そういえばこんなのもありましたな(-_-;)
1chip MSX
当Blogでもかつてこの記事を書いた…と記憶していたので過去記事を検索してみたら、記事が出てこなかった。
何でだろ? と思って1chip MSXの発売日を見てみると何と2006年。つまり私がBlogエンジンを使用する前に書いた記事だったらしく、今はその記録がないので当時どのような事を書いたのかが分からないが、その昔MSXなる家庭用コンピュータが発売されていた。
MSXはMicrosoftとアスキーによって提唱された8bitおよび16bitパソコンの共通規格で、規格に沿った製品を多数の電機メーカーが発売していた。ソニーや日立、パナソニック、キヤノン、富士通、三菱、ビクター、まだ他にもあったかも知れないが、名立たる電機メーカーからいろんな機種が発売されていた。
当時は今ほど集積回路そのものが微細化されていなかった事もあって、それなりの規模の基板が必要だったが、さすがに21世紀になるとそのMSX規格は1チップの半導体に収まるレベルであり、2006年にD4エンタープライズから「1chip MSX」として5,000台限定で発売された。
1chip MSX 紹介ページ
http://www.msx.d4e.co.jp/1chipmsx.html
仕様を見てみればわかるが、MSX2相当のハードウェアとなっていて、現代で利用できるようにPS/2端子やSDカードスロットなどが新たに追加実装されている。
カセットROMスロットを2つ装備しており、MSXのソフトウェアカートリッジをそのまま利用できるのだが、その目的の主はほとんどがゲームで使用されるものと想定される。
MSXはファミコンと比較しても画面表示能力は下回っていたが、MSX2ではそこら辺も改善されていて、ほぼビジュアル面はファミコンレベルと言える。
ただ、ゲーム専用機ではないので、プログラミングなどでもいろいろ利用でき、プログラム入門機としては良く出来た規格ではないかと思う。
中古品が出回った
何故そんな話を出したかというと、秋葉原のレトロアイテム専門店「BEEP 秋葉原店」で、この「1chip MSX」が中古品として出回ったのである。
箱のないものが税込43,200円、外箱も揃った完品が税込54,000円というプライスが付いているのだが、この価格をどうみるか? という事をちょっと思ったので記事に取り上げた。
価格をどう見るか?
中々にして難しい話ではあるが、実の所、多分この「1chip MSX」は、現在6,000円程度で販売されている「RaspberryPi 3」と比較して性能はずっと下回るハズである。
RaspberryPi 3は、64bitのARMコアを実装したワンボードマイコンだが、その性能は少なくともMSXレベルを遙かに凌駕し、ハイレゾ音楽を処理できるレベルの能力を軽く有している。
もし、1chip MSXをプログラミング目的で導入しようとするならば、私は全力を以てRaspberryPi 3をオススメしたいし、その方が安く済む。
MSXという規格そのものに意味がある、と考えない限りは、この価格はあまりにも高すぎると言わざるを得ない。
何故か?もともと1chip MSXの価格は税込20,790円だったのである。つまり、現時点でこの中古品は2倍以上のプレミア価格になっていて、しかも2011年10月15日を以て1chip MSXのサポートも終了してしまっているから、その後の保証もなしで2倍以上の価格で購入する製品になってしまっているのである。
MSXの過去の資産をどうしても使いたい、とかMSXである事に価値を見出しているとかでないかぎりは、このプレミア価格の中古品に手を出す理由はない、と私は考える。
…ま、私だけではないだろうが。
付加価値
こうした昔のレトロPCは、思わぬプレミアで予想外に高い場合がある。
最近特にそれを感じたのは、X68030の中古品を見たときである。もちろん新品時の価格よりはずっと安い価格だが、それでも1993年に発売されたPCとは思えないほどの価格で市場に中古品が出回った。おそらく元々の出荷数が少なかった、という理由がその価格を付けさせた背景だろうが、同時にその価格を許せてしまえているのは、未だ需要がある、という事の裏付けでもある。
1chip MSXも、おそらくそうした背景に支えられた個体なのだろうと思う。
誰がどう考えたって、今ならRaspberryPi 2もしくは3を購入する所を、あえて1chip MSXにするのだから、ニーズとしてはどうしても1chip MSXでなければならない理由があるハズである。
ともすれば、やはりMSXという規格で作成されたソフトウェア群にこそ魅力があるのであり、それがプレミア価格を支える原動力なのだろうと思う。
ふと今思い出したのだが、たしか数年前に初代Macintosh(1984年)が672,000ドルで取引されたという話を聞いた事がある。1ドル100円換算で考えても6,720万円…とんでもないプレミア価格である。これはソフトウェアに魅力があるとかそういうレベルの話とは異なるものだが、コレクターがいるという事の最大限の強みがこのプレミア価格を支えている。
製品価値というのは、その製品そのものの性能によるところで決まるのではなく、どれだけその製品とブランドに魅力があるか? という所に帰属するという事なのだろう。
何はともあれ、秋葉原には通常の価格帯ルールとは異なる流れを持つ(付加価値のある)製品が流れている。
今回気になった1chip MSXもその流れの中にある製品。
まだ店頭に残っているかはわからないが、MSXじゃなきゃダメなんだ、という人はぜひ狙ってみて欲しい。