Microsoftの薄型タブレット端末であるSurfaceには、2つのモデルが存在していた。
一つはSurface RTというARMベースのタブレット端末で、搭載されるOSはWindows RTとARM専用のOSが搭載され、アプリケーションも専用のアプリケーションでしか運用できなかった。だからこのSurface RTが出た時は、私自身どうでも良い製品の一つでしかなかった。
もう一つのモデルであるSurface Proは搭載されるOSがWindows 8で、いわゆるWindows搭載マシンと互角のプラットフォームになる製品。こうなると、Microsoft謹製のWindowsマシンであり、いわばOS供給メーカーの純正タブレットPCという事になる。
ハッキリ言って、これほど従来のWindows PCベンダーをバカにしたような製品は他にない。何しろOSのライセンス料金はMicrosoftが相殺しようと思えばいとも簡単にできてしまうワケで、PCベンダーからしてみれば、コストによる競争で絶対に勝てない製品が現れたという事になる。
実際、10.6型スクリーンと128GBのSSDを持ち、第3世代Intel Core i5を搭載する約907gのタブレットPCで99,800円という価格は、OSとOffice Home and Business 2013を搭載しているものとして考えれば他ベンダーではマネが出来ない価格ではないかと思う。もしマネが出来たとしても、原価率ギリギリのラインで利益が出るか分からないぐらいの価格になるのではないかと思う。
しかし、Microsoftからしてみれば、OSもOfficeも自社製品であり、そのライセンス料金をギリギリで設定できる為、この価格でも利益がそれなりに出るハズだ。
このSurface Proの投入によって、特に日本のPCベンダーは今後のノートPC及びタブレットPCの戦略を見直さなければならないと思う。もっとも、別の付加価値を付けられるという自信があれば、全く違う勝負に出てくるかもしれないが。
話変わって、実際にSurface Proという製品自体を見てみると、良く出来たタブレットPCと言える。Windows 8専用機として考えてしまえるほどのマッチングではないかと思う。
ただ、個人的にはこの厚みだけはちょっと厚すぎるだろ? と思わなくもないが、このナリでWindowsが使用できると考えれば十分なスタイリングかもしれない。
操作感はSurface RTとほとんど変わらないと言える。ただ、使い勝手は大幅に異なる。これでWindowsPCとしてフルスペックを備えているのだから。
このSurface Proの弱点はといえば、おそらくその駆動時間になる。4時間の連続駆動時間というスペックをどう受け止めるか? という事に尽きる。
もし他PCベンダーが、Ultrabookで勝負するならこの連続駆動時間の長さで勝負するしかない。フルHD液晶を搭載したタブレットPCと勝負するのだから、他のスペックで勝負するのは酷というものである。
日本で発売されるSurface Proは、新たに256GBのSSD搭載モデルが加わる。
正直、もう今の時代だとSSDと言えどストレージは256GBくらいは欲しいと感じるだろう。
私のデスクトップPCはメインメモリを32GB搭載しているせいもあって、ストレージに使っている128GBのウチ、Windows7インストール後に26~27GBほどしか空き容量が残らない(メインメモリが少ないとその分占有される容量が減る)。もちろん、マイドキュメントの中身を別のデータディスクに切り替えていても、である。安心感という意味で言えば、256GBは欲しいところだ。
256GBのSSD搭載モデルでも価格が119,800円。
やはり特別安いという感じはしないものの、バカ高いわけでもない。いや、Officeが標準インストールされていると考えればやはりお得といえるだろう。
ユーザー視点で考えれば、ありがたい商品には違いない。
そこそこの金額でOfficeスイートが含まれているWindowsマシンを購入する事ができるのだから、コストパフォーマンスは高い。
それだけに、このMicrosoftのSurface戦略で他のPCベンダーがどういう状況になるのかが気になる。ベンダーからすればMicrosoftの動向は裏切り行為のようにも見えるかもしれないのだから。
その一方で、日本のPCベンダーはもっとたくましい生き残り方をするのかな? という憶測も私にはある。
たとえばSonyのVAIO Duo11とか、NECのLaVie Xとか、東芝のdynabook kiraなどは、その商品そのものに付加価値がある。そうしたUltrabookとSurface Proを購入するユーザーが実際どちらを選ぶかは用途によるのだろうが、Windows 8そのものの使い勝手は、私的にはまだタブレット要素が少ないとみている。
だとしたら、従来のスタイルの方が使いやすい場合もあるだろう。そうした時、ユーザーはどちらを選ぶのか?
まだまだ国内PCベンダーにも戦えるチャンスはあると私は思う。少なくとも、私はIGZO液晶&Haswellを採用したLaVie Xが出たら、Surface Proよりもそちらを選ぶだろう。
兎にも角にも、今後のメーカー製Windows PCの動向が気になる所である。
ま、そう思う人ばかりではないとは思うが…。