以前から話題となっていた日本通信のSIMロックフリー版iPhone用microSIM提供がいよいよ形となって発表された。商品名は「talking b-microSIM プラチナサービス」で、SIMロックフリー版iPhoneに挿して利用する。
その特徴は、通信帯域が800MHz帯及び2GHz帯に対応している事と、iPhone4を通信モデムとして利用してパソコンなどで通信できる“テザリング(最大300kbps超)”もサポートする事。正直、このテザリングは羨ましいと言える。ソフトバンク端末のiPhone4では未対応なのである。
通信速度は目安を含め非公表ではあるが、アプリ毎に最適な通信速度が割り当てられているとの事で、300kbps~2Mbps程度をアプリによって切り替えるのではないかと思われる。もっとも、2Mbpsというデータは単に動画や地図サービスなど帯域速度が必要なアプリのテストの段階で行われた数値であるため、実際にその程度の速度が出ているかは分からない。
一応、FOMAの規格では下り最大7.2Mbps、上り最大384Kbps、それに加え一部のエリア(東京23区内の主要駅周辺等)では上り最大5.7Mbpsの通信速度をサポートする。が、もちろんこのフルスペックの帯域が利用出来るとは考えにくい。
また、パケット通信量が過度に多いユーザーに対しては、一定の通信量で帯域制限を実施する。どれくらいのパケットで制限に入るのかは分からないが、従来ではdocomoが300万パケット、ソフトバンクが1000万パケットで制限となる事から、この両者の間になるのではないかと予測する。というのは、docomoの回線を利用するので、多くても500万パケットくらいで制限となるのではないかという、私の勝手な予測である。
それと気になる料金だが、定額データ通信サービスとして月額5,280円、通話サービスの基本料金が月額980円(1,050円分の無料通信分含む)かかり、それらのセットで月額6,260円となる。なお通話料は30秒毎に21円である。ソフトバンクのホワイトプラン(i)のような2年縛りは存在しないが、かわりに割引サービスもない。
この6,260円という価格をどう見るかで、ソフトバンクを利用するか日本通信を利用するかの分かれ目となる。
個人的に最初はソフトバンクを契約したのは早計だったか…と思ったのだが、この料金を見て自分的にはソフトバンクでいいや、と考えている。
私の場合、自宅で使用する時はWi-Fiで通信できるし、外で使用するとしても都会に出た時がメインとなる事から、実使用で困るのは会社にいるときぐらい。それで価格が上限4,410円だとすれば、どういう使い方をしても毎月6,260円だとしたら、私はソフトバンクを選ぶだろう。やはり毎月1,850円の差は大きい。
それに、今回の発表では通信料は公開されたが、SIMロックフリー版iPhone4の価格は不明だ。おそらくSIMロックフリー版のiPhone4はソフトバンクのiPhone4より高額設定になっているハズだ。これも私の予測でしかないが7万円とか8万円ぐらいではないかと思われる。
通信料と本体価格の合算で考えなければならない事であり、毎月の予算と戦わなければならない人からすれば、絶対的な答えは決まらないだろう。まぁ、ソフトバンクは毎月が安い代わりにエリアが狭い事と2年縛りという制約がある訳だが、iPhoneほどの端末なら2年くらい使用するのは当たり前の事と私は見ているため、単月価格が気になるという前提は崩れないだろう。
ただ、2年縛りがないというのは通信会社やプランをいろいろ変更できるという事でもあり、SIMロックフリー版の本体さえあれば、microSIMの交換はいつでも出来るというメリットがあるのも事実。フレキシブルに契約を変えていきたいという場合には日本通信の方がメリットがあるかもしれない。
またデータ通信のみで利用するための商品も存在する。
商品名は「b-microSIM U300」で、1カ月版が2,980円、6カ月版が1万4,900円、1年版が2万9,800円となっているが、こちらはアプリによって通信速度が変わるというサービスがないため、個人で使用するならプラチナサービスの方が良いのではないかと思われる。
今回、この日本通信のサービスの最大のポイントは、まさしくdocomo回線を利用できるところにある。
docomoは日本という限定的なエリアで、3G回線網だけで7兆円の投資をしている存在だ。日本という限定的なエリアで7兆円規模の設備となれば、かなり広範囲をカバーできる。まして今回のmicroSIMでは800MHz帯での通信が可能であるから、日本国内であれば繋がらない所はないぐらいのエリアをカバーする事になる。
この通信エリアの広さを第一のメリットと謳うのは日本通信としては当然の事とは思うが、あとは料金次第である。
といっても6,260円という価格は実のところ決して高い金額ではない。
docomoの現時点でのスマートフォン使用時では、定額通信だと1万1,000円を超える価格になる。それから比べれば半額強の価格であるから、それと比較すれば一目瞭然である。
住んでいるエリアと使い方、これらの情報を総合的に考えて、日本通信を採るか、それともソフトバンクを採るかを各個人が判断すべきだ。
それと最後に、今回の日本通信のmicroSIMの件で一つだけ分からない事がある。
それがWi-Fi接続である。
ソフトバンクは“ソフトバンクWi-Fiスポット(i)”というサービスで無線LANが各所で利用できるし、docomoは公衆無線LANサービスが存在するが、このdocomoの公衆無線LANを日本通信のサービスで利用できるのかどうか、というのが分からない。
あくまでもサービス元が日本通信であるから、docomoの公衆無線LANサービスとは別のサービス体系になるのではないかと思われる。だとすると、日本通信の無線LANではどこまで利用できるのか…そこが問題である。
アプリによってではあるが、最大2Mbps通信ができる3G回線であれば、Wi-Fiは不要…という言い方もできるが、この辺りがどうなるかでも考え方は変わるだろう。
日本通信でSIMロックフリー版を、と考えている人は、そういったいろんな部分を総合的に考えて選んだ方がいいだろう。
その上でソフトバンクの方が良い…という答えも当然出てくるだろうし、まさしくそこは考え方一つである。