64コア128スレッドがいよいよ登場する。
個人で使い切れるのか?
いよいよ2月8日の明日、第3世代Ryzen Threadripper 3990X(以下3990Xと表記)が発売になる。
既にプレス向けにはレビュアーズキットとしてサンプル品が出回っているようで、そのレビューも概ね解禁された様子。順調にベンチマークテストが行われているようである。
3990Xは、64コア128スレッドという、今まではCPUを2個以上で実現していたコア数を1個のCPUに取り込んだ7nmプロセスで製造された第3世代のRyzen Threadripperの分類になるCPUだが、使われているソケットは従来品と同様の「Socket sTRX4」が採用されている。
DDR4-3200のメモリを4チャネル動作で使用する事が出来、PCI Express 4.0を64レーン搭載する。
消費電力は280Wと、普通のコンシューマ向けCPUとは枠の違いを見せつけるような値だが、Threadripperのようなエンスージアスト向けCPUとしては極めて真っ当な消費電力に設定されている。もちろん、この消費電力に耐えられる冷却性能をもった構成でPCを組む必要がある。
事実上、最低でも240mmラジエーターを持った簡易水冷クーラーを入れる必要があるかと思われるが、このクラスのCPUを扱う人であれば、もう言うまでもない話であろう。
この64コア128スレッドから生み出される演算能力を、果たして個人で使い切れるのか? という疑問はさておき、これに応えられるだけの他PCパーツを揃えるのも相当な財力を必要とするのではないかと思われる。
…私には多分永遠に無縁だなw
圧巻の128スレッド
3990Xでは、その搭載するCPUコアは最小単位の構成からCCX4個×2×2という構成でCPUが分割管理されている。
CCXは1個で4コアのZen2コアを搭載していて、これを4個束ねる事で16コアを纏めて1つのダイに載せている。そのダイをさらに2個繋げて1グループ32コアを構成し、そのグループを2個繋げて64コア128スレッドというCPUパッケージにしている。
なので、使用するアプリケーションによっては32コア64スレッドとして認識するケースが考えられる。もっとも、ほとんどのアプリケーションでは前世代のThreadripperの登場などでそうしたダイ構成でも全てのCPUコアを認識するようなアップデートが行われているようなので、3990Xもほとんどで正しく認識されるようだが、一部のソフトではまだ未対応のようである。
レイトレーシングソフトのPOV-Rayはまだどうも32コア64スレッドまでしか対応していないようだが、AMDから対応版がレビュアーの元に提供されているらしい。
このレイトレーシングソフトのPOV-Rayだが、ベンチマークテストが実装されているようで、それによるテストを実行したタスクマネージャーが実に圧巻である。
もうね…スレッド数がスゴイ事になってるよ(爆)
ゲーム等では意味がない?
各誌のレビュアーが3990Xのレビューを行っているので、Benchmark等の結果についてはそうしたサイトを確認してもらいたい。
PC Watch
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/1233945.html
上記サイトでFF14のBenchmark結果がレビューされていた。
それを見ると、3990XがRyzen9 3950Xに敗北しているという結果が…。
おそらく、これは全てのコアを利用できていないか、そもそも利用する必要が無いか、そんな状況であり、純粋な動作クロックの問題で3950Xの方が結果が良かった、という事なのだろうと思う。
実際、FF14クラスであればCPUは8コアで十分と言われている。そもそも3950Xでも搭載コア数は多すぎるのである。
なので、FF14をプレイしながら配信する、といったマルチスレッドを活かす使い方でないと、3950Xでももったいないという状況になる。
PCゲーマーであれば、Ryzen7 3700Xがお買い得だという声があるが、それはこういう理由からである。
そうなると、ゲーム、配信等を同時にする上で最適な環境となると、Ryzen9 3900Xの12コア24スレッドという構成が今の所最適解かもしれない。
3950Xと3900Xでは、その価格差には4万円弱くらいの差がある。それでありながら、この両者の性能差はPCゲームではほぼ同じと言われている。何故同じなのかというと、それはクロック周波数の違いからくる差である。僅かながら3900Xの方がクロックが上で動作する為、使い切れないコアの性能差をそのクロックが埋めてしまうためである。
使用する環境でコア数を決める
とまぁ、コア数は多ければ多いほどマルチスレッド時の性能は引き上がるものの、それは全てのスレッドに処理を持たせられる環境ではじめて意味があり、そうでなければ性能は伸びない。
3990Xは64コア128スレッドという、とんでもないマルチスレッド型CPUだが、結局はそのマルチ環境を利用できるアプリケーションがなければ、クロックで下位製品に劣ってしまう。
それはThreadripperだけの話ではなく、Ryzen9シリーズやRyzen7シリーズでも同じである。
以前は10コア20スレッドを超えると、それ以上のコア数やスレッド数があってもあまり意味がない、と言われたことがあるが、現在ではおそらく16コア32スレッドぐらいまではマルチに使える環境は整いつつある。
私には無関係な世界の話ではあるが、とにかくマルチスレッドでの処理を必要とするクリエイターの人には、3990Xは一つの最適解を与えてくれるかもしれない。
50万円くらいするCPUなので、私にはホントに無縁だな(-_-;)