世間が円安になり、日本経済が潤い始めたという話が出ている。実際輸出産業は1円変わると輸出規模にもよるが大きな利益が出ると言われている。
しかし、一般市民は個人で輸出などしないし、ほとんどの場合は逆に輸入の恩恵を受ける事になる。
つまり、円安という状況にとっての輸入が、一般市民にとって意味のある事なのかどうかがポイントになる。
結論から言うと、円安の意味はある。ただ、その恩恵を受ける為には長期にわたる時間が必要であり、実際に恩恵を受けているかどうかを体感できるかどうかはわからない、という事である。
円安の意味は順序立てて考えるとよくわかる。
まず円安になる事で輸出企業に利益が出る。この事でその企業に働く人の給与が増え、新たに雇用が生まれる。給与が増え雇用が増えるとそこで新たな消費が生まれ、他分野の企業の利益が増え、同じくそこで働く人の給与が増え、雇用が増える。そしてまた消費が増え…と続くワケである。
だが、問題は2つある。
輸出企業の利益は出るが、そこに働く人の給与が増え、雇用が増えるかどうかが分からないという事と、各部分での消費が増える部分で本当に消費が増えるかどうかが疑問であるという事だ。
さらに仮にその流れになったとしても、この流れがあまりにもゆっくりだと、当初は恩恵がない状態が続き、仮にその動きを見せたとしても恩恵を受けている事に気づきにくい事になる。これは逆から言えば、恩恵が受けられない状態のまま、世間は円安の影響下へと進むという事でもある。
だから円安になった直後、一般市民は逆効果しか感じられない。生活は円高の影響下にある状態で、輸入品の物価だけが高くなるという現象が、マトモに降り注いでくるからだ。
現在の日本において輸入品に頼らない生活はまず出来ない。それは一般食品に始まり、嗜好品ですら輸入品の影響が大きいためである。
個人的には円安自体は歓迎なのだが、あまりにも極端な動向になると、本来の動向と違った印象だけが生活に定着してしまう。今の状況はまさにそんな状態ではないかと思う。
この状況下、Apple StoreでのApple製品が大幅に値上げされる事が5月31日に発表された。
ざっと挙げると、第4世代iPadで7,000円~16,000円、iPad miniで4,000円~11,000円、第5世代iPod touchで5,000円~6,000円の値上げになる。
結構な値上げ幅と言える高騰ぶりだが、この価格改定に関してそれでも売れるという自信がAppleにはあるというのだろうか?
個人的にはiPhoneやiPadの強みはもうないと思っている。私自身はiOSを使い続けたいという要望があるためiPhone5を使用しているが、ハードウェアとしてはiPhoneの強みを今は全く感じていない。
最近は残念ながらSamsungのGalaxyシリーズなどAndroid勢が非常に強くなってきていると思うし、操作性でももはや違いがないぐらいになってきている。アプリケーションの充実度にしても、差がない状態になってきているし、スマートフォンで言えばあとは肝心の回線をもつキャリアの問題との兼ね合いとしか言いようがない。日本は未だ回線事業者がハードを売るという体制になっているため、回線によってハードを決めるというスタイルだから、iPhoneを扱わないdocomoの強さはすなわちAndroidの強さの一翼を担っていて、他国よりも強い印象がある。
そんな中でのApple製品の値上げである。
新しい消費者が、この値上げでApple製品を選ぶかと言われれば、個人的には微妙としか言いようがない。
今、Appleは次なる新製品へと動こうとしているようだ。
iRadioなる、放送局と連動した新製品という話も出てきているし、iWatchと呼ばれる腕時計型の新製品という話も出てきている(情報ソースについては検索して欲しい)。
新しい分野を開拓するというフロンティア精神がAppleの基本だとするならば、今ここで値上げする既存製品には拘らないのかもしれない。その上で新製品を展開し、新しい時代を切り開く…。そういう事なのだろうか?
どちらにしても、今回の値上げの発表で駆け込み需要があったのは事実で、それなりにApple製品に拘る人達がいる事も事実。そうした人達をどう扱うかの一つの答えが今回の値上げだったように思うと既存カスタマー重視というよりは、Appleという企業体制を支持する人達をより重視している、という事なのかもしれない(良く言えば、の話だが)。
アベノミクスなんて言葉が生まれたが、それらは一般市民には程遠い言葉の意味であり、それが実生活に降りてくるには実感する事のできない長さの時間と、急激な痛みを伴う事は間違いない。
その痛みが一つの形となってApple製品の値上げという事態を生んだ。
実際、PCパーツなどもこの痛みとも呼べる流れが現れ始めている。
円安のメリットが早期に一般市民に降りてくる事を切に願うのみである。
ガソリンと同じ。
単価上がった→即値上げ
単価下がった→在庫は高い価格で買ったから…
円高→企業儲からないからと言い訳された上給料下げる
円安→今まで損してたからあげられんと言い訳。
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ま、心のホンネなんだろうが、もうちょっと前向きに考えてみよう。
円安そのものは今の日本には絶対不可欠な要素である事は間違いない。
もし、円高がさらに進行してしまっていたなら、もっと深刻な状況になっていたに違いないのだから。
ただ、私が日本経済を動かしている人達に言いたいのは、急激な円相場の変動にならないようにして欲しいという事。
日本企業や日本で働いている日本人は、与えられた環境への順応がとても柔軟だから、変動が急激でなければどうにかする術を持っていると思う。
でもあまりにも先が読めない急激な変動の仕方をすると、順応する前に企業が傾いてしまう。
それを防ぐのが国家機構だと私は思う。
まずは円安で順当な動きをしたのだから、今からは変動少なめで長期にわたって安定する円相場の実現をぜひ行ってもらいたいものである。
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