ホントに普及させて問題がないのか?
5Gが実用化されると
ケータイとよばれる端末を使っていた人からすると、現在のスマートフォンが当たり前の状況になっている時代を顧みると、相当な進化を遂げ、また便利な時代がやってきたという感じを受ける。
今当たり前に普及している4G LTE技術でも、理論値では100Mbpsの移動通信が可能であり、通常使う分には何ら問題のない環境ではある。
だが、そうした通信網を使い始めた人が爆発的に増えた事で、当然だが通信トラフィックは過去5年間で10倍、来年には1,000倍に達すると言われ、既に帯域が余っている時代ではない事が見えている。
まして2020年に行われる東京オリンピックを目前にし、世の中では4K/8K映像の配信が期待され、またIoTという全てのモノがインターネットに繋がる時代を目指している関係から、大手通信事業者は10Gbpsレベルの通信速度を現実にすべく、第5世代移動通信システム「5G」のサービス提供をするべく、環境を整える事に躍起になっている。
5Gは4G LTEと比較してより高い周波数帯域を利用して通信を行うが、より高い周波数帯のマイクロ波を使うという事は、電波の直進性が高まる事から、基地局の影では電波が届きにくくなり、多数の小型基地局(これをマイクロセルと言う)を数十メートル単位で設置する必要がある。このため、設置コストが莫大なものとなり、携帯端末の消費電力も増えていくことが予想される。5Gを普及させていくとなると、これらは避けて通れない。
だが、そもそも4K/8Kでの映像配信は、移動通信システムとは無縁だと言える。
固定回線であれば4K/8Kの映像配信の恩恵は十二分に受けられるだろうが、移動通信システムで主に使われるスマートフォンでは、そもそも映像として4K/8Kが求められていない。
それなのに何故か世間では移動通信システムの「5G」が騒がれている。時代は有線ではなく無線だという事なのかもしれないが、「5G」を急ぐべき根拠としては些か弱いように思える。
健康被害?
そんな折り、「5G」に関しては由々しき情報が流れた。
アメリカの3大テレビネットワークの一つであるCBSのサクラメント局が5Gサービスの提供が健康リスクをショウジさせる可能性がある、と報道したのである。
同市は最初の5Gサービス提供の都市となるべく試験運用を行ってきたが、どうもアンテナから発生する非電離放射線が人体に悪影響をもたらす可能性があるというのである。
サクラメントの消防士たちが、消防署の外に5Gアンテナ設備が建てられた事で頭痛や不眠だけでなく、記憶障害と意識障害を訴えたというのである。
これが5G設備の影響であると確信したのは、近くに5G設備のない別の署に勤務地が変わった事で、消防士の症状が治まってしまった為である。
また、この問題が発生した消防署で計測した非電離放射線レベルは、FCC(連邦通信委員会)が安全とした上限値の僅か1000分の1から500分の1の値だった。つまり限界値ギリギリだったワケである。
ケースバイケースかもしれないが、確実に安全だとしていても、少なからず影響を受ける人は出てくると見て間違いない話なので、これは「5G」の普及に対して懸念すべき問題である。
それでも普及する
こうした問題が出ているにも関わらず、「5G」の普及は止まらないだろうと考えられている。
それはその後ろに控えている次なるサービスの市場が大きいからで、通信事業者からすれば、そこに多額の金の成る木があれば、多少の問題があろうとも突き進む事になる。
ましてそれが米国ならばなおの事である(言い過ぎかもしれないが)。
何故米国ならばなおの事なのかというと、日本ほど光ファイバーの敷設が進んでいないからである。日本はダークファイバー(使われていないとされる光ファイバー)の存在があるほどだが、米国ではインターネットの利用にケーブル回線が未だに使われる傾向にある。その為、大容量データを超高速伝送可能な回線整備する必要性は常に課題になっていたのだが、広大な国土を持つアメリカで光ファイバー敷設工事を行うとなると、日本と比ではない莫大な費用がかかってくる。それを無線技術で実現できるなら、そちらの方が最終的には費用がかからないという判断ができるわけである。
だから「5G」の普及はおそらく止まらない。いくつかのアメリカの州では、健康被害を考慮した対応が行われるだろうが、行政レベルで「5G」普及の動きを見せているので、最終的には普及するのではないかと予想される。
日本は、米国のトレンドに追従する事になるだろうから、これまた普及は止まらないものと考えられる。
もっとも、人体への影響が少ない周波数帯を探るという努力は行われるだろうが、方向性としては変わらないと私は思っている。
5Gの次の6G
通信業界では5Gのさらに次の世代である6Gを目指した研究が始まっている。
速度にして100Gbpsというデータ伝送技術を当たり前にした世代だが、その市場への登場時期は少なくとも2030年代になると言われている。
その際使われる周波数帯は300GHz帯とか3桁GHzの領域に突入すると考えられるが、その時、人体への影響がどうなのかという検証は、今以上に必要になるだろうと思われる。
NTTでは既に実験ではこのデータ伝送には成功していて、6Gでは最終的には1Tbpsを越えるデータ伝送が求められるとされている。
まだまだどんな仕様になるのか等の話ができるレベルのものではないが、少なくとも今5Gで問題視されている事が浮上するようではお話にならない。
何と言っても、使う周波数帯が今とは比べものにならないくらいの高周波なので、どのような問題が浮上するかなど、全てが分かっていない。
5Gである程度問題が浮上すれば、電波そのものへの見方も変わるかも知れないが、商業ベースで全てを語る時代にはなってほしくないものである。