スタジオジブリでも使われたアニメ制作ソフトが無償公開へ。
OpenToonz
OpenToonzとは、ToonzというDigitalVideo社が開発したアニメ制作ソフトをオープンソース化したものなのだが、元々Toonzは普通にプロがアニメ制作する際に使用していたツールである。
スタジオジブリもこのToonzに独自開発した機能などを搭載して使用していたようだが、今回ドワンゴがDigitalVideo社を買収した事によって、オリジナルのToonzにスタジオジブリが独自に開発した機能のほか、ドワンゴの人工知能技術を利用したエフェクトや、エフェクトを追加できるプラグイン機能を搭載し、新たにOpenToonzとして無償公開する事となった。
OpenToonz
https://opentoonz.github.io/
OpenToonzのオープンソースプロジェクトについては、3月26~27日に東京ビッグサイトで開催されるAnimeJapan 2016にてその詳細が説明される。
恐らく、ドワンゴが学校法人を立ち上げた事と何かしら連動して日本のマルチメディア教育の一環として何かしら行うつもりなのではないかと思うが、こうしたツールが無償公開化される事については、私としては喜ばしい事ではないかと思っている。
プロとアマの違い?
先日、DMM.comが本数限定でSonyのプロ用映像制作ソフトを92%OFFで販売したという話もあったが、ここ最近、プロ用ツールのアマチュアへの公開が著しいように思う。
つまり、アマチュアもプロが使用しているツールを使える様になったことで、その作られる作品の質というレベルにおいて、プロとアマの差がなくなりつつある状態が起きているわけだが、今だからこそ、プロとアマの違いというものは何なのか? という事を再確認した方が良いような気がしている。
ハッキリ言ってしまうと、最近はその出来上がる作品の品質という面において、プロとアマの差はないと私は思っている。
元々、アマチュアでもプロのような作品を作る人は存在していて、ただその制作する過程において、プロ用ツールを使うとより“らしい”作品が作りやすくなる、というだけの違いしかない。
逆にプロでもアマチュアとロクに変わらない作品を作る人もいるわけで、出来上がる品質という面において両者に明確な違いというものはないと思う。
それでも片方はプロであり、アマチュアな分けだが、ではプロとは何なのか?
厳しい言い方をすれば、プロとはその制作物に対して期限とコスト原価を求められた存在である、という事である。だから納期は守らなければならないし、コストオーバーすると売上がなくなる。
対してアマチュアは、もともとそうした納期に縛られる事はないし、コストも自分の持ち出しで制作する為、誰かからそれを求められる事はない。
これがプロとアマの違いであり、プロはそれ故にツールによって生産性を確保しているに過ぎない。
ツールはあくまでも道具だから、プロがツールに生産性を求めるのは当たり前であり、何も品質を求めているわけではない。ここを勘違いすると「プロ用ツールを手に入れた=プロ並の高品質作品を制作できる」という間違った認識に行き着きやすい。
プロのいない世界
プロとアマの違いに対して一定のポイントを抑えた後で言うのも何だが、最近私はプロとアマの違いがないのではなく、プロがいなくなったと思っている。
アマチュアが仕事を請け負ってプロのような事をする時代に突入したな、と思うワケである。
偏にユーチューバーと呼ばれる存在。
かの人達は、アマチュア視点で動画をアップしつつも宣伝費という形で収入を得、人々の共感を得てさらなる動画を公開していく存在である。
そしてさらに、偏にVOCALOID作者達。
かの人達は、自らが作り上げた作品を動画として公開し、人々の共感を得てそこから物販へと繋げていく。
そして偏に同人作家。
本業としてプロもいるが、年に数回のイベントで著作権のグレーゾーンの中で作品を販売し、それで売上を上げている人もいる。
他にも、最近はコスプレイヤーの写真を撮る趣味を持つアマチュアが、雑誌社から依頼を受けてアイドルなどの撮影を行って、プロ写真家よりも安い賃金でカメラマンとしての仕事を請け負っているというケースもある。プロよりも安い金額で使えることから、雑誌社側からは重宝されているそうだが、プロ写真家からすると自らの存在を脅かす存在になっているらしい。
これらは、全てアマチュアでありながらプロという立ち位置と言える存在である。
まだまだ、挙げていけばキリがない。
となると、プロって何だ? という話に逆戻りになる。
先程、一つのポイントとして定義したハズのプロという立ち位置が、現在では成立していないのである。
これらは、プロが使っていたツール、機材などをアマチュアが手にできるようになった現在、普通に起きている現象であり、本来なら生産性を追求するそれらツールをアマチュアが上手く使いこなした結果起きた事である。
変わる時代
では、今は何をもってプロと言えるのだろうか?
多分、それを明確にコレと言える人は少ないのではないかと思う。
私は先程「生産性を求めるのがプロ」と言ったが、多分、もうそれだけではプロとは言えない時代なんじゃないかと思う。
少なくとも、時間とコストという制約がなくなった時、そこにはプロもアマチュアも存在しない時代が今ココにある。
ではその制約を加味したとき、それでもその制約故にプロと言えるのか?
残念ながら、それでも明確に言えない時代だと思う。
だからこそ、アマチュアにはチャンスがあり、プロはその座を守り続ける必要のある時代になったと。逆に言えばプロの立ち位置にいる存在が、場合によってコロコロ変わる時代になった、という事である。
新しいプロが生まれ、あっという間にさらに新しいプロがソレに取って代わる…入れ替わりの激しい時代になったという事である。
最近の流れを見ていると、あらゆる業界でこの流れが見て取れる。
絶対的存在が少なくなっている理由は、まさにその地位を守り通す事が難しい時代になったという事の表れである。
プロを目指す?
とにかく、こうしたプロ用ツールが無償公開される事で、あらゆる人にプロへの道が開かれる。
別にツールが特別なワケではない。
前述したように、ツールはあくまでも生産性を上げる為のものであって、作られるものの品質を左右するものではない。
そして作られたモノを公開する場は、今やあらゆる人平等に開かれている。
生産性を高められるツールが手元にあれば、限られた時間で自らのセンスを凝縮した作品を比較的早く作る事ができる(もちろん慣れれば、だが)。
そういう意味で、ドワンゴは未来のクリエイターを本気で大量生産するつもりなのかもしれない。
そういう動きを嫌う人もいるかもしれないが、一人の消費者として、私はこの行為を喜ばしいものとして受け止めている。