高性能小型PCを作る上でマストなパーツ。
ショート基盤のGPU
PCパーツの事をよく記事に書くが、比較的私が記事にする事が多いのが小型パーツである。
性能は従来品と同等が多少劣る程度でありながら、そのサイズがmini-ITXフォームファクタで利用可能なパーツとか、実にロマンある話である。
なので昔から「薄型」とか「1スロットタイプ」とか「ショート基盤」なんていうワードで、そうした小型パーツの事を取り上げたりしている。
最近のPCパーツは、高性能になりすぎてその発熱が大きく、どうにも小型PCに組み込むパーツが少なくなってきているのだが、ここにきて、AMDのRadeon RX 5700がワットパフォーマンスが高く、ショート基盤のビデオカードとして発売されるのではないかと期待していた。
そうしたところ、昨年末あたりに「RX5700 ITX 8GB GDDR6」という全長175mmというサイズのビデオカードが出回り始めた。
株式会社アユート専売の製品で、価格は税込48,800円前後と決して安くはないのだが、搭載しているGPUがRadeon RX 5700で、メモリもGDDR6を8GB搭載したモデルになっている。
他スペックとしても、アベースクロック1,465MHz、ゲームクロック1,625MHz、ブーストクロック1,725MHz。メモリクロック14Gbps、メモリバス幅256bitと、決してフルサイズに劣る事のないスペックで、唯一の欠点と言えば2スロット分の厚みがある、という事ぐらいである。
シングルファンで大丈夫か?
「そんな装備で大丈夫か?」という言葉が昔ネットで流行った気がするが、この「RX5700 ITX 8GB GDDR6」でもそう言いたくなる装備がある。
それが冷却ファンで、通常Radeon RX 5700は最低でも空冷ファンを2基搭載するのがセオリーで、余裕を持たせた製品だと3連ファンにするのが普通である。
しかし「RX5700 ITX 8GB GDDR6」はそれをシングルファンで冷却する仕組みになっている。
立体形状のヒートシンクと銅製の受熱ベースで熱を吸い上げて直径6mmのヒートパイプ4本でヒートシンク全体に熱を拡散させる仕組みになっており、その熱を90mm口径のシングルファンで冷却する。
一応60度までなら冷却ファンは稼働しないという、セミファンレス機能にも対応しているようで、低負荷時には静音環境で利用はできそうである。
こうした熱伝導の技術があるなら、フルサイズのGPUでも採用してボード自体を小型化するとか考えればよいのに、どうしてショート基盤の製品の時だけ気合いが入っているのだろうか?
…いや、多分フルサイズ製品でも採用しているのだろうと思う。そうしてオーバークロック耐性を高めているのだろう。そう考えると、案外オーバークロックは元々メーカーである程度想定されているものなのかもしれない。
ペンチマーク
この「RX5700 ITX 8GB GDDR6」の性能だが…正直、ショート基盤ならこれで十分と言える性能に思える。
使用CPUがRyzen9 3900Xという12コア24スレッドだという事を考えても、FF14ベンチ(漆黒のヴィランズ)で1920×1080で16,167、2560×1440で12,426、4Kで6,342というスコアを出す。
平均フレームレートにすると、1920×1080で115、2560×1440で84、4Kで42という値なので、元々のRadeon RX 5700の利用想定レンジである2560×1440の環境で十二分の性能を叩き出している。
このサイズでこれだけの性能を出してくれば、利用価値は相当に高いと思う。
また、この高負荷時の時のGPU温度だが、高負荷時で66度程度で落ち着いている。アイドル時は負荷がかかっていない関係から空冷ファンが止まるので50度と高めの温度が計測されてしまうが、それでも負荷状態で66度に収まっているというのは、使いやすいと言える。
あとは筐体の中という限られたスペースで、実際の温度がどの程度になるかという事が気になるところだが、おそらく高負荷時でも66度に収まっているところを考えれば、何とか通常動作をしている分には問題はないと言えるだろう。
逆を言えば、本製品に限って言えばオーバークロックはしないで運用する方が、フォームファクタとしては間違っていないかもしれない。
電源はイマドキな感じ
ただ、mini-ITXの環境でこの「RX5700 ITX 8GB GDDR6」を使う際、もっとも気にしなければならないのが電源ではないかと思う。
高負荷時では318Wにもなるようで、これはRyzen9 3900Xとの組合せの結果だというから、思ったよりはGPU単体の消費電力は低いとも言えるが、それなりの消費電力は覚悟する必要がある。
ただ、ここ最近はmini-ITXでもちょっと大きめのケースが売られているので、それに搭載する電源ともなれば、650W以上も普通に考えられるわけで、それぐらいのクラスならば問題はないといえる。
mini-ITXという限られたフォームファクタの中で、どれだけのパフォーマンスを出すか? という、ギリギリを攻めたPCを構築したい人は、ビデオカードとして「RX5700 ITX 8GB GDDR6」は一つの選択肢になると思う。
だが、同時にNVIDIAのGeForce RTX 2070クラスでショート基盤というビデオカードも噂では聞いたことがあるので、もしそれが製品としてあるようであれば、あとは価格との相談という事になるだろう。