利権にまみれたコーデックの世界。
AV1
Alliance for Open Media(AOMedia)が、3月28日に「AOMedia Video Codec(AV1)」のバージョン1.0の仕様の一般公開を開始した。
今回一般公開されたコーデックの仕様は、ビットストリームの仕様と最適化前の実験亭ソフトウェアデコーダとエンコーダ、製品検証の為のリファレンスストリームなどである。
AOMediaの名をあまり知らない人も多いかと思うが、AOMediaとは、Amazon、Cisco、Facebook、Google、Intel、NVIDIA、Mozilla、Netflix、Microsoftらが参画する業界団体で、インターネットでのビデオストリームを想定した動画コーデックを開発している団体である。
これら企業の他にも、AdobeやAMD、Broadcom、Hulu、ソシオネクスト、VideoLAN、Xilinxなども参加していて、主としてはコンテンツ提供企業を中心とした団体がAOMediaである。
4K UHD以上の解像度を想定したビデオコーデックとして有名なところでは、H.265/HEVCがあるが、このコーデックを利用しようとすると特許使用料(ロイヤリティ)を支払う必要がある。コンテンツを大量に配信する企業としては、このロイヤリティの額は無視できない負担となるため、このロイヤリティに関して懸念する声が上がっていた。
H.265/HEVCの特許を持つHEVC Advanceが、先日ストリーミング配信に関してはロイヤリティを請求しない事を表明したが、、HEVCは複数の特許プールや企業にロイヤリティを支払う必要がある為、ロイヤリティを請求しないと表明していても根本的な解決にはなっていなかった背景がある。ま、新しい技術を生み出すにも当然ながら研究費がかかるわけで、そこでロイヤリティ商売をする事そのものは当たり前な感じもするが、コーデックを世の中に普及させていくには、このロイヤリティという負担をどこまで軽減できるか、あるいはフリー化していく事ができるかが一つの大きな要素になる。
そういう意味で、AOMediaのAV1はロイヤリティフリーを掲げている事から、今後の4Kメディアや関連デバイス普及という意味で注目されている。
削減されるビットレート
AV1は、GoogleのVP10、MozillaのDaala、CiscoのThorといったコーデック開発で得られた知識が盛り込まれており、現状ではVP9と比較して22~27%、HEVCと比較して30~43%ほど、ビットレートが削減できるらしい。
これは単純にコンテンツに消費するデータ量の削減に直結する問題で、同じだけの品質を保ったままデータ消費量が削減できるなら、ビットレートを消費しないコーデックを使う方が有利になる。
また、今後はHDRといった従来よりも色彩に優れた映像を扱っていく必要があり、HEVCにはiOSやAndroid、Windows10での対応が発表された「HEIF」があるわけだが、AV1にもHDR等をサポートしたファイル型式「AV1 Still Image File Format (AVIF)」が提案されていて、今後競合技術として登場する可能性もあるという。
総合的に見て、ビットレートを削減しつつ、HDR対応等が行われていけば、AV1はHEVCと並び強力なライバルとして君臨するようになるのではないかと思う。
動画編集などをしている人はもちろん、動画を楽しんでいる人であれば、何れは恩恵を受ける可能性のあるコーデックである。
今後の普及に期待したいところである。