PS3の廉価版が発表になった。
40GBのHDDを搭載したかわりにメモリーカードスロットを廃し、SACDプレーヤー機能を排除、USBポートを4から2へと減らし、PS2互換機能をも廃止した戦略モデルだ。
PS2互換機能を排除という、上位互換を伝統的に踏んできたPSシリーズの中では異端児的ハードだが、時勢を考えるとこれぐらい思い切ったモデルが登場するのが遅すぎたぐらいだ。
廉価させるために排除したものも多いが、おそらくこの価格に踏み切った背景には半導体の歩留まりが向上したというのも一因だと思える。
PS3発売当初の65nmプロセスで製造されるCell Broadband Engine(以下Cellと略)は、そのサブユニットであるSPEが8基使えないものが多数でる事を想定し、PS3にはSPEが7基生きているものを採用するとしていた。
おそらく当初は7基生きているCellを得るのにも苦労しただろうが、今では普通に7基生きているCellをウェハから取れるようになっているに違いない。
そういう歩留まりの向上は、生産性に大きく寄与するため、コストダウンでは必須の条件だろうし、実際廉価機を作る上で重要なポイントとなったに違いない。
この廉価機の登場によってその存在を脅かされるハードは一つしかない。
任天堂のフラッグシップマシン“Wii”である。
Wiiは基本的に先代のGameCubeと同じハードウェアスペックでしかない。
ただ、リモコンによる体感操作が可能になっているという点とネットワーク機能が搭載されているだけで、ビデオ性能を含めたハードウェアスペックはほとんど進化していない。
だからWiiは廉価機が登場する可能性がかなり低い。価格改定はあるかもしれないが、ハードウェアを廉価させる必要がない…というか、廉価させる意味がない。
Xbox360は、まだ廉価させる意味がある。
ハードウェア的にPS3に渡り合える部分もあるし、統合化の意味がある半導体もある。つまり、PS3と同じく近未来への可能性を持ったまま価格を下げられる要素を持っている事になる。
Wiiは…残念ながらハードウェアスペックのさらなる向上を狙った可能性はない。
それはWiiが発売された当初から予測されていた事である。
だからサービスで勝負するしかない。
ところがネットワークビジネスサービスはPS3の方が一つ上を行っている。
もともとPS2の頃から想定していたサービスをPS3が加速させた結果だ。
だから廉価機は物理的なデバイスの削除を可能とし、不足した分はネットワークから供給しようという方向で攻めてきた。
WiiはこのPS3の展開に太刀打ちできるのか…かなり微妙なラインに立たされているように思う。
そしてもう一つ廉価PS3の利点がある。
それはBlu-ray Disk再生機としての側面である。
Xbox360はHD DVD再生機としての側面があるが、Wiiにはない。
WiiもDVD再生機能を搭載したモデルが出るという話はあったが、それから音沙汰がない。
さらに廉価PS3はHDMI出力を装備し、DVDプレーヤーの1080pアップスケーリング出力にも対応している。
つまりDVD再生の部分においてもWiiのさらなる上を進んでいる。
今まで不振だったPS3のまさに逆転劇が始まろうとしているのだ。
実際、この新モデルの投入でPS3がどこまで普及するかはわからない。
まだ価格的に高いという人もいるかもしれない。
だが、DVDがまだそれなりのシェアを持っている今、その先をいくBlu-ray Disk陣営がDVD陣営レベルの価格になる事はあり得ない。
それはソフトもそうだしメディアもそうだし、ハードも同じだ。
だから4万円という価格帯でのBlu-ray Diskハードは安いと言える。
PS3はそれ以外にも機能はいろいろ詰まっているのだから。
とにもかくにも、Wiiはこれからが苦戦すると言える。
ハードウェアスペックよりも枯れた技術の使い所をどう見せていくか?
PS3は自らのハードを廉価させ攻勢に出てくる。
はたして枯れた技術でどこまで戦っていけるのか?
PSP vs NDS、PS3 vs Wii、この図式の戦いはこれから激化するだろう。