最近のPCの高速化でもっとも高速化が進んだのは間違いなくCPUをはじめとした半導体だろうと思う。
半導体の中で速度が今一つ上がらないのはメモリ関係だが、メモリに関して言えば速度もそうだがそれ以上に不揮発性メモリが話題に上るケースも多く、先日のエルピーダの発表が上手くいけば2015年くらいには不揮発性メモリが民生に降りてくるのではないかと思う。
メモリの問題よりも顕著に言われているのが、速度が上がらないハードディスクドライブ(以下HDDと略)である。
現在のHDDの速度はデータ記録密度と関係はあるものの、概ね7,200rpmでの回転が主流で、それにデータ記録密度が絡んだ数値となる。数年前には10,000rpmや15,000rpmのドライブもあったが、現在では主流とは言えない。
これらHDDの速度が上がらない所に登場したのがSSD(NAND型フラッシュメモリ)だが、これには書き換え回数の問題があり、現在では随分と改善されたとは言え、未だに問題となる部分である。
これらの技術ではこの先さらに高速化するニーズに応えるにはそろそろ限界が来る。
大容量と高速化。
この2点を達成する技術として研究が進められている技術の一つに“磁気の代わりにレーザーの熱を使ってデータを保存する”技術がある。
この技術は欧州とアジアの研究者からなる開発チームが研究しているもので、レーザーを使って2種類の素材の極性を変える事で0と1の記録を高速に可能にするという。
鉄とガドリニウムは「逆平行」(電荷が逆を向いている状態)に並んでいるが、レーザーを照射して熱を与える事で鉄がガドリニウムよりも速く脱磁し、温度が下がるときに電荷の方向が逆になる特性を持っているのだという。
しかも、これらの過程が5ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)以内に起こるとの事で、うまくすれば今のHDDよりも100倍以上高速化する事が可能なのだという。
WIRED Technology
http://wired.jp/2012/02/11/lasers-hard-drive/
ただ、この技術で高速化されるのは、あくまでも記録する部分の変化速度であって、もしこの変化する媒体が今のHDDのような円盤状であったなら、どうしてもレーザーを搭載したヘッドの動きと円盤の回転速度が関係してくる事に違いはない。これらメカ部分が正確に照射位置を特定するまでの時間が遅ければどんなに素材の変化速度が速くても記録そのものが高速化するというのとは意味が異なる。
また、ストレージからメモリまでの速度にも問題がある。これらはメモリコントローラーなどの速度にも影響するため、一概に高速化するとは言えない。
そう考えると、今のSSDの方向性はそうしたメカ部分を極力なくしている点で高速化が安定している事になる。
私が個人的にものすごく期待しているのは、先日発表されたエルピーダのReRAMである。
不揮発性メモリでDRAMのように扱え、それでいて書き換え性能でも優れているという点で、もしこれがストレージそのものとして利用出来るようなら、そもそもメモリとストレージを分ける必要がなくなるという点においても利点が多い。
問題は容量とコストの問題で、今のHDD並の容量が安価に確保できればこれらが実現される事になる。
考えてみれば、従来のPCの常識を覆す革命とも言える出来事が、期待されるワケである。
ま、どちらにしても今のままでは速度向上は望めない。
どちらの技術が本流になるにせよ、こういう技術には期待したいものである。
そして競争してどんどんと技術を高め、コストを下げていくことができれば、消費者が利便性を享受できるというものである。
未来の技術に超期待である。