携帯電話が出始めた当初は別として、普及に拍車がかかった頃はまだPHSはそれなりの勢いがあった。
当時、PHSは携帯電話より小さく、そして軽く出来る事をウリにしていただけでなく、その通話品質の高さと高性能、省電力をもウリにしていた。
実際、当時の私はPHSにこそ明日があると思っていた。
ところがそれを大きく覆したのがdocomo(当時はDoCoMo)である。
もともと携帯電話はPHSよりも基地局カバー距離が長く、基地局が少なくても広いエリアをカバー出来る所に魅力があった。
ところが、それ故にエリアが切り替わる時に問題も多かったのだが、それを技術的に乗り越えてきたのである。しかも端末の性能もメキメキ上昇し、1つの基地局カバーエリアの狭いPHSは、そのサポートエリアの広がりが追いつかず、結局携帯電話に徐々にシェアを奪われ、最後はDDIポケット(現ウィルコム)のみが残る事となった。そのDDIポケットもWILLCOMと社名変更し、細々とその後操業していたが、2010年2月に会社更生手続を開始し、現在は一部事業を除いてソフトバンクモバイル傘下の企業になっている。
まぁ、そのあたりはWikipediaあたりで調べれば分かる話だが、私は昔からこのPHSという存在にかなり期待していたところがある。
もともと素性の良いデバイスである事は間違いのない事で、普及という所で現携帯電話勢に負けたワケだが、今回の震災でPHSは再び脚光を浴びようとしている。
というのも、震災直後に携帯電話は全滅していたにもかかわらず、skypeとPHSだけは震災当日からつながったのである。
skypeが通話できたのには理由がある。それはskypeが紛れもないIP網を活用した電話である事だ。もちろん、ネットが寸断されればskypeも使えなくなるのだが、IP網は広い部分で生きていた事が幸いし、携帯電話よりも通話できるデバイスになった。
そしてPHSだが…これも通信方式が携帯と全く異なっていた事で広いエリアで通話が出来たのである。
この通信方式の違いだが、実は当初PHSが普及する事に弊害となった基地局の数が、通信できた理由だったのである。
携帯電話は一つの基地局で広いエリアをカバーするだけでなく、多数の携帯端末をもカバーする。この事で、一つの基地局に負荷が一斉にかかり、システムダウンを起こさないよう、通信会社が通話規制をかけた。
ところが、PHSはもともと基地局のカバーエリアが狭い事から、多数の基地局を必要としている関係で、負荷が一つの基地局に集中せず、多数の基地局に分散したのである。
しかも、PHSは一つの基地局が停電等でダウンした際には他基地局がそれをカバーする仕組みとなっているため、自家発電施設のあるような建物の屋上に基地局を置くことができれば、それがエリアをカバーする事になるのである。
ある意味、昔デメリットだった事が、負荷分散というメリットを見せたわけである。
今でこそ、普及もままならないPHSだが、PHSには他にもいろいろな使い方がある。
外にいるときはPHSとして使用し、屋内にいるときには内線電話として使用する事も出来たりと、使える幅はかなり広い。
ただ、今の携帯電話並の高性能機にするには、ちょっとユーザー数が少なすぎる感が否めないが、災害に強い端末として再起を図る事もできるのではないかと思ったりする。
ただ、そのままのPHSでは既に時代には対応していけない部分もある。
WILLCOMは次世代PHSとしての活動もしていたが、それらは新しくソフトバンクグループとアドバンテッジパートナーズによって受け皿会社として新設されたWireless City Planning(WCP)という会社によって引き継がれた。
この引き継がれた新時代のPHSが、脚光を浴びる日がいつか来る…そんな気がしてならない。
集中させる事でコストを抑えるという携帯電話が採った方法は震災には逆効果だった。PHSは基地局を分散させなければならなかったデメリットが今度は逆にメリットとなった。
どっちが確実に良いという事はないだろうが、万が一に備えられるPHSは見直されても良いような気がする。
元々素性の良い方式でもある。個人的にはぜひ普及して欲しいデバイスである。