そうか、もう5年も経過して、私はまだ未導入だったのか。
変革をもたらしたRyzen
2017年、AMDがまさに起死回生とも言える状況下で、Ryzenを投入してきた。
このRyzenの登場でIntelが圧倒的シェアを誇っていたPC業界の流れが変わった。
一番大きかったのは、メインストリームで使われるCPUが4コアが上限だったものが8コアが基準になるほど拡大した、という事である。
また、PCの性能に関しても、Ryzenの登場により加速度的に性能が向上した。これは前述のマルチコア化が加速した結果でもあるが、もしRyzenが投入されなければ、メインストリームのCPUが4コア以上になるのは、まだまだ先の話だったかもしれない。
当時、私はIntelは技術の出し惜しみをしていたのではないか、とすら思った。
PC業界の今までの常識と思える事を打ち破るのは、いつだってIntelではなく、AMDなどの他社ではなかったか、と。
Intelは確かに業界標準を作ってきた側面はあるが、それは別の言い方をすれば、Intelがコレ、と定めたものに全てのものの照準が合わされてきた、という言い方にもなる。
AMDはまさにそれを打ち破り、新たな潮流を作ったと思う。
そんなAMDが、Ryzen投入から5年に入る事を記念して特別な対談ビデオを公開した。
ビデオはAMDのChief Marketing OfficerであるJoin John Taylor氏、およびDirector of Technical Marketingを務めるRobert Hallock氏の対談となっている。
3D V-cache
対談の中で、Ryzenの今後の事もいくつか話題にしている。
今後もZenアーキテクチャを改良し続け、性能面、効率面、接続面、製造プロセス面でのリーダーシップを発揮するとしている。
近々の話で言えば、2022年前半には性能を15%引き上げる事が可能とされる「3D V-cache」を統合したプロセッサをAM4プラットフォームに導入するとしており、既存のAM4とCPUクーラーの互換性があるAM5プラットフォームを2022年内に立ち上げる予定だとする。なお、このAM5プラットフォームのコアはDDR5メモリやPCI Express5.0といった新I/Oをサポートするという。
3D V-cacheは、CPUの構造を立体化させ、CPUのコアの上にメモリの層を載せ、よりCPUとメモリの物理的距離を近くして処理を高速化させるものである。当初はメモリ以外のものも検討されたようだが、最終的にはメモリ層を重ねるという事になったようである。ちなみにこれと似たようなアプローチはIntelも行っている。
3D V-cacheは2021年末くらいに投入されるか? という噂も出ていたのだが、どうやら来年になるようである。
気になる機械学習
私自身、現時点のx86コアはApple Siliconには勝てそうもないような気がしてならない。理由は単純で、Apple Siliconには機械学習用のNeural Engineコアを16コア搭載しているからだ。
実際、MacではApple Silicon搭載機とIntelコア搭載機で、使える機能と使えない機能が存在しはじめてきている。これは純粋にNeural Engineで処理する機能がIntelコアのMacで使えないという事であり、このNeural Engineのような機械学習用コアを持っている事が、今後の性能の一つの指標になるのではないかと思っている。
Intelもこの事は理解していて、機械学習用コアの搭載を検討しているとかしていないとか…。ならAMDは? という事になるわけだが、とりあえずはCPUに搭載するかどうかはわからないものの、機械学習を駆使してビデオ会議などのノイズ低減などの固定機能のアクセラレータの開発などを実施する事は間違いなさそうである。この開発が進めば、それをプロセッサに搭載する事そのものは、今までのAMDの技術力なら問題なく可能だろう。
また、AMDはIntelと比較して電力まわりの技術が遅れていると感じる事が多い。それに関しても、ノートPCの電力効率を最大化する電源ステート、複数の電源管理プロファイルを搭載したファームウェアなどの開発に取り組むようである。
新製品としてコレ、という内容の発表ではないが、AMDがインテルの牙城を崩した事で、消費者側が多大な恩恵を受けた例は今までにもいつくかある。
今でこそCPUが64bitに対応しているのは当たり前の時代になったが、これもAMDが率先してメインストリームに下ろしたものである。
時代の変革者であるAMDを追い落とす為、現在Intelは大きな変革を起こしているという。そうした2社の競争が新たな技術の発展へと繋がっていく。いや、今の時代はx86の世界だけでなく、ARMにもライバルがいると考えるべきだろう。
そうしたライバルと競争していく事こそ、より高い技術への昇華に繋がっていくと言える。
今後のAMDに大いに期待したい。