その昔、sigmarionという端末があった。
NTTから発売されていたWindowsCE機だったが、その大きさは何とかプラインドタッチが出来るサイズで個人的にモバイル用途で重宝した。
ただ、このsigmarionには本体内には通信デバイスがなかったため、別途コンパクトフラッシュ型の通信デバイス、例えばWILLCOMのAIR H”のようなものが必要だった。
しかし、時代はこうしたモバイル端末には厳しい時代となり、また携帯電話が異常なまでの進化を遂げ、タッチパネルで操作するスマートフォンが出るまでに至り、気がつけばキーボード付きのモバイル端末は姿を消していた。
AppleのiPhone、iPadをはじめ、タッチパネルで操作するデバイスは手軽な面もあるが、文字入力という部分でキーボード付きに劣る事が多々ある。特に長文を打つ場合は問題で、iPadにBluetoothキーボードを接続して使う人が出る始末である。
そうなると、やはりキーボード付きモバイル端末にもその需要があるわけであり、それでも部品点数を減らしたいメーカーは、タッチパネルを2面もつデバイスを出して1面をソフトキーボードに割り当てるなんて商品を出してみたりと、いろいろ試行錯誤していた。
だが、やはり物理的にキーボードを持つ製品がほしい、と思っている人もいたのではないかと思う。タッチフィールが違う以上、使う側としてはそういうニーズに応えた製品がほしいワケである。
そこに登場したのがNECのLifeTouch NOTEである。
LifeTouch NOTEはAndroid OS搭載の端末で、FOMA通信モジュールを内蔵した3GモデルとWi-Fiのみ対応モデルの2種存在する。
Android搭載という時点で、媒体としてはノートPC側ではなく、携帯端末側に位置する製品である。
CPUはNVIDIAのTegra 250(1GHz、デュアルコア)で、タッチパネルの7型ワイド液晶を搭載する。デュアルコアだからそれなりのパフォーマンスは期待していいのではないかと思うが、前述したようにノートPC側のデバイスとは違うため、そのあたりに過剰な期待をすべきではない。ただ、従来の携帯端末と比較すればかなり軽快に動く事は間違いない。
ただ、携帯端末側のデバイスである利点として、その動作時間の長さは結構ある。ブラウザ閲覧で約9時間、ローカル保存の動画再生で約8時間、YouTube等ネットワークのストリーミング動画再生で約7時間という駆動時間の長さは大きさからすれば長いと言える。
また、3Gモデルではテザリングも可能で、Wi-Fiでしか接続できないデバイスをLifeTouch NOTE経由で3Gネットワークにつなげる事もできる。用途によってはかなり効果的なデバイスになるのではないかと思われる。
LifeTouch NOTEの最大の武器は物理キーボードの存在である。
16.8mmというキーピッチは広いとは言えないものの極端に狭いということもない。ただ、このキーピッチを確保するために排除されたキーが結構あるのも問題で、右シフトキー、コントロールキー、全角/半角キーなどがなくなってしまっている。これらのキーはFnキーとの併用で他キーを使用する。Fnキーとコントロールキー、Menuキーの3キーは機能を入れ替えられるようになっているため、使いやすいキーバインドにするのが良いだろう。
それと、かな打ちの人には致命的とも言える問題が一つあり「ろ」キーが「↑」キーのさらに右側に配置されているという仕様になっている。私自身がかな打ちという事もあり、この問題がかなり気になる。この「ろ」キーも「↑」キーと入れ替えられるようになっていればよかったのだが…やはりかな打ちは淘汰される運命にあるのだろうか?
スペースキー前に光学式のポインティングデバイスがあり、ソレを使ってマウス操作が可能だが、液晶パネルがタッチパネルであるため、ポインティングデバイスそのものの使用頻度はあまりないのではないかと思う。
ただ、このタッチパネルはマルチタッチに対応していないため、拡大縮小などタッチセンサー独特のイマドキの操作ができない。ただ、感圧式であるため、スタイラス操作ができる。このあたりは好みの問題ではないかと思うが、スマートフォンライクな操作に慣れてしまっている人にとってはちょっとマイナス要素かもしれない。
個人的な話をするならば、私には不要かな、と思えるデバイスである。
通信端末であれば、iPhone4があるし、仮にiPhone4がなかったとしてもケータイで事足りる。文字を外出先で入力したいと考えるならば、私ならポメラで十分だ。むしろポメラのスピード起動と長時間駆動の方が魅力的であり、iPhone4と組み合わせて使うのであれば、ポメラDM20であればiPhone連動アプリもあるため困る事はない。
LifeTouch NOTEが便利という人は、ポメラ型の人ではなく、ある程度のものがオールインワンで完結して欲しいと思う人ではないかと思う。そういう人たちからみれば、確かにLifeTouch NOTEは魅力的な製品に見えることだろう。