突然こんな話をしたのは、10月8日に劇場版THE IDOLM@STERのBD/DVDが発売されるから。
THE IDOLM@STERファンである私からすると購入する事は当然として、気になるのが特典というものである。
特典いろいろ
そもそも特典というのは、商品の付加価値を向上させるものである。
私が前々職だった頃から、この特典というのは非常に大きい存在で、特典の要素によって売上がガラリと変わる事すらある。
特にアキバ系のものには特典の存在が当たり前になっている所もあり、最初は商品そのものに発売元が特典を付けるケースだったものが、今では販売する店舗毎に別の特典を付ける事も極々当たり前の話になっていった。
だから、商品のパッケージの中に特典が入っているケースなんてものはもう当たり前の話であり、そういう特典に関してアレコレいうつもりはない。そもそも、その特典が商品価格の中にふくまれているからだ。
問題なのは、各店舗が独自に付ける、いわゆる店舗特典というものだ。
この店舗特典は、いろいろな要素が絡み合って生まれるものである。
店舗特典というのは、そもそも誰が作るのか?
制作するのはもちろん各店舗であるため、答えはもちろん各店舗という事になるのだが、そのお金の出所は実は結構微妙だったりする。
正式にお金の流れを見るならば、その出所も各店舗という事になるが、その制作予算を決定づけるのは、卸値と売価の差額から生まれる。
ここで重要なのは卸値である。
メーカー希望小売価格の何%が卸値になるかで、掛けられる特典制作予算が変わるのだ。つまり、本来であるなら利益になる売価と卸値の差額から、特典費用が出てくるのである。
だから、販売数が多い店舗であれば、その分卸値を下げる事が出来る為、特典制作予算を多く掛けられる。よくよく考えてみれば、他業界でもこんな事は当たり前の図式である。
ただ、ゲーム・アニメ系の場合は、独特の問題がそれに上積みされるのだ。
それが、特典に使用する素材である。
特典に使用される素材は、強い店舗ほど優先的に選択できる。場合によっては、特典に使用するイラストを指定・指示する事も許される場合もあり、そのあたりは発売元と販売店舗との関係で決まってくる。
だから、販売本数を稼ぐことができる強い店舗ほど、予算的に余裕があり、素材も良いものが選べるという事になるわけだ。
アイディア勝負
では、そうした販売本数を稼ぐ事ができない店舗は、永遠に強い店舗に勝てないのか?
実はここに勝負所がある。
まるで予算を掛けられないテレビ東京が奇抜なアイディアで視聴率を稼ぎ他局を出し抜くように、特典とするアイテムに工夫を凝らし、与えられるイラストを超えるものを提示した時、弱い店舗はそこに光明を見出す事ができるわけである。
どの世界でもそうだが、こういうのはアイディア勝負なのである。
実際、特典というのは販売物ではないため、版権処理は発売元許可の上で製造する以上不要であり、予算が許す限りで特典を制作する事ができる。もちろん、発売元が許可しないようなイラストの使い方をしたりする事は御法度だが、そもそも売りたいと思っている店舗側が発売元が許可しないようなイラストの使い方はまずしない。
強い店舗とそうでない店舗の差は、昔から歴然とした差がある事は今も昔も変わらないが、いろいろな努力の上で、各店舗が自分達の利益の中から店舗特典を作っているという事実は知っておいても良いかも知れない。
圧倒的に強い存在の登場
ところが…こうした各店舗の強弱で変わってくる要素に、絶対的に強い存在が現れ始めたのが最近の話である。
絶大な販売数を誇る店舗であっても、絶対に勝てない存在。
それがメーカー直販の通信販売部門である。
何と言っても発売元が販売するわけだから、得られる素材は最高級。しかも卸値を多少割り込んでも、原価さえ下回らなければ確実に利益が出るという売価との差額は、付けられる特典に絶対的な優位性をもたらす。
その為、最近はどの店舗でも今まで以上の販売努力が不可欠だったりする。発売日に関係者を呼んでイベントをやってみたりしているのは、そういう事情である。
今の所、極端なまでのバランスブレーカーになっていないとは思うが、この先は正直わからない。
ここ数年で、販売というプロセスそのものに激変があったため、この先このバランスが安定するのか、それともさらに激変するのかは誰にも予測ができないと言える。
物質的か? 論理的か?
そしてこの激変する状況を後押ししているのが、販売物が物理的なものなのか、それとも論理的なものなのか、という事である。
特にゲームに多いのだが、オンラインで販売してデータの永久使用権利を売買するという方式のものである。
永久といっても、そのプラットフォームが生きている間、という事に限定してしまうのだが、そもそもそれは物理的な製品であってもあまり大きな変化がない。
ただし、物理的なメディアで製品を持っている事と持っていない事の差は、取扱や二次流通に大きな影響を与える。
メーカー側がオンライン販売を促進したい最大の理由は、中古販売がなくなるからと言える。
中古販売はメーカーにとっては死活問題にも発展する問題で、これがなくなる事で売上がどれだけ確保できるか分からない。
しかし、消費者側は売却できるというメリットを失う為、オンライン販売を避け、物理的なメディアでの製品に魅力を見出す。
ここに、発売元と消費者との間にメリットとデメリットの駆け引きが存在する。
メーカー側としてはオンラインで販売したい思惑があるため、ダウンロードデータでゲームをプレイする際にいろいろなメリットを与える。いや、逆を言えば、物理メディアでゲームをプレイする人にある種の制約を与える。例えば、ゲームをプレイする際には確実にメディアをローディングしないとゲームプレイが始まらないようにしていたりする。これはダウンロード販売のデータでは絶対にあり得ないデメリットであり、このデメリットを嫌うが為にゲームはオンラインで購入する事にした、という人も少なくない。
また、オンラインでゲームデータを購入した人は、プラットフォームが刷新されて異なった場合でも、その新しいプラットフォーム上でストリーミングによるプレイが可能になったりするサービスが、もうすぐ可能になる。これも物理メディアでは不可能な事だ。
そして今この問題はゲームメディアで起きている問題ではあるが、おそらくそう遠くない内に映像や音楽の市場にも影響してくる事になる。既に一部進められている部分もあるため、間違いなく発生する問題である。
結局…
まぁ、この物理的 or 論理的な話は余談でしかない。これは物流というものの扱いと考え方によって今まで形成されてきた市場そのものが変化していく問題であって、それ以上でもそれ以下でもない。
なので、今はあくまでも店舗特典の話に戻るのだが、前述したように私も劇場版THE IDOLM@STERのBDを買おうと思っているのだが、正直どこで買えばいいのか迷ってしまっているところがある。
今の私は特典物にあまり興味がない…といいつつも、ちょっと魅力的な特典が付くとわかると、心が揺れるのである。
特にメーカー直販が魅力的で、複製とは言え原画が用意されるとなると、かなり迷う。
また、特定の店舗で今まであまり見なかった特典(私が見なかっただけで存在がなかったわけではない)があったりして、実に迷うのである。
また、店舗特典がない場合は、店舗特典が付いているモノより3,000円ほど安く買えるという魅力もある(Amazon.co.jpでは特典付きとナシがある)。
メーカーがつけている同梱特典は商品の中にあるものなので、ソコには差がないワケだが、まず店舗特典を考えるか考えないか、もし考えるならドコが良いのか?
10月8日という発売日から考えると、そろそろソレに答えを出さねばならない時期になった。
はてさて、どうしたものかいな…。