一般人にはあまり関係がないかもしれない。
Radeon Pro VII
AMDからプロハイエンドワークステーション向けビデオカード「Radeon Pro VII」が発表された。
6月中旬に発売される予定で、価格は1,899ドルの予定となる。
本製品は2019年にコンシューマ向けとして発売された「Radeon VII」をベースとしてプロ向けの機能を持たせたモデルで、インターフェースとしてMini DisplayPortを6基接続可能になっている。
この6基接続というインターフェースだが、実はもともとのRadeon VIIでも内部的には6基接続できるようになっているのだが、外部に端子としては4端子(DisplayPort×3、HDMI×1)を搭載していた。なので特別大きな変更をした、という事ではないのだが、今回のRadeon Pro VIIは表面的に6基接続を可能にしたようである。
搭載しているストリームプロセッサ数は3,840基、メモリがHBM2 16GBと数値的にはRadeon VIIと同じだが、メモリはECC対応のものが搭載されているので、データエラー機能が実装されている。メモリのバス幅は4,096bit、帯域幅が1TB/sとなっており、プロセッサ性能として、浮動小数点演算は単精度が13.1TFLOPS、倍精度が6.5TFLOPSとなる。この倍精度浮動小数点演算はRadeon VIIより大きく高速化しているポイントになる。
また、複数のRadeon Pro VIIをCrossFireXのようにブリッジ接続できるのだが、その接続バスはCrossFireXではなく、Infinity Fabric Linkを採用、ビデオカード間の相互接続速度を168GB/sに引き上げている。
それと、PCとの接続はPCI Express4.0に対応しているところもRadeon VIIとの違いになっている。
ライバルとの価格差
Radeon Pro VIIは、前述したように1,899ドルの予定とされているが、ではこのRadeon Pro VIIのライバルとなるNVIDIAの「Quadro GV100」や「Quadro GP100」はどれぐらいの価格かというと、GV100は8,999ドル、GP100は7,769ドルとなっている。
価格的には約4分の1になるので、Radeon Pro VIIを2枚、Infinity Fabric Linkで接続して使用しても、ブリッジの価格が199ドルなので、1,899+1,899+199ドル、という価格で競合を超える環境を構築する事ができるという。
ある意味、相当な価格破壊がこのハイエンド業界にやってきた、と言えるだろう。
一方、まだ噂レベルでの情報しか出てきていないが、そう遠くない内にNVIDIAからはGeForce RTX 3000シリーズ(コードネーム:Ampere)が発表になると言われている。
こちらがどの程度の価格でプロ向けエンド製品を構成するかが気になる所である。
一般向けは?
さて、プロ向けのビデオカードの発表があると、どうしても一般向けの次の新製品はどんなもので、いつ頃になるのだろうか? という事が気になるわけだが、RDNA2を搭載した製品が今年末から来年にかけて出てくる。
Zen3と同じようなタイミングで登場する事を今年3月初旬に行われた投資者向けカンファレンス「Financial Analyst Day」で発表している。
今年の末というタイミングでは、予定ではPS5やXbox Series Xがローンチされているワケだが、それにはもうRDNA2を搭載したカスタムチップが搭載されているので、GPUとしても単体で登場しても不思議ではない。
問題は、生産ラインが確保できているかどうかという部分で、PS5等に生産ラインを大幅に持って行かれている段階では生産そのものが難しいとも言えるので、私の予想では新ビデオカードそのものは来年にもつれ込むのではないかと思っている。
この新製品は発売時期としても気になるが、私がもっとも気にしているのは、AMDのGPUにのみ可能だったFluid Motionが、RDNA系アーキテクチャでも利用可能になるのかどうか、というところである。
あまり需要がないのかもしれないが、これがあるからRadeonを使い続けるという人もいるぐらいで(私がそうなのだが)、これを気にしている人が一定数いるという事は、私のBlogへのアクセスで分かっている。
ただ、AMDは要望のある機能から実装している、とRadeon Setting Softwareのアップデートに関してコメントしているので、要望さえあれば対応してくれると思うのだが、世界的に大きな要求にはなっていないという事なのだろうか。
どちらにしても、この部分がNVIDIA製品とは大きく異なる部分でもあるので、AMDならではの機能を期待したい所である。
今回の製品はプロ用なので、私には直接関係がないが、元となっているRadeon VIIを購入していた事は正解だったな、と改めて思った。
あの製品をあの価格で発売していたという事自体が、実はとんでもない事だったんだと改めて知った次第である。