その昔、LarrabeeというGPUが噂されていた事もある。
Intel製GPU
昔、IntelがチップセットにGPUを統合していた時代、ATIやNVIDIAに対応すべく、Intelも本格的にGPUに参入しようかという動きがあった。
CPUと違い、GPUは小さなコアを多数搭載するという仕組みであるため、Intelもいつもの勝手通りに事が進まなかったのか、Larrabeeと名付けられたそのGPUは、名前だけ一人歩きし、結果完全体とならずに噂に消えた。
その後、IntelはCPUに統合するGPUでIntel HD Graphicsシリーズを推し進めてきて、さらに性能を引き上げる為に、一部の統合GPUをIrisと名付け、高速なeDRAMをパッケージ上に搭載したモデルも登場させた。
当時はIntelがCPUにGPUを完全統合させようと思ったら、GPUはIntelで製造するしか方法がないわけで、Intelとしても他社(この場合AMDだが)より性能が劣ると分かっていてもやるしかなかった分けで、IntelとしてもGPU開発を辞める事はできなかったと思うし、その流れで今までCPUに内蔵するGPUを生み出してきている。
だが、ここにきてIntelはGPUに関する方向性をいくつかバリエーションを持って対応しはじめてきた。
一つはAMDのVegaアーキテクチャをMCMによって実装するという方向性を示し、実際に製品化を始めた。これは性能としてはミドルレンジよりも上という感じの製品群に採用されるものになる事はもうわかっている。
そしてもう一つの道は、AMDのアーキテクト等を迎え入れ、GPUの開発を再び開始するという方向性である。
この話を聞いたとき、私は再びLarrabee計画が浮上したのか、とも思ったが、おそらくAMDのアーキテクトを迎え入れた段階で、AMDと似たような方向性のGPUが今後登場スルのではないかと予想される。
2019年1月には…
そのIntel製GPUの第一弾としては、AI Acceleratorのように使われるGPUカードが最初に登場すると噂されている。時期としては2019年1月のCES 2019にて登場するのではないかという事らしい。
もちろん、このAI Acceleratorカードの後には、ゲーマー向けグラフィックカードが登場するだろうという噂もある。
ただ、IntelにAMDのアーキテクトであったRaja Koduri氏、Chris Hooks氏が合流した時期を考えると、2019年1月に製品が登場するというのはあまりにも早すぎるとも考えられる。よって、CES 2019ではGPUの開発発表を行い、その際にロードマップが公開されるに留まる可能性もある。
どちらにしても、Intelが人材を確保してGPU開発に着手している可能性は非常に高く、今後Intel製のビデオカードが店先に並ぶという事も夢ではないように思える。
何故GPU開発をするのか?
これは個人的に思う所を書き連ねるのだが、IntelがGPU開発に乗り出す最大の理由は、自社工場のラインを埋める為ではないかと予測している。
AMDは既にファブレス化してしまっている為、製造ラインを稼働させるという事に追われる事がない。だからコア設計をするところにだけ注力していれば、あとは外部の製造会社に委託して必要な数だけを生産すれば良い事になる。
だが、Intelは世界最先端の製造ラインを開発・維持していく必要があるわけで、それをCPUやチップセットだけで全て埋める事が難しくなってきているのではないかと私は思っている。
というのは、個人向けPCの総生産数は年々減少しており、それがモバイル機器の増加の影響によるものというのは、数年前から言われている事である。
IntelもAtomなど低消費電力型コアの開発を行っているが、依然としてARMが圧倒的な強さを誇っているのは言う迄も無い。
ARMは、ライセンスによってappleのAシリーズになったり、QualcommのSnapdragonシリーズになったりとバリエーションも多く、また全世界では7割のシェアを持つAndroidに採用されるコアなので、その製造数は半端ではない数になる。
そうしたモバイル機器への搭載数で考えると、Intelのコアは少数派なので、Intelの製造工場のラインでは、未だサーバ向けコアやPC向けコアを主力に製造しているハズである。
増えるモバイル機器に対して減るPC機器。
Intelの生産ラインが余ってくるのは、考える迄も無い話である。
であるなら、IntelとしてはGPUを自社開発し製造する方向性を視野に入れたいだろうし、また、Intel CPUに強力なGPUを統合できるようになれば、PlayStationやXboxに搭載するカスタムチップの製造にも繋げられる。
GPU開発を行う事で、埋められる生産ラインが確実に増えると見込んでいるのではないかと私は思う。
GPUの3強時代?
個人的には、GPU業界も今までの2強時代から3強時代に突入して欲しいと思っている。
今はNVIDIAが強く、AMDはその後塵を拝する形になってしまっているが、それでもひっくり返るほどの大差が付いている状況でもない。
ここにIntelという名の石を投じたとき、どのような化学反応が起きるのかが非常に楽しみで、AMDがさらに化けるという事が起きれば面白いなと思っている。
AMDからIntelへアーキテクトが移籍しているが、同時にAMDにも新しい人材が流入しているらしいので、まさに新しい人材が化学反応を起こして化けてくれると良いのだが。