日本企業が液晶技術で隣国である韓国に負けている事は、既に周知の事実だが、ここにきてまたその差が開く可能性が出てきた。
韓国LG電子が世界最大の55インチ有機ELパネル搭載の3Dテレビを公開したのである。
有機ELパネルの特性は、着色されたパネル材(有機EL)そのものが発光する事による高コントラストであり従来の液晶のようにカラーフィルター越しの色合いではないという事と、パネル材が発光する事によるバックライト不要という観点から非常にパネルそのものを薄く作れるという所にある。
そのため、今回韓国LG電子より公開されたテレビは、そのパネルの薄さは4mmしかなく、重量も55インチでありながら7kgしかない。おそらくこの7kgには電源回路は含まれていないのではないかと思うが、それでも十分軽いと言える。
この公開された画像、なんだかハメコミ画像のように見えるが、これは高コントラストを謳う有機ELパネルの特性によるもの。理論上、コントラスト比は無限大で、それも有機EL材が自ら発光する事による恩恵である。
また、画像の女性が指さしている通り、厚みは4mmとかなり薄い。もちろんパネル部だけの話だが、主要ユニットを外部に持って行けば壁掛けなんてのもお手の物と言える。
価格がいくらになるか等はまだ発表されていないが、生産性もよく、不良率も少ない、おまけに製造コストも安い、と言っていることから、従来の有機ELパネルテレビと比較しても安い価格設定ではないかと思われる。
しかし…なんとも鮮やかなものである。
日本は、その世界傾向から大型液晶の開発を縮小している所がある。
2011年11月に誕生したジャパンディスプレイは産業革新機構(INCJ)とソニー、東芝、日立製作所がそれぞれ資本金をINCJ 70%、ソニー10%、東芝10%、日立10%を出資した新会社だが、その製品の中核は中小型液晶事業となる。これはスマートフォンやタブレットPCを視野に入れた結果と思われる。
もちろん、この方針が間違っているとは思わない。
中小型液晶分野では従来よりさらに高精細なパネルの市場要求があり、それは近年のスマートフォンの影響を見ていれば分かる通りである。
噂では、Appleの次期MacBook Proも今の液晶パネル解像度よりもさらに高精細なパネルを搭載して登場する…というものもあり、スマートフォンやタブレットPCのみならず、ノートパソコンやそれらに類する製品の液晶もより高精細化する方向に流れるかもしれない。
そう考えると、ジャパンディスプレイの方針も間違ってはいないが、技術的アピールで考えると、今回の韓国LG電子の製品はその上を行くものではないかと思う。
中小型液晶での高精細パネル製造が、より微細でより技術力が必要と分かっていても、55インチでの有機ELパネル搭載テレビの、しかも量産となるとインパクトは実に大きいと言える。
ジャパンディスプレイでは、有機ELも視野に入れていく事を表明しているが、これはあくまでも試作レベルの話であり、量産という話にはなっていない。
おそらく、有機ELパネル特有の“焼き付き問題”を解決しない事には量産化の話には移行しないのかもしれないが、ここでまた韓国に水をあけられた形になるだろう。
どちらにしても、私としては日本の技術をより世界に押し出していく方向に持って行かないと日本という国がダメになっていくように思えてならない。
資源があるわけでもなく、この先国民生産力があるわけでもない(少なくとも今は)。
であるならば、技術で勝負しないでどうするんだ? と思うワケだが…。
日本技術のブランド化となると、どうも日本人はやり方が下手で仕方がない。
そういうのを一手に引き受け、プロデュースする人は現れないものだろうか?
かのスティーブ・ジョブズのように…。