CPU、つまり「Microsoft SQ1」がx64アプリケーションに対応していくしか道はない。
Windowsのx64アプリケーションは今後Windows界では当たり前になっていくだろうし、またそうでなければならない。その流れを捻じ曲げてでも「Microsoft SQ1」を根付かせるには、どちらかが大きく歩み寄らないと成功しない。
なので、私はそう遠くない内に「Microsoft SQ1」側が通常のWindowsに歩み寄ってくるように思っている。技術的に難しい側面があるのも理解しないわけではないが、Windows10と名を付けている以上、Windows側にARM系アプリケーションが歩み寄っていくように思える。
もちろん、Windowsというプラットフォームでなければ、当然ARM側が優位に立つだろうが、Surface Pro Xを、x86系CPUよりも長時間動作&常時インターネット接続しているモバイルデバイスという認識で売るとなると、使用者のイメージとしてはWindows10を利用している、という認識で使っているだろうから、x64側で折り合うしかない、と私は思っている。
なので、今後に期待したいところ大である。
「Microsoft SQ1」が登場した事に焦りを感じるのは、おそらくIntelなんだろうなとは思う。AMDはARMへの展開もしていたと思うが、この辺りの熾烈な戦いもまだまだ何かありそうな気がする。
Apple、Microsoftの両社がARMに歩み始めたのは、今後の大きな変化の一角ではないかと思えてならない。