どう考えても日本人ならミサイルとは思わないだろう。
H2Bロケットの打ち上げが9月11日に成功した事は、日本人の殆どの人が知っている事だと思う。
このH2Bの打ち上げ成功によって、国際宇宙ステーション(ISS)で使用する無人補給機“HTV”1号機を無事送り出すこととなったワケだが、その後のHTVは18日にISSに無事ドッキング、4.5t分の物資を届けることに成功した。
今回のHTVは、秒速7.7kmで飛ぶISSを追いかけ、巡航速度を合わせて、ISSから見た感じでは直近に静止する“ランデブー飛行”を行ってドッキングした。
日本では同じ手法を1997年の技術試験衛星“おりひめ”“ひこぼし”で行っていたが、今回はその技術を取り入れ発展させ今回に臨んでいる。
言葉で説明すると「あ、そう」ぐらいの事かもしれないが、宇宙空間でこうした技術の確実性を問うとなると、その難しさたるやハンパな事ではない。
こうした技術によって成功したH2Bロケットの打ち上げとHTVドッキングに関して、またしても北朝鮮が面白い見解を示した。
「宇宙空間での軍事的優位で軍事大国化を実現しようとする日本の犯罪的策動」
「日本の宇宙兵器システムの開発策動が大型化段階でさらに本格的に推進されていることを示す極めて危険な事態」
ある意味、理解できなくもない言い分でもあり、だがしかしてそれはあり得ないだろうと日本人の私は思ってしまう。
私が日本人だからだろうか。
また、北朝鮮側は国連安保理に対し「われわれの合法的なロケット発射だけを問題視している」とし、日本の宇宙開発に関しても「阻止させるための強い措置」を取るよう国債安保理に求めているという。
私が“ある意味、理解できなくもない言い分”と言っているのは、この技術を悪用すれば間違いなくミサイル開発になると思っているからであり、また宇宙開発ですら軍事利用が可能だからだ。
しかも、それがアメリカ主導の開発であれば、確かに何かしら軍事利用があっても不思議じゃないと思えてくるから始末に負えない。
そもそもGPSだって米軍の軍事衛星を利用したものだし、インターネットですらもともと諜報利用から始まっている。
日本側にそうした意図がなくとも、米国側に何かしらの意図があった場合、北朝鮮の言っている事が100%間違っているとは言えなくなってしまう。
ただ、日本側が本気で軍事転用しようとするとは到底思えない…というのは、やはり私が日本人だから言える事であり、それを海外の人が読んだときにどう感じるかはまた別の問題だ。
悲しい事ではあるが、もともと科学技術は軍事利用される事で発展してきた事が少なくない。
たとえばテレビを見る時などのアンテナは八木アンテナ、もしくは八木・宇田アンテナの一種だが、これはもともと日本の東北帝国大学工学部電気工学科にいた八木秀次、宇田新太郎の両名が発明したものであり、それが太平洋戦争で米軍をより有利にした一因になっている(これに関して詳しい事はコチラへ)。
ロケットももともとはフランス等の技術者達が研究していたものだが、それを軍事転用したのがナチス・ドイツであり、もともとの研究は軍事とは全く違った所にある。
だが、こうした技術は軍事利用されると途端に発達するのもまた事実であり、八木・宇田アンテナなども全く同じ経路を辿っている。
科学技術と軍事利用は、何だかんだと切っても切れない縁にあるのだから、今回のH2Bロケットの技術が永年に渡って軍事利用されないとは言えない。言いたいだろうが、今の我々には言い切る事ができないのである。
ま、そういう建前はココまでにして、実際の所、北朝鮮の言い分はまたしてもか、というものである事に違いない。
もし日本が軍事的に何かやろうと考えたなら、もっと別の事を考えるだろう。宇宙開発を軍事利用するには、今はまだ金がかかりすぎるからだ。
そういう視点で考えれば、北朝鮮の言い分はロケットという部分以外は間違っている事になる。
ロケットだけはミサイルへの転用が非常に有効であるため、言い分も分からなくはないが、多段式ロケットを多段式ミサイルにして、日本が北朝鮮を射程圏内に収めたところで、そこに何の意味があるというのか?
どちらにしても、北朝鮮は戦術的な事ばかりに目が向かっているように思う。戦略的に考えれば、国を乗っ取る為に直接的軍事兵器を使うなんてのは愚策もいいところである。
…今の時代は物理的兵器よりももっと怖いものが存在するのである。
どうせなら、そういう目に見えないモノを警戒すべきだろうと思うが、いかがなものだろうか?