NVIDIAはしきりにソノ手の製品を出すが…。
Lite Hash Rate版
NVIDIAが、ハッシュレートを制限したLHR版のGeForce RTX 3080を発売している。
マイニング時に重要となるハッシュレート値に制限がかかるGPUで、マイニングで利用すると性能がガタ落ちする、というものである。
こういった製品を発売する事で、マイニング需要から逃れる事を目的にしたわけだが、果たしてこれに意味があるのか、というのは、以前からいろいろ言われていた事である。
そもそも、GPUをGPGPUとして演算に利用する事で、マイニングでの演算を有利に進めてきた事で、そのマイニング利用者は大量のGPUを必要としてきた。
しかも、そうした人達は実利益に伴う事をやっているため、ビデオカードを大量に仕入れる事があったりして、グラフィック目的で購入する人が購入できない、という問題が一つの大きな問題となっていた。
そこでNVIDIAは、純粋にグラフィック用として利用する人にもビデオカードが行き渡るようにする為に、こうしたLHR版のような手段を講じて製品化しているワケだが、本当にこのような方法に意味があるのだろうか?
マイニング
そもそも、今現在主流のマイニングは、以前のようなGPU性能にすべて依存する形ではなくなってきている。
それの一つがSSDやHDDのストレージを使った暗号通貨であるChiaというもの。
従来のブロックチェーンでは、1つの取引情報に対してネットワークで繋がっているコンピュータ全体でその変動値を演算し、ただ一つだけの特殊な値を計算する。その特殊な値を計算する速度が早い人へマイニング報酬が与えられ、次々と演算が完了され、同一の値が記録されていくと、例えばそこに改竄データがやってきたとしても多数決で改竄データは無視され、データが保護されるという仕組みになっている。この特殊な値を計算するのに、CPUやGPUを使用するのだが、この為に大量のCPUやGPUが使われる事で品不足になり、またそれらで演算するので電力不足という社会現象が起き始めた。
これを回避する手段としてChiaが考案されたのだが、Chiaはこの演算部分をストレージで行う。
ストレージで演算? と思うかも知れないが、簡単に言うと演算ではなく、ストレージ内に超巨大な数値の羅列を記録し、その羅列の中にある記録データの位置結果を先程のハッシュ値の演算の代わりに利用するのである。この位置結果は演算で求めるのだが、そこにはCPUやGPUで必要なほどの演算能力は必要ない。あくまでも必要なのはその位置を特定することであり、位置が沢山記録できるストレージエリアを持っている事の方が重要になるのである。
複数人で数値の位置を割り出した結果をシェアするので、改竄したデータで位置を届出ても、それは間違ったデータとして扱われ、改竄できないという仕組みである。
このChiaによって、今度はCPUやGPUよりもストレージ不足に悩むことになる。
実際、秋葉原の店頭ではストレージの大量購入が横行し、結果的には購入制限を実施した程である。
つまり、世の主流は現在CPUやGPUによる演算によるブロックチェーン技術ではなく、ストレージによるブロックチェーン技術に移り変わってきたのである。
だから、NVIDIAのようなLHR版の発売に意味があるのか、甚だ疑問なのである。
制限されたGPU
マイニングで使われるCPUやGPUは、資産を生み出すものとして利用されるものなので、比較的新しく高性能なものが使われる。
つまり、より新しいCPUやGPUが登場すると、過去に使用されていたCPUやGPUは大量に中古市場に流れてくる。
この時、もしそれらが通常利用可能なCPUやGPUだと、一世代遅れたものかもしれないが、比較的高性能な中古品が市場に出回る事になる。
それはそれでリユースという観点から意味がある。逆にマイニングに特価したCPUやGPUだと、リユースできないという問題が発生する。
LHR版は、そもそもマイニングで使っても性能が出ない仕組みなワケだが、これによってマイニング利用者は使用しなくなる。つまり、グラフィック目的の人たちが最新のGPUを安定して得るという意味ではLHR版は喜ぶべき意味があるとも考えられるが、私はこれは一方で使われ方を限定した製品を売っているに過ぎないと考える。
たとえば…私が未だにRadeon VIIを利用しているのは、Fluid Motionが使えるからだが、このFluid MotionもGPGPU技術の一種と言える。
つまり、GPUの本来のグラフィックス用途以外にGPUを活用していこうというのがFluid Motionの機能であり、LHR版はこうした機能を使えなくする事を意味する。
CPUにはCPUの得意な演算が、GPUにはGPUの得意な演算があるわけで、私はPCこそそうした用途に適したハードウェアをもっと活用すべきと思っている。
ハッキリ言って、こんなに汎用的に利用できるPCに、機能制限を設けてしまうのは、実にバカげた事ではないかと思う。
LHR版は、そうした機能制限をつけた製品と言えるわけで、今後登場するかも知れない機能まで影響が出るかもしれないと考えると、私にはどうにも良い製品には見えない。
というわけで、考え方一つではあるのだが、機能制限を受けたGPUでもって入手性を上げようという意図から、NVIDIAよりLHR版のGeForce RTX 3080や3060が発売されている。
どうしても今最新のGPUが欲しいとなると、こうした機能制限版のものしか手に入らない、なんて事もあるかもしれないが、こんな制限をしなけばならないような状態が健全とはとても思えない。
おかしな時代になったものである。
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