AMDの最新APUの概要が明らかになった。
Zen2ベースのAPU
AMDがZen2ベースの新世代APU「Ryzen Mobile 4000 Series」を正式発表した。
Zen2のCPUコアを8コア、VegaベースのGPUを8CU搭載するAPUで、TSMCの7nmプロセスで製造される。コードネームは「Renoir」とされている。
Zen2アーキテクチャの8コアCPUを搭載し、1.79TFLOPSのGPU性能、LPDDR4対応のメモリコントローラ、モバイルに最適化した省電力制御を備えるAPUで、現在のIntelが圧倒的に強いモバイル分野に打って出る。
デスクトップ系のRyzenでは、チップレットアーキテクチャで複数ダイ構成だったが、APUではシングルダイ構成にした。シングルダイ構成でありながら、CPUを8コア搭載しているのは、そのダイの占有面積のバランスを取るためと言われている。というのは、I/O関係のダイエリアが、相対的に大きくなる関係から、プロセッサ個数を増やさないとI/O面積比率の高いSoCとなってしまう事情があるかららしい。
消費者サイドとしては、CPUコア数が増える分には喜ばしい話なので、結果オーライという感じではあるが、少しでもダイ面積を小さくして利益を出したいAMDからすると、ちょっと悩ましい結果だったかもしれない。
かなり最適化されている
Zen2アーキテクチャを使用している、とはいうものの、今回のAPUを設計する上では、かなりの部分でアーキテクチャの最適化が行われているようである。
たとえば、CCXというCPUコアクラスタに関しても、モバイルに最適化させ、CPUコア4個でクラスタかしてCCXを構成、4つのCPUコアで4MBのL3キャッシュを共有するようにしている。このCCXを2セット搭載して8コア構成としている。
この最適化を行ったRyzen Mobile 4000シリーズのシングルスレッド性能は、旧製品の3000シリーズと比較して同じ15Wの電力枠で比較すると25%もシングルスレッド性能が向上している。これはアーキテクチャがZen2となっただけでなく、製造プロセスが7nmとなった事で動作周波数が向上した為である。
ではマルチスレッドではどれぐらいの性能向上をしているかというと、1Wあたりの性能が2倍に達するとAMDは説明する。内訳で言えばIPCの向上によって3割、7nmプロセスでの電力効率で7割の性能向上である。
また、最適化でいえばGPUも相当に最適化していると言える。
前述したようにGPUはRDNAではなくVegaアーキテクチャが採用されているが、APUに最適化する為に再設計されている。主なる改良点はGPUコアとメモリコントローラーの間のバスである。これを従来のAPUと比較して2倍のデータ転送幅でメモリコントローラーへアクセス出来る様にした。さらに7nmプロセスでの製造でCUあたりの性能も最大1.75GHzで動作させるというクロック向上によって実現している。
このGPU性能向上によって演算性能は1.79TFLOPSに達し、内蔵GPUでもかなり高性能なスペックを持つ事になったと言える。
Fluid Motionは使えるのか?
私が今回の4000シリーズAPUで一番気にしているのは、まさにこの一点に尽きる。
VegaベースのGPUを採用しているという事は、少なくともRDNAアーキテクチャではないので、可能性としてFluid Motionが稼働する可能性があるという事である。
なぜVegaベースなのに「可能性がある」という確定要素ではない言葉で説明するかというと、既に以前のAPUでもFluid Motionが通常のドライバインストールだけではRadeon Settingで選ぶことが出来なくなっているためである。
ではどうやってAPUでFluid Motionを利用可能にするかというと、AMD以外のアプリケーションを使用する事になる。
それが「Bluesky Frame Rate Converter」というアプリケーションで、Radeon Settingでは設定できなかった項目を内部でONにする事ができるようである。
Bluesky Frame Rate Converter
https://bluesky23.yukishigure.com/BlueskyFRC.html
このツールを使って、Fluid Motionを有効化すると、内部的にFluid Motionの利用をONにする事ができるようで、Radeon Settingに項目が出てこなくても機能を有効化できる。
あとは利用する動画プレーヤー(主にMPC-HCやMPC-BE)に外部フィルタとして「Bluesky Frame Rate Converter」を指定してやると、その動画プレーヤー上の動画を60fps再生できるようになる。
ただ、この方法だとPowerDVDでのBD再生時に60fps化できないらしいが…BD再生ならMPC-BEでも可能なので、そちらで再生するしかないかもしれない。
Radeon VIIでは、そんな事しなくてもRadeon SettingでFluid Motionの有効化ができるので、PowerDVD利用時などは特に機を使う必要は無かったが、どうもほとんどの環境ではそうではないようなので、AMDは今後Fluid Motionという機能を利用させない方向に考えているのかも知れない。
これはとても残念な話ではあるのだが…AMD側としては要望の強いものから機能をRadeon Settingに搭載させていくと言っているので、もっとユーザー側からの強いプッシュが必要なのかもしれない。
とりあえず、今回の4000シリーズのAPUは、個人的には2nd PCを組みたいと思わせるものである。
特に8コア搭載というところが惹かれるし、GPUもひょっとしたVega系統としては最後のものになるかもしれない。