たまには真面目な話でも。
人が生きる為に必要なモノ
こんな事を言うと私は世間の人から「ロクでもないヤツ」と言われてしまうかも知れないが、私は原子力発電所の稼働に絶対的に反対という人間ではない。
もちろん、メルトダウンがあっても仕方が無いなんていうつもりはない。あってはならない事だと思うし、そこで受ける被害を軽視しているワケでもない。
だが、現代の人が生きる為には“電気”というものは間違いなく必要だし、その“電気”というエネルギーを使って現代の文明は栄えている事を考えると、如何にして安定して電力を得るか、というのは現代の命題のようにも思う。
だから、その電力を安定的に得るための手段として原発がどうしても必要だというのなら、私は原発の稼働も已む無しではなかろうか? と思うワケである。
「お前は原発の近隣に住んでいないからそんな事が言えるんだ」という人もいるだろう。しかし、それはたまたま私がそのような場所に住んでいないからであり、もし私の住んでいる所の隣に原発を作るという話が出たなら、私は多分反対できないだろうと思っている。
この時点で、私が如何に「ロクでもないヤツ」なのかは分かって貰えるだろう。私が生きるには電力は必要不可欠であり、電気での文明を知ってしまった私は、その電気がない生活を予測できない存在である。「サイテーなヤツだ」と言われたとしても、私はそれを甘んじて受けるしかないだろう。
だが、もし安定的に電力を得る方法として、原発以上に安定的かつ安心なエネルギー源があるならば、もちろんそうしたエネルギー開発は最優先事項だと思う。
好き好んで危険を併せ持つ手段を選ぶ必要はない。
選択肢として、安全な道があるなら、そちらを選ぶのが当然の判断である。
核融合
現在の原発で使われている核技術は「核分裂」と分類される方法でエネルギーを得ている。
ウランのような質量の大きい原子核に中性子をぶつけると、ウランの原子核が2つの別の核に分裂し、その分裂の時に核以外に中性子と熱を発生させるが、その熱を利用して発電しているのが原子力発電である。
太平洋戦争時に日本に落とされた原子爆弾も基本的にはこの核分裂を利用したものであり、現在の核技術の基本的な技術と言える。
だが、よく知られている通り、これら核分裂で得られるエネルギーには必ず放射線(放射能)というものが付いて回る。これは避けて通れないものであり、これがあるから安全なエネルギーとは言えない側面がある。
では、もしこの放射線(放射能)の影響が非常に少ない状態で核を利用したエネルギー技術が存在していたら?
それが核融合と呼ばれるものである。いや、正確に説明しようと思ったらもっと詳しい説明が必要になるが、それらは専門家たちに任せるとして、大まかにここでは書いていく。
核融合とは核分裂とは逆で、2つの核原子をぶつけ1つの別の原子核が生まれる過程で発生する陽子を利用したエネルギー技術である。
有名な所で言うと、ヘリウム3という物質と重水素を利用し、そこからヘリウム4と陽子を得る方法で、この方法だとほとんど放射線の影響がないと言われている。
問題はこのヘリウム3という物質が地球上にはほとんど存在せず、太陽から放射されているヘリウム3を蓄積している月の砂などから収集したりしないと大量に得ることができないというところである。
また、核融合を発生させる炉の内部は、核融合時には1億5000万℃にも達し、非常に高い圧力にもなる。この状態だと原子と電子が分離したプラズマ状態となり、原子核も電子もそれぞれが自由に動き回るようになる。そして原子核同士が高速衝突することで新たな物質となる際に、熱や光、電磁波などの非常に高いエネルギーを放出する。これが核融合の基本的な技術理論である。しかし、この反応が続いていくとプラズマ内の高い電界によって電子が活発化しすぎて“逃走電子(Runaway Electron)”と呼ばれる状態になり、安定的反応を継続させることが難しくなる。
つまり、核融合という技術は、今の時点でそのエネルギー源の入手が難しいという事と、制御の方法が難しいという2つの問題を課題として持っている技術という事になる。
ただ、エネルギー源についてはヘリウム3を利用する場合に入手が難しいのであって、他の質量の軽い元素(核融合では軽い原子を利用する)を利用する場合はなんとか地球上でも入手できると言える。
逃走原子の制御
物理学誌Physical Review Lettersに、核融合炉の安定的な運転を可能とする“逃走電子”の制御についての論文が掲載された。
その論文によると、水素やヘリウムとなどの軽い元素とは正反対の“ネオン”や“アルゴン”といった質量の大きいイオンを持つ元素を核融合炉内に噴射することで発生する電子を減速させ、反応を制御できることがわかった、というのである。
スウェーデン・チャルマース工科大学のLinnea Hesslow氏によると「活発化する電子を効果的に減速させられるようになれば、実用的な核融合炉の実現に大きな一歩となる」と言っており、確かに莫大なエネルギーを発生させた事で発生する電子によって引き起こされる逃走電子を制御できれば、効率的なエネルギーを生み出しかつ制御できる状態にできるだろう。
そうすれば、核分裂よりはずっと安全で安定した電力を得る事も可能と言える。
核融合の研究は60年の歳月を経ているが、今以て夢のエネルギーと言われ続けている。それがこの研究によって少しでも現実に近づいたなら、また新たなエネルギー開発の世界が見えてくる可能性がある。
自然エネルギー
他にも、自然エネルギーの研究も進んできている。
自然エネルギーは安定的という面で残念だが今一つ足りていない側面が未だある。それは自然が制御できないのと同じで、そこから得るエネルギーもまた不安定であるという事。
もし自然エネルギーの中で比較的安定して電力を得られるものがあるとしたら、それは地熱エネルギーくらいのもので、その地熱エネルギーにしても絶対的安定かと言われれば絶対的ではない。
これは自然を相手にしている以上、どうしても避けて通れない部分であり、人為的ではないから仕方のない部分である。
こうした自然エネルギーを、いくつか別種のものを組み合わせて安定的エネルギーにする事は可能かも知れないが、風力、地熱、太陽光、波力それらを全て組み合わせて稼働させられるほど、各分野の開発が進んでいるわけではない。
…まぁ、宇宙空間で太陽光発電ができれば、ひょっとしたら安定的電力を得ることは可能かも知れないが、それこそ軌道エレベーターのようなトンデモ技術と組み合わせる必要が出てくるわけで、未来エネルギーの仲間入りをしてしまう事は間違いない。
電力が必要不可欠な私だから、とんでもない非常識な言葉で今日のBlogを書き始めたが、私とて今の原子力発電が好きだというわけではない。
現時点で安定エネルギーを得る方法が他にないからそう言っているだけで、もし稼働させるにしても、人為的にやっている事なのだから、絶対的に間違いの無い管理の下に運用する必要があるとは思っている。
今までの原発の管理は人間が管理している部分に不完全な部分があり、それが原因で問題を起こしているケースが多い。
そういう時こそ、ロボット技術とAI技術がその不完全な部分を補うのではないかと思っている。
残念だが、人は完全ではないし、問題を多く持つ。そしてロボットやAIにしても問題が全くないわけではない。理想的なのは、人、ロボット、AIの互いが得意とする部分を互いが補完し、安定管理できる体制を作る事。
これができれば、原子力発電所の運用も今までの不安要素はぐっと減っていくと私は思っている。
もっとも、今の時代は原子力発電所のイメージそのものが悪くなり過ぎて、このような研究も夢なのかもしれないが、残念だが安定して莫大な電気エネルギーを得るという事に関しては原子力発電所以上の施設は存在しない。
私が不謹慎な事を言わなくても安定した電気エネルギーが得られる時代がやってくる事を、私は願わずにはいられない。