RYZENはあくまでもKaby Lake対抗コアなのか?。
総合能力が見えてきた
ラスベガスで開催されているCES 2017で、AMDのRYZENとVegaの動作デモンストレーションが行われ、その能力の一旦が垣間見えた。
総じて悪い感じはしないのだが、細かい部分を見ていくと当初言われていた事からちょっとずつではあるが変化がある事に気がつき始める。
もともと、Summit Ridgeと呼ばれる存在だったRYZENだが、当初はXeonを視野に入れるコアと言われていたと思う(というか私はそう思っていた)。というのは、Core i7でもLGA2011ソケットに対応するCPUが存在していて、そちらはサーバ用途とは違うハイエンドコンシューマを視野に入れた製品であり、Xeonクラスの性能でありながらハイエンドを支える製品群として確実にその地位を確立していたからである。
RYZENがCore i7の対抗馬として登場する以上、このハイエンド製品群も当然だがそのターゲットに入っているだろう、と私は思っていたのだが、その考えはどうも正しくないようである。
というのは、CES 2017でもたらされた新しい情報によると、どうもこのLGA2011に対応するCore i7とは太刀打ちできるとは言えないような性能しか見えてこないのである。
いや、正しい言葉を使うならば、CPU性能としては対抗できる性能はあるかもしれないが、PCの総合的能力では太刀打ちできない可能性がある。
つまり、コアとしてRYZENは十二分な性能を持っていても、チップセットであるX370はあくまでもZ270に対抗できるだけで、X99と対抗できる製品ではない、という事である。
X370はZ270と同等
いろいろ漏れ聞こえてくる情報を整理すると、X370およびRYZENがもたらすインターフェースは大体以下になる。
・Dual-channel DDR4メモリに対応する。
・M.2 SATA SSD及びNVMeに対応している。
・RYZENからPCI-Expresss 3.0が16レーン、X370からPCI-Express 2.0が8レーン用意される。
・RYZENからのPCI-ExpressレーンはCrossFire(3-way)とSLI(2-way)に対応する。
・USB 3.1 Gen 1は合計10ポート(内4ポートがRYZEN、6ポートがX370から)供給される。
・USB 3.1 Gen 2は2ポート、USB 2.0は6ポート供給される。
・SATA 6.0Gbpsは合計6ポート(内2ポートがRYZEN、4ポートがX370から)供給される。
こうして見ると、概ねKaby LakeとZ270がもたらす機能と合致する。
PCI-Expressに関して言えば、ほぼ同等かZ270が多少上回るか、という状態である(Z270はPCI-Express3.0を供給しているため)。
X370は最大40レーンのPCI-Expressを供給するX99シリーズと比べるまでもなく、ハイエンドコンシューマ用としか言いようがないレベルである。
唯一AMDのチップセットがIntelを確実に上回るとすれば、そもそもRYZENは全てのラインナップで倍率フリー仕様になっているため、既に登場しているチップセットであるA320以外のこれから出てくるチップセット(X370およびX300、B350)は、すべてオーバークロックに対応するという事である。Intel製チップセットはZ系つまり最上位のZ270のみがオーバークロックに対応するという事で、この部分はIntelに一歩優位に立てるポイントではある。
また、IntelはKaby LakeでUSB 3.1 Gen 2を有効化させたが、Z270では非対応となっていて社外製のコントローラーが必要だという。
しかしX370では2ポートとはいえ、標準でインターフェースを載せてきているようである(未確認だが)。もしそうであれば、この点においてはAMDがIntelを出し抜いている事になる。
だが、総じてZ270とZ370にはこの程度の違いしかないのである。
性能差というべきほどの差がないこの事実を考えると、やはりRYZEN&Z370はKaby Lake&Z270と同等と言うべきだろう。
どちらを選ぶべき?
こうした情報からいろいろ考えて見ると、現時点で私はRYZENに期待するところ大ではあるものの、普通に考えればRYZENを選択する意味はあまりないかもしれない。
もし、私がPCI-Expressのレーン数を最重要視するなら、この時点で選択肢はX99チップセットを中心としたPCを選ばざるを得ない。
もし私がPCI-Expressのレーン数は24で問題なしと考え、それ以外の性能で選んだとしたら…最終的にはIPCの高いCPUを選択する方が完全に目的と合致する事になる。
その際、並列性をどこまで重要視するかで、最終判断が下される事になる。
ゲーム中心なら間違いなくKaby Lake&Z270になるだろうし、エンコードなどCPU占有率の高い処理を複数行うというのであれば、8コア16スレッド(最低6コア12スレッド以上)のRYZEN&X370になるだろう。但し、その時の両者の価格が拮抗すれば、である。
Intel系は価格的にAMDには必ず負けると言われている。AMDはその価格に勝機を見出しているところがある。
だから、もし8コア16スレッドのRYZENが価格的にKaby Lakeの7700kと同額であり、用途としてエンコードなどCPU占有率の高い処理を複数行う場合は、迷う事なくAMDに突貫すべきである。
しかし、もしこの条件以外であるならば、安定のIntelを選択する方が最終的には良い選択だという事になる。
このような記事をもう半年以上も時々書いているのだが、結局はいつも同じ結論になってしまう。
Zenアーキテクチャで一気に進化したように思えるAMDであっても、結局は先端を突き進んでいるIntelにようやく追いついた、というレベルでしかなく、またフロムスクラッチによって完全な新アーキテクチャを実現したといっても、継ぎ足し性能向上のIntelコアと大きな差は付けられないという事実がここにある。
結局、最終的な結論は費用対効果、つまりコストパフォーマンスの高い製品に行き着く。
ある意味、それが極論であり、それ以上でもそれ以下でもないという現実が全てなのかもしれない。