2019年は左右分離型イヤフォンの発展の年になるか。
Android専用?
NUARLというところから左右分離型イヤフォンである「NT01AX」が昨年12月14日に発売された。価格は18,000円で、私が購入したJabra Elite Active 65tよりも安い価格となっている。
この「NT01AX」は、Qualcommの音声伝送技術である「TrueWireless Stereo」という仕組みで稼働する製品だが、実はその先の技術である「TrueWireless Stereo Plus」という次世代技術に対応している。そもそも、左右分離型イヤフォンは左右どちらかのユニットと音楽を再生するデバイスが通信し、受信した左右どちらかのイヤフォンは音を再生しながら反対側のイヤフォンへ音声を送信するという仕組みを持つ。これは現在のBluetoothの仕様では再生機と受信器が1:1でペアリングするからであり、左右の音を分けて伝送する事ができないからである。
Qualcommの技術である「TrueWireless Stereo」という技術は、このBluetoothの仕様に沿った伝送しかできないのだが「TrueWireless Stereo Plus」は、左右の音をBluetoothで別々に伝送する方式を可能にした技術で、これによって左右の音途切れを無くしている。
だが、そもそもこの「TrueWireless Stereo Plus」は、送受信双方にQualcomm製の対応SoC(システム オン ア チップ)が必要で、音楽を再生するデバイスにもQualcomm製のSoCを求める。
つまり、左右分離型イヤフォンを使って左右別々に音楽再生機とBluetoothで接続する事ができるのは、現時点ではAndroid対応機器しか存在しないという事になる。
昨年発売していた事を知っていた私が、この「NT01AX」を選ばなかった最大の理由は、まさにAndroidでしか利用できないという制限があったからに他ならない。
メリット
TrueWireless Stereo Plusの最大の利点は、左右分離型イヤフォンの双方が通信するため、片側に機能を集中させる必要が無い事によって、ユニットの内部を左右対称に構成できる事にある。
この左右対称に構成できる事によって、搭載するバッテリー容量も同一化できるし、設計を単純化できるというメリットが生まれる。
私が購入したJabra Elite Active 65tは、右ユニットが再生デバイスとペアリングし、右ユニットが左ユニットに音声データを送信する、従来と同じタイプのものである。但し、左右のユニット間の通信はBluetoothではなくNFMIという医療系の電磁誘導通信なので、それで左右間の通信は途切れにくいという特性を持っているが、右ユニット内に機能が偏っている事は否めない。
使う側から考えて見れば使えれば違いはない、と思うかもしれないが、左右ユニットの内部を同一化してバッテリー容量を少しでも大きくできれば、稼働時間を延ばすこともできるので、製品としてのメリットは大きい。
2019年は左右分離型イヤフォン
NT01AXの音質に関しては、実際に聞いた事がないので私からは何も言えない。
ただ、ノイズキャンセリング機能はないし、BAユニットを持っているわけではないので、音質としては無難なラインで構成しているのではないかと予想している。ただ、振動板に硬質炭素素材のグラフェンをコーティングしているというので、高音域の再現性や応答性は良いかも知れない。
また、コーデックはSBC、AAC、aptXに対応しているので、コーデックによる音質劣化は少ないと考えられる。これらを考えての総合的な音質は、可もなく不可もなく、といった所だろうと思う。
2019年は、前述のQualcommの「TrueWireless Stereo Plus」対応のSoC、特にSnapdragon845や855が普及していくだろうから、Android勢で「TrueWireless Stereo Plus」対応機種がドンドンと増えていくように思える。
今までは音切れ耐性の問題で良い製品が限られるといった現象が起きていたが、少なくともAndroid勢はその制限がなくなりつつあるので、今後に期待ができそうである。
ちなみに私が使用しているJabra Elite Active 65tだが、私として音切れを経験した事は一度もない。ただ、iPhoneXとJabra Elite Active 65tの通信に途切れが出た事はある。おそらくそれは人混みの中でのBluetoothそのもののチャンネル問題だろうと思える。多くの人で2.4GHz帯を使っていれば、チャンネルも足りなくなるのは当たり前の話。そもそもの問題なので、私としてはJabra Elite Active 65tには何ら不満はない。
というわけで、私は新しい左右分離型イヤフォンを買替える事はないが、今、何を買おうか迷っている人は、今後登場するであろう製品を待ってみるというのも一つの手かもしれない。
まぁ対象となる製品が増えて余計に迷うという可能性もあるが、今後はペアリングの方式にさえ気を配って入れば、音切れ耐性は気にしなくても良くなるかも知れないので、そういう面ではメリットがあると言えるだろう。