あの時のもう一台がようやく姿を現した。
PasocomMini
ハル研究所が「PasocomMini」という1978年移行に大ヒットしたマイコンを約1/4サイズで再現した手乗りコンピュータのシリーズを発表したのは2017年5月の事。
第一弾は「PasocomMini MZ-80C」とシャープ製品だったワケだが、中身にはRaspberry Piが内蔵され、SmileBasicが動作するという、動くミニチュアだった。
だが、この発表の時には、第二弾、第三弾の予定があると言われていて、モックアップとして「PC-8001」も姿を見せていた。
あれから2年以上の時が経ち、その存在すら忘れかけていた段階で、NECパーソナルコンピュータ株式会社がPC-8001生誕40周年の話が持ち上がり、何か特別な記念製品を出すというようなコメントが出された。
このコメントが出された時すら、私はすっかり「PasocomMini PC-8001」の存在を忘れてしまっていたわけだが、本日、この「PasocomMini PC-8001」がNECハーソナルコンピュータから記念品としてついに発表された。現在、PC-8001は2016年度の重要科学技術史資料の第00205号として登録されており、日本産業史のマイルストーンとなったりしているわけだが、このPC-8001の存在は今までは企業が持つのが通常だったコンピュータを家庭で所有するという「パーソナルコンピュータ」と日本で位置付けた最初の個体だと言える。実際にはシャープのMZシリーズなど先行していた機種があるのだが、その普及率はPC-8001がダントツに高く、従来PC全体が年間11万台が通常だった販売台数がPC-8001は累計出荷で25万台を販売するという偉業を達成した機種である。
「PasocomMini PC-8001」はそんなデファクトスタンダードを目指したPCをRaspberry Pi Zeroを使ってハードウェア的なエミュレーションで動作させているミニチュアPCである。
限りなく実機に近づけて
起動するBASICプログラムはSmileBasicではなく、当時のままN-BASICが走り、さらにユーザー定期キャラクタージェネレータ機能を持つ拡張ユニット「PCG」というハル研究所が開発・販売していたユニットの機能を搭載しているという。
当時、価格が高くてPCGを買えなかったという人も多かったと思うが、そんな夢ユニットを完全エミュレートして搭載しているというのである。これだけでも欲しい、という人は多いのではないかと思う。
また、当時はカセットテープでデータを保存したり市販ソフトもカセットテープで供給されていたワケだが、その当時のカセットテープに収められていたデータをWAVデータとして持っている場合、それをコンパートしてCMTファイルとする事でN-BASIC上で再生する事ができる機能もあるとの事。しかもそのコンバートプログラムも付いてくるというから至れり尽くせりである。…まぁ、当時のカセットテープをどれだけの人が持っているのかは疑問が残るところではあるが。
今回の「PasocomMini PC-8001」は以前の「PasocomMini MZ-80C」とは異なり、ほぼ実機のままのROMイメージをそのまま搭載しているという事で、その上で搭載されているN-BASICはまさに素のままのN-BASICが搭載されているという。
エミュレータでの動作なので、おかしな挙動があれば何に原因があるかを一つずつ紐解いて確認する…という事を延々と繰り返して、今回の「PasocomMini PC-8001」は作られている。実に気の遠くなるような話である。
LAVIE Pro Mobile
今回の「PasocomMini PC-8001」はLAVIE Pro Mobile PM750/NAAという、PC-8001生誕40周年記念モデルの付属品として扱われる。この特別版はNEC Directの直販で500台限定として販売されるもので、ゴールドのシリアルナンバー、プレミアムBOX、安心保証サービスパック5年、そして「PasocomMini PC-8001」が附属したものとなる。販売価格は201,800円からとなっており、この話だけだと「PasocomMini PC-8001」の入手はかなりハードルが高い事になってしまう。
しかし「PasocomMini PC-8001」は、NEC製PCの購入と応募で2,000名に当たるキャンペーンを実施する。このキャンペーンは、既に始まっていて2019年11月4日まで開催される。
対象となる購入製品はNEC製LAVIEシリーズのノートPCとなっているので、キャンペーンに応募するだけなら価格はどんな価格のものでも良い事になる。
それでも500名+2,000名の狭き門を潜り抜けないと「PasocomMini PC-8001」は今の所入手する事ができない。
実に残念な話だが、開発元のハル研究所によると、NECの記念品としての提供状況の反応で単体販売を検討したい、との事であった。NECの許可が下りると良いのだが…。
次なる製品は?
PasocomMiniシリーズの次なる製品は現段階で未定、と開発元のハル研究所は言っている。
だが、最初にPasocomMiniシリーズをリリースする時にはFM-7の名も上がっていた。
FM-7は富士通の名機であるが、次のターゲットはFM-7か気になる所である。
ただ、2021年にはPC-6001、PC-8801が40周年を迎え、2022年にはPC-9801が40周年を迎える。1980年代はパソコン黎明期で名機がとても多い。ミニという復刻版を期待する声が多く出てくる今の時代、果たしてどこまでこのシリーズが製品化してくれるのか、期待している人も多いのではないかと思う。
ただ…当のハル研究所ではこのプロジェクトで動けるスタッフは限られているようなので、果たしてどこまで実現可能なのか?
個人的には…やっぱりX68000の復刻版が見てみたい…そう思うのはきっと私だけではないだろう。
果たして実現できるものなのだろうか?