Appleは昔からデスクトップ仮想化技術で物理コンピュータからMac OS切り離して管理する事を認めていない。
だから、Windowsのように最新Windows 7の中に仮想化してWindows XPを共存させるような事をMac OSではできないようにしている。
だからMac OSの中にWindows環境を再現するというのは、昔からSoft Windowsなどの仮想化システムで利用する事はできたが、Windowsの中にMac OSを再現するなんてソフトも公式には存在していなかった。
しかし時代は仮想化の時代に突入し、Windowsではそうした仮想OSでの運用に拍車がかかりつつあり、またVMWareは最近になって“VMware vSphere 5”でAppleのサーバOSをゲストOSとしてサポートすることを明らかにした。
つまり、既に存在が消えてしまったApple Xserverを仮想化で再現可能としたワケである。そしてこの動きは、今後Appleが仮想化サポートをデスクトップOSにまで拡大する可能性を感じさせるまでになった。
もちろん、公式な話ではないため、ホントにMac OSが仮想化可能になるかは分からない。ライセンスの考え方など、Appleが拘っている部分もあるのが現実だし、そこにかなり高いハードルがあるのも事実だ。
だが、ハードウェアレベルではMac OSは既にWindowsとほとんど同じプラットフォーム上で動作している。実現しようと思えば、技術的にはもうそんなに高いハードルではない。
ここ数年の間、Macは確実にWindowsのシェアを奪ってきた。
それは米国のみならず日本国内でも同じで、全国チェーンのPC関係ショップでの店頭にMacのコーナーが設けられるようになったのもそれを牽引している。
今やApple StoreでなくてもMacを買う事ができる時代であり、もともと質感の高いMacのデザインはWindows 7が発売される前の買い換えユーザーの心を奪ったのも事実である。
ネットが閲覧できてメールができて写真の管理ができて動画(DVD)が見られれば用途としては問題ない…そういうユーザーからすると、Windowsを選択する必要性がないのである。唯一Windowsが有利なのは、周囲が使っているプラットフォームがWindows優勢という事であり、分からない事があればその人たちに聞ける、というぐらいのものである。
だが、iMacを中心にMacユーザーは確実に増えた。ノート分野でもMac Book Proを購入し、どうしてもWindowsという時はBootCampでWindowsを使用するという人もいる。
Mac OSのシェアは確実に広がっているのである。
そう考えたとき、既存Windowsユーザーからすれば、そうしたMacユーザーとの親密な関係性において、Mac OSがもっと身近なものになれば、と思うのは必然である。
正直言うと、私もMac派だった。
私はその昔、Power Macintosh 9500のユーザーだった。
コイツは商用Macだったため、普通に購入するとビデオカードが付いてこない。今のPCならビデオカードがなくても内蔵VGAなどがあるため問題はないが、この当時は内蔵VGAなんて気の利いたものもなく、何もしらない状態でコイツを購入するとモニタに映像が表示されない。
搭載されていたCPU(Macの世界ではMPUと言ったりした)はPower PC 604で、当時のPower PCシリーズでは最強最速のコアだった。技術的にPower PC 603系と異なる部分があり、結果的にはその後のPower PCは603系が発展していく事となった(後のG3、G4コアは603eの発展型)のだが、アーキテクチャ的には604は603にない優れた部分も多数持っていた。
PCIスロットを6基装備し、拡張性も当時のMacintoshでは最大のものをもっていた。
正直な話をすると、民生で使用するには過剰なMacintoshだったと言わざるを得ない。
なぜ私がこのPower Macintosh 9500を購入したのかは話が非常に長くなるためココでは割愛するが、このPower Macintosh 9500と出会ってから私の人生が大きく変わったのは事実である。
このPower Macintosh 9500に搭載されていたOSは漢字Talk7.5で、今のMac OSの前身にあたるOSだった。ところがこの漢字Talk7.5は、実に短命だったと記憶している。購入してそんなに時間を掛けずにMac OS 8が登場したのである。
この出会いで初めて触ったMac OS(漢字Talk)は、MS-DOS、Human 68k(SX-Windows含む)、Towns OSを使ってきた私からすると革命的なOSだった。
とにかく使いやすい。ソフトをインストールした後も何がどう反映されたのかがすぐに分かるようになっていたし、何かしたい事があったとしても、それらを深い階層をかき分けてソフトを選ぶ必要もなかった。
その後、Windows95が登場したワケだが、その出来を見てもさほど驚く事もなかった。何しろWindows95ですら、Mac OS 8の操作性にほど遠い存在だったからだ。
その後Windowsはどんどん改良を重ね、格段に使いやすくなった。Mac OSも進化はしたが、Appleが経営不振に陥り、進化の度合いは随分と遅くなったという事もあり、Windowsが徐々に使いやすさの差を詰めてきた。
Windows XPで、その操作性はまだ届かないにしてもかなり近づき、全世界のシェアはWindows XPが圧倒的になったが、iPodでメキメキと企業力を強化したAppleは、革新的な変化をMacintoshに与えた。それがx86コアでの動作である。
Power PCから脱却し、x86コアで動作するMac OSが登場してから、おそらくWindowsを選ぶ理由がかなり希薄になったんではないかと思う。できる事に差がなくなり、操作性に差がなくなった時から、Windowsであるか、Macであるかは、一般ユーザーにしてみればあまり大きな意味はなくなったのかもしれない(一部ゲームユーザーは別。ゲームはWindowsが圧倒的に有利)。
だが、そうした“出来る事に差がなくなった”環境で、それでもOSの違いによって垣根がある状態が今だとしたら、MacユーザーとWindowsユーザーの仲介がもっと簡単になるソリューションは絶対に必要だと言える。今はMacユーザーがWindowsに近づく事はできても、その逆が出来ない。
私がMacintoshユーザーだった頃、このWindowsとの差に随分と悩まされた。今のようにメールなども発達する前だったから、データを受け渡すのも一苦労だったのである。
今では簡単なデータであればネットを介して何ら問題なく受け渡しはできるだろうが、アプリケーションレベルでWindowsでは絶対にできない事があるのは変わらない。
WindowsユーザーがMacに近づく事ができる環境、つまりWindows上にMac OSが走る状態がやってくれば、Windowsで出来る事はもっと増えるし、それは逆にMac OSの大きな発展にも繋がるように思えてならない。
もし、Windows上にMac OSが走る状態で、使っているアプリがMac OS上で動くものばかりになってしまったとしたら、その人はもうWindowsを使い続ける意味がない。次からはMacを購入すればいいのである。…そんな事あり得るワケがない、と思う人もいるかもしれないが、Mac OS上で動作するアプリはとにかく使いやすいのである。データベースソフト一つとってもMac OSではかなりのシェアをもつFile Makerは私が感じる限りWindowsの標準的にデータベースMS Accessよりずっとわかりやすい。他のアプリケケーションでも同じような事が多数言える。
とまぁ、まだハッキリした事など何もない状態ではあるが、個人的にはWindows上でMac OSが動く環境というのはいつでもWelcome!である。
ならiMacとかMac Book Proを買えばいいじゃないかと言われるかもしれないが、ゲームという問題で私はWindowsを使い続けている。実際、ノートPCの需要があれば、Mac Book Proを選択肢に入れようと思ってもいる。ただ、今はその必要性がないのである。
仮想化でもMac OSが使える環境になれば、多分私のPCの使い方も随分と変わるのではないかと思う。そんな時代がやってきて欲しい…ホントに切に願うものである。別にWindows 7が嫌いというワケではないのだが…。
ITmedia
期待が高まるデスクトップ仮想化による「仮想Mac OS」の実現(前編)
http://j.mp/iWSfHL