昔、確かにこんなのあったな…。
特許権、消滅
私が初代PlayStation(SCPH-1000)を購入した理由は、自宅でリッジレーサーをプレイしたかったからだ。よくよく考えてみれば、あれだけ良く出来たゲームがローンチタイトルだったと思うと、PlayStationはある意味ものすごく恵まれたハードウェアだったのではないかと思わざるを得ない。
そのリッジレーサーだが、起動した時にまず驚いたのが、リッジレーサーが起動せず、いきなりギャラクシアンが起動した事である。
一瞬「は?」と思ってしまうほど自然に起動するギャラクシアンだが、このギャラクシアンは普通に遊べてしまうミニゲームであった。
そのギャラクシアンのミニゲームが終わると、これまた何事もなかったかのようにリッジレーサーのタイトルへと進むわけだが、要するにこれはリッジレーサーが起動するまでに読み込まねばならないプログラムが膨大であったため、それを感じさせないようにする為の工夫であった。
ちなみにこのミニゲーム、全ての敵を倒してクリアすると、本編で使用できる車種が大幅に増えるという秘密があった。まぁ、オマケ的な要素とは言え、実際遊ぶ段階では結構重要な要素と言えたかも知れない。
PlayStationがはじめて発売された頃というのは、CD-ROMによるゲームメディア媒体はまだ珍しい存在で、PCエンジンがようやく確立していた程度で、他は3DOやNEOGEO CDといった次世代を模索するようなハードウェアのみが扱っていた媒体だった。
CD-ROMはその生産性の高さは非常に優れていたが、難点は読み込み速度が遅いことであった。これは同じ光メディアである現在のBD-ROMやDVD-ROMも全く同じで、昨今は倍速駆動で確かに昔よりは速くなったとは言え、他記録メディアから比べるとどうしても遅いという難点は今以て変わらない。
そうした遅いローディングをカバーする為に、かつてのナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)が考えた手法だが、残念な事にナムコの特許技術として登録され、全体的にこの手法は浸透しなかった。
だが、この特許権の期限が今年で消滅するらしい。
特許情報プラットフォーム
http://j.mp/1HsFZLw
(上記リンク先の検索項目の中に「ゲームプログラムおよびデータの読込み方法、ならびにこれを用いたゲーム装置」と入力して検索すると該当案件が表示される)
今後出てくるのか?
この特許権、実は日本国内では昨年に既に消滅していて、今年消滅するのは米国での話。簡単に言えばこれで全世界で使用する事が可能になる特許、という事である。
流石に今の時代に日本だけでその特許を行使したならば、そのままのプログラムで海外展開できないため、採用するメーカーはいなかった、という事だろう。
だが、今年米国で消滅した後、この技術を使ってくるメーカーは出てくるだろうか?
そもそも、狙いはローディング時間の隠蔽にある。
ユーザーがゲーム起動時間が長すぎる事で待つ事を防ぐ為に考え出されたものだが、現在のゲームは可能な限りローディングが短く作られており、PS4やXbox Oneではダウンロードさえもサスペンド状態の時に準備しておき、プレイを阻害しないように作られている。
こういう時代に、この特許の使われる場所というのはあるのだろうか?
最近はスマートフォンでプレイするゲームであっても多少ローディング時間が長いなと思うタイトルがあるが、それでもCD-ROM時代の長さほどではないし、基本的に分単位で待つという事はない時代だと思う。
確かにメインのゲーム前にミニゲームとは言え、往年の名作が遊べたリッジレーサーはちょっとお得感のあるゲームではあったが、この技術が今後使われるかどうかは、どう考えても微妙な話のように思える。
それに最近では「アーカイブス」という形で昔のレトロゲームを格安で移植したりするメーカーもいるわけで、そういうビジネスモデルとぶつかる可能性もある。
この技術を普通に使おうと思ったならば、結構難しい現実にぶち当たるように思えるが、もし、全く新しい使い方が登場するならば、今回特許権が消滅した事はユーザーにとっては喜ばしい話になるに違いない。
そういう意味で、新しい可能性に期待したいところである。