実は私は未だに区別が付かないPCパーツがある。
それがサウンドカードとオーディオカードの違いである。
両者の違いについてはいろいろ論議される事があるそうだが、明確な意味の違いはない、とする事の方が多い。あえて違いを挙げるとすると、オーディオカードの方が高音質であり、DTM(デスクトップミュージック。机上での音楽製作)で使用される事が多い…という事になるが、昨今はサウンドカードでも高音質になってきているし、何よりDTMにおいても遜色ない音作りが出来るものが多い。
もっと昔なら、明確な違いがあったと言える。
昔はオーディオに関連する半導体やパーツが高かったため、サウンドカードにはそれらが搭載できなかった。なので音を出すという意味でFM音源と呼ばれる半導体(ほとんどがYAMAHA製チップだった)を搭載するカードをサウンドカードと言い、もっとデータ量が大きい波形データ(今でいうWAVEデータ)を処理する事を目的としたカードをオーディオカードと呼んでいた事もある(これについても諸説あると思う)。
しかし、昨今は波形データを扱う半導体の価格もこなれ、手が出しやすい価格帯になってしまい、むしろそれらがマザーボード単位で機能吸収してしまったため、サウンドカードでも当たり前に波形データを扱える性能を持つようになった。
なので今ではこの両者の違いはないに等しい。
そして今回オンキヨーから久々に発売されたカードも、サウンドカードと謳ってはいるが既にその音質はオーディオカードに匹敵するものである。
前機種SE-200 PCI(さらに上位にはSE-200PCI LTDがある)から2年ぶりに発表されたSE-300 PCIEである。名前の通り、今回はPCI Express ×1仕様のカードとなった。
旧来の機種と違い、今回の新製品ではオーディオプロセッサとしてCreative製の“20K2 X-Fi”を採用している。この事でゲーム向けサウンドエフェクト“EAX ADVANCED HD 5.0”が利用可能になった。
また一般的なオペアンプを使用せずに、全てディスクリート部品で上下対称に専用設計した独自回路“DIDRC”を採用した。この事でスルーレートを高まり、可聴周波数帯以上のノイズがDACから入力された場合ても、可聴周波数帯に影響を与えるビートダウン現象(混変調を起こす現象)を抑えて、低ノイズを実現しているという。
このDIDRC回路は、ヘッドフォンアンプ部にも採用されているため、PCでゲームプレイする人に多いヘッドフォン環境にもその恩恵はあると言える。
知っている人は当たり前に思うことの一つに、音というのはアンプ次第で変わる、というものがある。
どういう事かというと、音というのはアンプから供給される電源の品質によって上下するという事。アンプの中身というのはほとんどが電源装置であり、より安定した電源供給が音質に影響するため、アンプが扱う電源容量は大きければ大きいほど良いとされている。
このSE-300 PCIEは、供給される電源をそのまま利用するのではなく、PCI Express端子から供給される12Vから、12Vと5Vを再生成する「絶縁型高レギュレーション±両電源」というものを搭載している。これによって安定した電源供給が可能になったという。
また搭載されたDACはバーブラウン製で、2チャンネル専用DAC「PCM1798」が2個搭載されている。合計4つのDACの平衡出力から、チャンネル毎にダブルで差動合成しセパレーションすることで、120dBという高S/N比を実現した。
他にもいろいろな特徴はあるが、より高音質を求めた設計になっている事は間違いない。
このあたりの考え方はサウンドカードというよりはオーディオカードの領域であり、それは前機種と何ら変わるところがない。
ただ…これだけの機能・性能を持つからこそ、不満となる部分もある。
それが、このSE-300 PCIEが、ほとんどのケースで2ch専用カードになってしまっているという事である。
…いや、2ちゃんねる専用じゃないYo!(爆)
SE-300 PCIEには、7.1ch出力用のブラケットが付属する。
このブラケットは本体カードに専用のケーブルで接続されるのだが、このブラケットを経由すると前述のDIDRC回路を利用する事が出来なくなる。つまり、2ch出力以外ではDIDRC回路は使われる事がないのである。
せっかく高音質を維持する専用回路が備わっていても、7.1ch時には使用する事が出来ないワケで、これはある意味、この製品が2ch専用サウンドカードになっているとも言える。
もったいない設計としか言いようがないワケだが、7.1chは2chよりもアナログ出力の周波数特性を高めるのが難しい。そういった総合性能面で7.1chをバッサリと断ち切ったのかもしれない。
価格が店頭価格で34,800円程度になる事から、決して安い買い物ではないワケだが、2ch専用としてこの価格をどう見るか? がこの製品の明暗を分ける部分ではないかと思う。
ただ、Creative製の“20K2 X-Fi”を採用した事でASIO対応となったのは大きなポイント。
Creative製のチップを使っていても、出力まわりは完全独自設計である事を考えれば、Sound Blasterシリーズとは全く異なった特性を出してくるだろうし、前機種の評価を考えれば決してハズレな製品ではない。
むしろ、7.1chなんか使わないし…という人にはかなりポイントの高い製品ではないかと思う。
あとは価格がどこまでこなれるか? ではないだろうか?
私的には…次のPCを組み立てる時には欲しい逸品ではある。いつになるかわからないが(爆)