まぁ…過去にもビジネスホテルに数日なんて事はあったが…
岡谷入り
今、場所は長野県は岡谷市のとあるビジネスホテルの一室の前。ここに数日泊まり込み、米国からの訪問者と戦う事になる。
昨日も書いたが、米国のアメリカ食品医薬品局(FDA)の査察が明日の朝から行われる。
この査察、医療機器を米国に輸出する場合、どうしても避けて通れない道なのだが、我々の場合は多少事情が異なる。
というのは、私の勤め先が数年前にとある医療機器メーカー企業をグループ傘下にしたのだが、その企業がなんと米国FDAにワーニングレターを受けていたのである。…まぁ、知らなかったわけではないのだが、少なくとも私のFDAに対する認識が低すぎた事もあって、当初はこれがどれだけ悲惨な状況かという事を知らなかったのである。
徐々に情報が入ってくるようになると、その状況が飲み込めてきたわけだが、このワーニングレターを出されると、米国への医療機器輸出が一切出来なくなるのである。
米国という市場は日本市場より遙かに大きく、これが止められると企業としては痛いなんてものではない。
しかし、非常に残念だがこのワーニングレターを撤回するのがまた一苦労で、なかなか解除する事ができないのも事実なのである。
だから、今回のような査察を受けるとなると、その前準備は驚くぐらいに入念に行わねばならず、また失敗は許されない。失敗すれば、また再査察を受けられるだけの準備を整え、再度トライするしかない。
それこそ、ワーニングレターが解除されるまで、終わりなきマラソンをするが如く対応に追われるのである。
その難しさたるや…
文章で書くと、比較的簡単に見えるかも知れないが、このワーニングレターの撤回というのは、かなり難しい。
実は日本でも有名なとある医療機器メーカーは、数年前に米国でワーニングレターを受けたが、そこから製造設備に数億…いや、桁がまだ違うかもしれないが、それぐらいの予算を投じ、システムを変更しても未だワーニングレターが撤回されていないという事実がある。
もちろん、金を掛ければ良い、というものでもないのだが、要するに金では解決できない、という意味でもある。
厳密に決められた事が実践できるシステムを構築し、それが順当に実践できる施設を構築し、製造できるという事をFDA査察官に証明しないかぎり、このワーニングレターは撤回できない。
このためには、少なくとも米国の法律である21 CFR 820.20のQSR規則は間違いなく理解していなければならず、それに準じたシステムを構築する必要がある。
ISO 13485という医療機器QMSが存在するが、こちらは認証機関に対して認証を受ける我々が認証を受ける為に料金を支払う為、お客さんという立場になる。そのため、比較的監査の内容に甘いところが見受けられるが、米国FDAの場合はこちらから料金を支払う事はない為、当然こちらがお客さんではなく、ある意味警察に尋問される側と同じような立ち位置になる。今回の査察に関しても、米国から査察官が来るにあたり、こちらから料金を支払う事もなく、米国という国家機関がエージェントを派遣してくるのである。しかも今回は国務省の通訳付きという事が直前で発覚したため、より厳しい査察が予想されるため、そのワーニングレター撤回の難しさたるや、困難を極める事は疑いない。
さて…どうしたものか…。
より説明に難しさが加わる現状
我々が今回のFDA査察を受ける際、もっとも困難を極めるのは、以前ワーニングレターを受けた状況と、今回の状況とでは、会社の体制が異なるという点に集約される。
前述した通り、私の勤め先が医療機器メーカーを傘下に置く前にその医療機器メーカーがワーニングレターを受けていたわけであり、今のシステムとは異なるシステムで運用されていた時にワーニングレターが出されている。
今回は、そのシステムではないQMSで査察を受けるのだから、その説明は困難を極める。いや、単純にQMSが変更になった、という事を説明すれば良いのだが、解釈が変わってしまうと、正確な情報を与えることができない。
話す言語が異なる人に対してそれを説明するのだから、通訳の人もある程度こうした知識に精通した人を使わないと、与える情報に齟齬が生まれる。
だから今回の査察は非常に厳しい状況にあるワケである。
まぁ…結局は順序立てて説明していくしかないワケだが、今回、非常にヤバイと思っているのが、その難しい部分の説明を私が仰せつかったのである…。
私よりも本来ならそれを説明するに相応しいハズの人材がいるのだが、どうにも現状がそれを許さない事情が出来てしまい、結局私がそれを担う事になってしまったのである。
もうね…私の緊張も限界なワケですよ… orz
とりあえず、想定できる範囲で全体の説明を行う為の資料を作成、その通りに説明ををしていくが…果たして上手くいまりだろうか?