何故か妙に聞きたくなった
やっぱりYM2151
1980年代のゲーム音楽のほとんどはPSG音源かもしくはFM音源で鳴らされていた。
今のようなPCM音源ではないので、聞く人によってはチープに聞こえるだろうし、また現実の楽器に似せた音色といっても、結構かけ離れた音しか出ないという問題もあった。
だがそれがイイ。
私はPSG音源も好きだが、特にFM音源はとても好きである。
あの昔のゲームで鳴っていたピコピコ音とも違う、どこか不思議な響きのある音色は、FM音源にしかできないし、私以外の愛好家も未だに多いのも事実である。
ファミコンというコンシューマ機器以外であれば、私が初めてFM音源に触れたのは、PC-8801SRに搭載されたYM2203(通称OPN)で、4オペレータFM3音ポリ+SSG3音というスペックだった。
FM音源の波形に関しても整数倍による変調しか出来なかったため(このあたり結構テキトーな情報。詳しい人教えてくだされ)、これはこれで綺麗な音色ではあったものの、その後私が所有する事となったX68000に搭載されたYM2151(通称OPM)と比較すると、やはりどこか見劣りしていた。
YM2151は、4オペレータFM8音ポリというおそらく当時最強のFM音源ではないかと思う。変調幅も少数倍による変調のおかげで(前述と同じ。詳しい人教えてくだされ)かなり滑らかな音色で、X68000はこのYM2151にADPCMという、サンプリングレートの低いサンプリング音源を1音を合わせて持っていた。
ちなみにX68000より古いX-1 TurboにもYM2151を搭載したFM音源ボードが発売されていて、X-1 TurboZという機種に至ってはそのFM音源ボードをそのまま内蔵して発売された。
当時PC-8801mk-IISRを所有していた私であっても、このX-1 TurboのFM音源はとても羨ましかった事を記憶している。
このように、当時の私はほとんど毎日がFM音源の音を聞いて生活していた事もあり、私にとってFM音源はとても身近で、かつ聞き慣れた音だった。だからこそ、この音がとても好きになれたのだと思うし、妙に生々しいPCM音源よりも独特感のあるFM音源に好感を持っているのではないかと思う。
YouTubeにたくさんの曲が…
今まで、あまりこういう事を意識していなかったために知らなかったのだが、私の様にFM音源のゲームミュージックが好きな人が、そのゲームの音を動画にしてYouTubeで公開していた。
別の動画をYouTubeで探していた時にふと見つける事になったのだが、ちょうどX-1 Turbo版のソーサリアンの曲を見つけ、それを聞いた所、当時の事を思い出しつつ、YM2151の凄さを再認識してしまった。
比較対象としてPC-8801版などの曲もアップされているのだが、聞き比べると違いは一目瞭然。やはりYM2151の音色の美しさは絶品である。
PC-8801VA2およびVA3という、後発のPC-88シリーズ機にはYM2608(通称OPNA)という、4オペレータFM6音ポリ+SSG3音+リズム音源6音+ADPCM1音という超強力な音源が搭載されたが、基本がOPNであるためFM音源の滑らかさは、私の耳が間違っていなければYM2151の方が滑らかだと思う。
実際、VA版の曲もアップされているが、聞くと確かに豪華だが個人的にYM2151版の音の方が好みだったりする。
最初に言ったが、聞く人によってはとてもチープな音に聞こえるかもしれない。
だがそれがイイ。
X68000の楽曲動画がかなりの数でアップされているので、それを聞き続けるだけでもかなりの時間になる。
中には2時間近い動画もあるため、作業用BGMとして聞くのも良さそうである。
名機DX7
FM音源と言えばまずDX7、という人もいる。
これは音楽関係をやっている人に多いと思うが、従来シンセサイザーといえばアナログシンセサイザーを指していたところに、安価なデジタルシンセサイザーとしてDX7が登場したワケだが、どれぐらい安価だったかというと、Rolandのジュピター8が98万円、プロフェット5(シーケンシャルサーキット)が170万円という中でDX7は25万円弱という価格だった。
そんなDX7は音楽制作の環境を一変した、とも言える名機なワケだが、1980年代ゲームミュージックが好きな人にとってDX7が大きな存在だったかというと、実はそれほどでもなかったりするケースもある。
というのは、チップとして存在するYM2151やYM2203と、DX7のようなシンセサイザーに搭載されたFM音源とは、根本的な部分で出音に違いがあり、同じFM音源としながらも聞いたイメージが全く異なってくる。
だから本来ならこれらを一つの「FM音源」とひとくくりにする事は難しいと思うのだが、私は基本、どっちも好きである。
このDX7を含めたYAMAHAのDXシリーズは、その後もいろいろな機種が発売されたが、2001年に発売されたDX200は、既にキーボードを搭載しないただの音源として発売されている。
時代はPCM音源まっしぐらの時代で、モジュールとしての意味しかなくなってしまった事がそうさせたのかも知れない。
reface DX
そんな廃れ気味のFM音源だが、2015年にYAMAHAから新シリーズとしてrefaceというシリーズの楽器(キーボード)が発売され、その中の一つとしてreface DXというDXシリーズの正式な後継機が発売された。
DX7は6オペレータ16音ポリのFM音源だったが、reface DXは4オペレータ8音ポリという構成で、数字だけみれば廉価しているように見える。
しかし、実際はとんでもないぐらいの進化を遂げていて、従来は1オペレータのみフィードバック機能を搭載していたFM音源が、4オペレータ個々に対してフィードバック機能が搭載されるという進化を遂げている。これにより、数字だけではその表現力は表せない性能となった。
reface DX自体は、HQ(High Quality)MINI鍵盤が採用(イニシャルタッチ搭載)されている37鍵のミニキーボードで、電源として乾電池駆動も可能という利便性の高いシンセサイザーになっている。
内蔵されたFM音源の質を考えると、新世代型FM音源という事になるのだろうが、私としては今後もFM音源が一つの方向性として生き残ってくれれば良いな、と思っている。
何はともあれ、FM音源の良さを知らない人は、一度ぜひ聞いて欲しいと思う。
あの独特の音色は、現代のPCM音源では再現できないし、生楽器とはまた異なる響きを持っている。以前はこのFM音源をMML(Music Macro Language)という記述言語でコントロールしていたワケだが、そうした事だけでなく、音色作りも含めてGUI環境を整備すれば、まだまだこの世界は広がるのではないかと思う。
そういう時代が来ることを祈りたい。