先週末、秋葉原ではGIGABYTE版NUCとも言えるBRIXのIris Pro搭載モデルの“BRIX Pro”が販売開始となった。
だが、私が本当に欲しいのはコレジャナイ…。
圧倒的に強いIntelだが…
今更言う迄も無いが、モバイル含めて省電力型x86コアはIntelが圧倒的に強い。だから小型フォームファクタであるNUCなどのPCは、ほぼ全てと言っていいほどIntel製コアを搭載したものしかない。
確かに今の主要な用途ではIntelコアの方が都合が良いのかも知れないが、Iris Proを搭載した、という時点で今までの方向性とは異なる製品群になる。
今まではブラウジングやメール、ちょっとした文書の取扱、音楽やビデオの再生といった、一般的な用途に対してのソリューションでしかない。しかしIris Proを搭載してきたという事は、そうしたソリューションの中でも特にビデオであったり、グラフィックスという部分にフォーカスした製品である事は間違いがなく、BRIX Proはそうしたニーズに対応した製品である事は間違いない。ま、要するにゲーム用途含めてのグラフィックス向け製品だな。
だが、実際Iris Proのグラフィックス能力というのが、どの程度なのか?
昔、私がVAIO Duo 13を購入する際に、Intel HD Graphics 4400や5000などの性能をいろいろと比較はしたが、当時はIris Proの情報も少なく、具体的にIris Proの実力というものが世間的に知られていない。
では実際問題、Iris Pro Graphics 5200はどの程度の実力を持っているのだろうか?
Kaveriと同格かそれ以上?
実は私と同じ事を考えた…というわけではないだろうが、既に比較したサイトが存在する。
4Gamer.net
http://www.4gamer.net/games/999/G999902/20140208005/
ここでAMDの最新APUであるKaveri世代のA10-7850Kと比較している。
この結果を見ると、A10-7850Kと同等もしくは若干上か? と思えるパフォーマンスを発揮している。
この結果には私自身も驚きだったのだが、もっと重要なのは、これだけの性能を持っていながら、Iris Pro Graphics 5200の方が消費電力が小さいという事だ。
これならグラフィックスに強いと言われるAMD製APUコアを選択するまでもない…という結論になっても不思議ではない。
だが、もちろん問題もある。
それは処理が重くなればなるほどAPUの方が有利になるのと、その示した性能がDirectX11より以前の性能で主として発揮されるという事だ。
今現在で言えばまだDirectX 9.0cなどのPCゲームが多いが、これは年々DirectX 10以降に対応したタイトルが増えていく事は目に見えて明らかだ。というのも、Microsoftが2014年4月9日以降にWindowsXPのサポートを打ち切るという事にも連動して言える事だ。
Windows Vista以降となれば、標準的にDirectX 10以降が普通になり、しかもVistaはDirectX 111にも対応できる為、開発はDirectX 11へステップしていく事は想像に難くない。
ともすれば、これは必然的にAPUの方が今後は有利になっていくという事。グラフィックス面で言えばこれは間違いのない話になる。
ただ、CPUとしての性能はアーキテクチャの関係もあってIntelコアの方に分がある。
これらを総合的に考えていけば、現時点ではこの両者はほぼ同等と見て良いかも知れない。
それでも私がAPUを推したい理由
私はBRIX Proに対抗する製品としてAPUを搭載したBRIX系の小型フォームファクタの登場を望んでいる。
A10-7850Kを搭載している小型フォームファクタが登場すると、BRIX Proと真っ向勝負できるPCになる、というのもあるが、用途から考えてA10-7850K搭載の小型PCの方が私のような者の要望を吸収できる個体になるのではないかと思うのだ。
問題は私のような者の要望…という所だが、これはネットブラウジング、メール、ゲーム用途、ビデオ鑑賞用途、音楽再生用途を主とし、可能であればそれらの編集も時々行う可能性がある、という事である。ま、マルチメディア系に偏っているといえば偏っているかも知れない。
これらマルチメディア系処理を中心とした用途を望んだ場合、APUの方が有利に働くと考えるのには、もちろん理由がある。
ここにこんな記事がある。
impress PC Watch
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/review/20140318_640038.html
この記事は、動画再生におけるGPUメーカーの違いを検証した記事である。
但し、この記事自体も憶測で書かれている部分もあるため、全てがこの内容で正しいという事は言い切れない。しかも最終動画品質はモニターでも変わるため、見た目の問題だけで解決できる事ではない。
だが、この記事で一つだけ確実に言える事は、動画再生に関する高画質化機能はKaveriに搭載されたGPUがもっとも豊富で高度な処理をしているという事である。
これは元々備わっている機能の問題であり、CPUとGPUの密接な繋がりが実現した機能であるから、まさにAPUでしか実現できないものである。
Iris ProもCPUと密接な繋がりを持つGPUであり、またメモリですら超高速メモリをコア内に持つという特徴も持つが、それを生かし切れるドライバが提供されていないという実態がある。
つまり、現時点で、私が求める用途に最大限機能を発揮し、性能を発揮するのは、Kaveri以降のAPUだという事だ。
問題は消費電力とプロセスパッケージ
Kaveriの問題は、Intelコアよりも消費電力が大きい事だ。これは微細化プロセスの進化で補う事ができるのだが、残念ながら依然としてIntelがこの分野で先行している事実は変わらない。22nmで作られるIntelコアに対し、28nmで作られるAMDコア。この差は地味に消費電力と熱問題に効いてくる。
微細化が進めば、ほぼ確実に消費電力が減り、同時に熱問題も軽くなる。
だが、Intelコアにはそれだけに留まらない省電力機能が備わっている。それが統合電圧レギュレータである。
但し、これはノートPC等で重要になる要素であり、今回のBRIX Proのような製品では大きな要素とは言い難い。だからAMDのAPUがIntelコアに追いつくためには、今は純粋に微細化を追い続けるしかない。
もっとも、そんな未来の話をしなくても、今回のNUCクラスの小型PCの場合は純粋に消費電力を許容できるかどうかだけの話でしかない。
もともと据置PCになるし、ノートPCほどシビアに省電力化を考える必要はない。
必要なのは機能であり、性能である。
あとはA10-7850K搭載の小型PCという製品が登場すればいいだけの話。
A10-7850Kが搭載できる一番小さいマザーボードが、現時点ではMini-ITXでしかない為、NUCになれないというだけの事である。
APUにBRIX Proのような製品が存在しないため、イーブンの比較はできないが、もしBRIX Proの大きさを絶対的に必要としないなら、A10-7850Kを使用したMini-ITXで自作する方が機能・性能的に満足できるPCになるだろう。大きさとしてBRIX Proでなければダメなら、そこに選択の余地はなくなる。
どこか、A10-7850KでNUCクラスのPCを作ってくれないだろうか?
絶対に需要はあると思うし、自作PCに抵抗のある人でもNUCのようなパッケージで販売すればメモリとストレージを搭載するだけで完成であるため、敷居も低い。
今の所NUCはIntelの独壇場になっているだけに、面白味に欠けるだけでなく、用途が完全に固定されてしまっている。ここらへんで違う風が吹けば、低迷しつつあるPC市場に新しいトレンドを生み出す事もできるかもしれないのだが…。