Bluetoothオーディオの新しい形がようやく見えてきた。
LinkBuds Sが新しく
Sonyが完全ワイヤレスイヤフォン「LinkBuds S」のアップデートを公開し、遂にbeta版ではあるが「LE Audio」に対応する。
「LinkBuds S」の本体ソフトウェアのバージョンは3.0.5になり、EndelのQuick Access設定もより簡単になる。
beta版ではあるものの、LE Audioに対応するという事で、いよいよ新世代のBluetoothオーディオの世界に突入する事になるわけだが、そもそもこの対応は今から約一年前から言われていた事であり、ようやく実現した、というものである。
今回、アップデートされたのは「LinkBuds S」のみであり、他のSony製品には対応してはいない。
何故LinkBuds Sのみなのかはわからないが、まだLE Audioがbeta版だというところからみても、やや実験的な側面があるのかもしれない。
また、SonyのワイヤレスイヤフォンのフラッグシップであるWF-1000XM4には、現時点でLE Audio対応のアナウンスも出ていない。これは対応できない、というよりも、そもそもLE Audioという新しい規格と従来のBluetoothオーディオである「Classic Audio」に大きな違いがあり、音質という面において必ずしもClassic Audioが劣っているわけではなく、Classic Audioの規格コーデックであるLDACはそのままの形ではLE Audioに適用できないので、フラッグシップは従来の規格に留めて置き、高音質を維持するという意味から、LE Audioに対応させる方向にない、といった結論ではないかと思う。
LE Audio
そもそもBluetoothオーディオは、通話用としてスタートしている。HSPというプロトコルから始まり、そこに通話用としてHFPが登場した。音楽用としてはA2DPが規定され、それがアップデートを続けては来たが、その後は基本的なところは何も変わってはいない。
問題は、このBluetoothオーディオの進化とBluetoothの進化は同一ではないという事。
Bluetoothは、それぞれバージョンが引き上げられてきているが、それらバージョンが上がったとしても、時には伝送距離の強化だったり、伝送速度の強化だったり、データ品質の強化だったりと、バージョンナンバーが上がっても変化のない技術要素も存在していた。全ての規格技術がアップデートしているわけではないのである。
その後、Bluetooth4.0でlow Energyに対応こそしたが、これはBluetoothオーディオには何ら関係のないアップデートであったし、その他のバージョンでも伝送距離が伸びたようなアップデートが行われたとしても、それが音質に影響を与えるようなアップデートではなかったワケである。
それがBluetooth5.2の時、アイソクロナス転送に対応したと同時期にLE Audioが発表され、いよいよBluetoothオーディオにも変化が訪れる事になった。だが、この時はまだBluetoothオーディオそのものに大きな変化が適用されたわけではない。
しかしながら、LE Audioが発表された事で、目指すべき方向というか技術方針は明確になり、それらを実現するための共通規格が定められることになった。
今までとは全く異なる
LE Audioは、従来のBluetoothオーディオとは元からして全く異なる。
コーデックはSBCからLC3(Low Complexity Communication Codec)というものに変り、SBCよりも低いビットレートでありながら高品質というものに置き換わった。
またマルチストリームが標準仕様になり、チップやメーカーに縛られない左右独立型イヤフォンが実現可能になった。つまり、今まで独自規格を組み込んで対応していた部分が全て共通化したのである。
また伝送遅延に関してもBluetooth規格によってアイソクロナス転送が可能になった事で改善され、実性能として60msecというaptX並の低遅延が標準となるようだ。
このように、いろいろなところに手が入れられ、共通化が進められたものがLE Audioなので、製品によって使える使えないがなくなるのが妻帯がのメリットと言える。
beta版の意味
今回、SonyがLinkBuds Sの対応としてbeta版としているのは、まだまだユーザーからのフィードバックを必要としているから、という意味らしい。
さらに使いやすく、問題のないものに仕上げていくには、あらゆるパターンで使用されたデータが必要という事のようだ。
私が所有するWF-1000XM4は未対応なので、そうした実験には使えないが、LinkBuds Sを持っている人はぜひ対応機器と共にテストしてみてほしい。
少なくとも接続性は良くなっているはずだし、低遅延になっているハズである。
だが、今はまだ実験的要素が強いという事も忘れては成らない。
LE Audioは、まさにこれからの共通フォーマットなのだから。