米フェイスブックがAndroid向けの新アプリ“Facebook Home”とそれをプリインストールした台湾HTC製スマートフォン“HTC First”を発表した。
iOSをメインに使用し、またFacebookそのものを必要としていない私からすると、正直どうでもいい話なのだが、アプリの開発元であるサービスメーカーがまたしても独自のハードウェアを展開してきたか、とその点のみ気になった。
私はFacebookをホントに必要としない。SNSとして優れているのかもしれないが、これほど本人特定の信憑性に欠けるサービスはない、とすら思っている。多分米国では本名で登録している人がほとんどなのかもしれないが、日本で本名登録している人はいわゆるネットにそんなに詳しい人ではない人が大部分で、あとは有名人レベルなのではないかと思う。
むかしから2ちゃんねるを閲覧している人や、自作PCを作る人など、一定のPCに関する知識を持ち合わせている人ほど、Facebookの必要性は低いのではないかと思うし、そういう人達ほどFacebookという存在そのものに確たる信憑性を持っていないと思う。
私もFacebookのアカウントを持っている。それも2アカウントだ。一つは本名、もう一つはこのBlogでも公開している「武上」の名称である。
更新頻度は「武上」アカウントの方が断然多い。このBlogの更新情報が載るからだ。だが、私の本来の知人は、本名アカウントに関連付くワケだが、最近、この本名アカウントにやたらと出会い系と思しきアカウントから知人申請がきている。申請者は女性名だが、そのアカウント情報を見ると性別が「男性」になっている。つまり…まぁ、言うまでもなくそういう事である。
こういう状態が普通に起きているのがFacebookであり、少なくとも日本のFacebookの使われ方はそうしたフェイクとの棲み分けの上に成り立っている。そのフェイクにどこまで個人情報を公開するか? Facebookの難しさはそこにあり、自らを守る事ができる人でないとどんな被害が待っているか想像が難しい…そんなSNSだと私は思っている。
ちなみにこれはLINEでもTwitterでもmixiでも同じ。ただ、個人的にTwitterはそうしたフェイクすら楽しめてしまう手軽さがあると思っていて、むしろフェイク部分の方が多いかも…という気がしている。LINEはFacebookと同じで、踏み込んでいける領域の線引きが難しいプラットフォームという認識がある。ま、人それぞれ感覚が異なるから、何が良くて何が悪いなんて事は言えないのだが、個人的にFacebookとLINEは馴染みにくい。
話を戻す。
今回米フェイスブックが公開した情報だと、Facebook HomeはAndroid OSのスキンという感じのものである。
OSに統合され、独自のインターフェースをユーザーに与えるものであって、独自のプラットフォームという類いのものではない。だからコレ単体で考えれば、他プラットフォームが脅威を感じる必要など全くない。米フェイスブックは、このインターフェースを前面に出し、最優先サービスをユーザーに売り込んだ、というだけの事である。
だが、これは逆を言えばライトユーザーの囲い込みに直結する。
ユーザーニーズとして、知人とネットワークが繋がって情報のやり取りができればそれでいい…というただそれだけの目的ならば、別にその背後で動作しているOSがAndroidだろうがiOSだろうが関係がない。目の前に見えるインターフェースが全てであり、ユーザーがそれだけを簡易的に求めるならば、それが前面に出てくる専用端末を販売すればそれでいいのである。今回の米フェイスブックは、まさしくそういう商売をしてきたと私は見ている。
そして、その米フェイスブックの商売が成功する為のロジックがこの“HTC first”である。
見た感じ、丸みを帯びたiPhone5という感じ。というのも、液晶画面は4.3インチと似たようなサイズ(iPhone5は4インチ)で、解像度も1,280×720ドットと1,136 x 640のiPhone5と今の時代にしては類似数となっている。
コアは1.4GHzのQualcomm製Snapdragon 400(デュアルコア)で、これもある意味iPhone5のA6と処理性能的にはあまり変わらないと言える。
つまり、ハードウェア面だけで言えばiPhone5と同じようなものであるが、その価格が99.99米ドルという破格で提供される(通信キャリアとの2年契約が必須)。サービスはFacebookの機能をほぼ全て経由する事になるが、そもそも目的としてFacebookを利用してのコミュニケーションが主目的だとするならば、これほどリーズナブルな話はない。
ハッキリ言うと、今、iOSやAndroidはそのアプリの多さによって、何を利用すればよいのかわからない、という人が徐々に増えているように思える。
たしかにスマートフォンは後からいろいろな機能を増やせるというのが魅力ではあるのだが、実際いつも使用する利用範囲が限定されてくると、そこまでアプリ依存になったりしない。もう使うアプリは固定され、新しいものが出てきてもよほど使い勝手が良くない限りはいつも通りの使い方しかしなくなる。
つまり、プラットフォームは巨大になっても、利用するのはそのホンの表面部分であり、奥に潜んでいる実性能を使いこなすレベルの使い方をしない。それは私も同じである。
つまり、スマートフォンを購入しても、使うアプリがFacebook中心で、カメラもチャットもメールもFacebook経由でも問題がない、という人であれば、この99.99米ドルのHTC firstで事足りるのである。
米フェイスブックのこの商売は、Nexus 7などを発売したGoogleに近い感じがするが、それよりもよりシンプルにした商法だと思う。
しかも通信できる幅はGoogleタブレットよりも広い。米国ではAT&Tのキャリアを利用する事ができるし、LTEにも対応している。つまるところ、そうした3G&LTEの通信が出来、Wi-Fiが使え、そしてその回線の上でFacebookがいつでも使える。それがHTC Firstの全てである。ハードのことなど詳しくなくても、通信キャリアの事など詳しくなくても、Facebookだけ知っていれば使える。そういう意味で考えれば、これほど単機能なスマートデバイスはないのではないだろうか(そもそも単機能でスマートデバイスというかどうかはわからないが…)。
一応、日本で発売されるかどうかは現時点で未定。
日本では米国ほどFacebookが普及していないというのがその理由かもしれないが、今後どうなるかはわからない。
docomoがFacebookに活路を見出すとは考えにくいが、選択肢の一つにするかもしれない。まぁdocomoは、噂でiPhone5SからiPhoneを取り扱う可能性がある、としているが、そもそもそれもまだ未確定。
未確定だから、もし日本で発売されるとしたら予想外のキャリアから登場するかも知れない。
ただ、この価格だけは驚異的。
それだけに、日本のキャリアはほとんどが慎重になるのではないかと思う。
この風雲児の登場で、通信キャリアの価格競争が激化し、よりユーザーに望ましい状況になるならこれは歓迎すべき事だし、ただこの価格の安さが、通信キャリアや製造メーカーを締め上げてサービス自体の品質に悪影響を及ぼすようなら、日本国内の導入は見送ってもいいのではないだろうか。
私は価格が安ければそれでいい…とは言わない。
キャリアが一定の利益を出してくれないとサービスが滞ってしまう。その辺りのバランスを見て、日本国内の取扱を検討してくれればそれでいい。
ま、通信費が安いに越した事はないんだけどさ…。