IntelがAppleのM1チップに対して第11世代Coreプロセッサに優位性があると言っているが?
らしくない
Intelが第11世代Coreプロセッサを搭載したノートPCにおいて、AppleのM1搭載MacBookシリーズよりも優れていると主張するベンチマーク結果を発表した。
M1は当Blogでも書いたとおり、少なくともエントリークラスのノートPCでは破格のコストパフォーマンスを持つ半導体。その性能は異常に高く、それでいて発熱も小さいという、エントリークラスなら非の打ち所のない性能を持つものである。
同じ半導体を設計製造しているIntelからすると、IntelのCoreとM1を比較されてしまうと、どうしてもその性能差でIntelが不利になってしまう。
そこでM1より第11世代Coreプロセッサの法が性能は上ですよ、と言いたいのだろう。
その気持ちはわかるが、こういう比較は比較である以上、公正な比較をすべきである。
しかし、どうも今回のIntelの主張はそのような感じではなく、巧に細工されたもののようだ。
x86コアの王者でもあるIntelらしくない対応である。そこまで地に落ちなくてもいいのに、と思うのだが…。
せめて統一したら?
このIntelのベンチマーク比較に関するレポートは以下を参照してもらいたい。
engadget日本版
https://j.mp/3jCPeOO
論点がずれていたり、比較対象が変わっていたりするあたり、何ともセコイ比較である。
ただ、忘れてはいけないのは、M1はエントリークラス用のSoCであるという事である。
内蔵するRAMは16GBが上限であり、I/OとしてもThunderbolt3が2口までと、ハイエンドのMacでは利用できない(しない)SoCである。
現在Appleは上位Macの為に新しいApple Siliconを作っているとされている。噂では2021年後半に32個の高性能コアを搭載した新型Mac Proが登場するのではないかという話もある。これが登場すれば、Intelはまた差を開けられてしまう可能性がある。
この時、再びIntelのハイエンドコアとAppleのハイエンドコアで性能比較してくれる事を祈りたい。今のままでは、Intelはあまりにも見苦しいだけに終わってしまう。
あの、AMDを地に突き落としたIntelらしくないやり方に、正直私としてはなりふり構っていられない状況なのかな? と逆に憐れにすら思えてくる。
AMDとの比較
AppleのM1は、ある意味Appleが長年研究してきた自社IPの集大成であり、そこには独自の深層学習用コアが含まれていたりと、特殊な部分も多い。何より、5nmプロセスでの製造なので、内蔵しているトランジスタ数にも大きな違いがある。
なので、今のIntelと真っ当に比較できるコアがあるとすれば、AMDの製品ではないかと思う。
で、AMDと比較すると…これまたIntelは危機に陥る。
AMDのZen3は、そのアーキテクチャを見てもIntelコアを超える性能を持っている。もちろんIntelコアが得意な部分もあったりするので、全てにおいてAMD有利というわけではないが、今まで散々差をつけてきたAMDに逆転されている状況に違いは無い。
ただ、Intelはソフトウェアとの相性も良いのも事実で、Intelコアをベースにソフトウェアが作られているものも多い。その中でAMDのZen3が性能として高い評価を受けているというのは、Intelとしてはイタダけない事実である。
Intelはここ数年、自社ファブの10nmプロセスの失敗を問題視していたが、私としてはそこに問題がある事に固執してはいけないと思う。
少なくとも、アーキテクチャでも優位になれなかったという事が今になって明確になってきている。
おそらく、Intelもこの事を十分理解しているからこそ、体制を見直しているのだろうが、まさかAppleとの比較において、不明瞭なベンチマークを持ち出すとは…何がIntelにコレをさせたのだろうか?
やはり危機感なのだろうか?
何はともあれ、素直に現状を受入れ、再起を図る方が建設的である。
Intelぐらいの企業であれば、いつまでも今の状態でいるような事はないだろうし、今後の発展に期待したい。