ASIMO以外のHONDAロボット。
コッチが本命か?
HONDAのロボットと言えばASIMOが有名だが、ASIMOは人とのコミュニケーションを中心とした用途が多く紹介され、また歩いたり走ったりするデモンストレーションが多いのが特徴で、ASIMOを災害地に派遣してどうにかしようとかいうスタイルは、ちょっと想像が付かない。
しかし、東日本大震災の福島第二原発事故があってから、ロボットは災害時に運用できるものが数多く開発され、また実際に投入され、上手くいったりいかなかったりというのを繰り返している。
ロボットを作っているHONDAからすれば、ASIMOと同等に動けるものを災害地でも使えれば一番良いのだろうが、少なくとも二足歩行ロボットで不整地を歩かせるというのはまだまだ技術的には難しく、また施設内を自由に移動させるには、階段という手段以外にも昇降する為の設備が使えないといけない。
そういう理由なのかは分からないが、HONDAはASIMO以外にもそうした災害対応可能なロボットの研究をしていた。
それが「E2-DR」である。
動画を観ればわかるが、コイツははしごの昇降ができるロボットで、また不整地を四つ足で移動する事が可能なロボットである。
悪条件を考慮
このE2-DRが発表されたのは、カナダのバンクーバーで9月に開催されたロボット産業展示会「IROS 2017」で、まだプロトタイプだという。
リチウムイオン電池を電源としていて、90分の稼働が可能。はしごの昇降、階段の昇降、時速4kmでの二足歩行、瓦礫の上での四足歩行、構造物の隙間を横ばいでの移動、水平方向のプレッシャー(圧力)への耐性、他にも2m径のパイプへの進入、20分程度であれば雨天時での稼働が可能だという。これだけ対応できれば、かなりの災害時対応稼働が可能と言える。
また上半身は180度まで回転が可能なのだが、こうした動作か可能になっているのは、内部デバイスへの通信ケーブルに光ファイバケーブルを採用したからであり、このケーブルは100万回のねじり試験をクリアしているという。
頭部には2基のレーザーレンジファインダーやLEDフラッシュを持つ単眼カメラを装備し、両手にもカメラと3Dセンサーを搭載しているという。
また過酷な条件下で稼働できるよう、摂氏-10~+40度の環境で活動可能で、間接部分は凹凸の隙間を多重に配置したラビリンス構造を取り、汚染物質などはクラリスで排除できるようになっている。
手はASIMOのように人間の手に模したものというわけではなく、簡易的にモノを掴むだけの機能に止めていて、現時点では不明だが今後いろんなアタッチメントが用意される可能性がある。
耐衝撃性という意味ではまだ明確なものはないようだが、転倒しても自力で起き上がる事はできるとしたものの、現時点ではまだプロトタイプであり、今後実用化に向けていろんな改修が行われるだろうと思われる。
ASIMOとは別路線だが
ASIMOは鉄腕アトムを実現したいという想いから開発が始められたロボットだが、このE2-DRはおそらく東日本大震災の教訓から開発が進められているものだと思われる。
人が活動できない・活動しにくい場所での運用を想定し、そこで活躍できる事を求められたロボットは、ある意味ASIMOよりも現実的であり、人の生活のもっとも弱い部分に投入される事を想定されたロボットである。
そういう意味では、こちらのE2-DRの方が開発を急ぐべきとも思えるが、HONDAはいろんな側面を想定した開発をしている。
ASIMOは人の通常生活をサポートする事を想定しているし、転倒しないバイクは二輪という移動手段において危険を少しでも回避できる事を想定したもので、それらが一概に人の生活に不要とは言えない。
あらゆる事を想定して開発される製品は、それぞれにコンセプトがあるし、そのコンセプトに沿った開発で、HONDAはいつも人々を驚かせている。
こうした開発がちゃんと行われている企業が日本にある、という事だけでも、私は日本企業は素晴らしいなと思うワケである。
…ま、資金がなければできない事ではあるのだが、企業理念としてこうしたチャレンジを続けられる企業が開発を続けられる環境がこれからも続けばいいな、と、今の日本の政治を見ながら思うワケである。
民間企業が優秀でなかったら、今の日本政府ってホントにどうしようもないのではないだろうか?
それでも世界的にマシな政府と言われている事実が悲しくて堪らんな…(-_-;)