Googleは「Stadia」で、自社スタジオを解散する事を発表。
解散
Googleが2月1日(現地時間)、クラウドゲーミングサービス「Stadia」において、自社開発スタジオである「Stadia Games and Entertainment」を解散する事を明らかにした。
Googleが「Stadia」を縮小する、という事ではなく、「Stadia」そのものへの投資やサードパーティとの関係構築に注力している事は間違いなく、だが指数関数的に上昇するゲーム制作のコストを鑑みて自社スタジオの閉鎖を決定した、との事である。
「Stadia Games and Entertainment」のMemberは今後数ヶ月の間に別の役割へと異動・移行する事になり、チームリーダーだったJade Raymond氏はGoogleを退職する事となる。ちなみにJade Raymond氏は「アサシン クリード」の元プロデューサーである。
「Stadia」そのものはサービス継続され、今後もサードパーティから新たなゲームが提供される予定である。
一見して自社製作スタジオを閉鎖はするがサービスは継続するという単純な話に聞こえるが、実はそう軽いものではない、と私は見ている。
時代は変わる?
今回の件は、単純に言い換えると任天堂が自社によるゲーム開発を辞める、という事であり、ソニーが自社プラットフォームのソフト開発を辞める、という事ど同義である。
いや、それ以上の問題と捉えたほうがいい。何故なら、Googleはプラットフォームハードウェアを持たないからだ。多数が接続するサーバやネットワークインフラをGoogleは持ってはいるが、各クライアントとなるハードウェアとして持っているのはコントローラだけである。
自社ではプラットフォームだけを提供し、中身のゲームはサードパーティに全て委ねる…これは今までのコンソールゲーム機を提供してきた会社では考えにくいパターンである。いや、ひとつあるとすれば、それはスマートフォンのゲーム開発に近いかも知れない。
この体制を悪い体制だという事はできないが、少なくともファーストパーティによる開発がなくなる事で、もっともハードウェアを活かした開発がなくなる事は間違いない。
今後、この体制が「Stadia」自身にどのような影響が出てくるのかは非常に興味深い。何と言っても今までではあまり見ない体制だからだ。
もし、Googleのような体制が成功例を見出したなら、急激にグローバル化が進んでいるPlayStation系列などはそれに準じるようになるかもしれない。
指数関数的
今回の記事に「指数関数的」という言葉を使ったが、これは意味として言えば「爆発的」という表現と同義である。
つまりGoogleはゲーム開発は期間と予算が莫大にかかるため、Googleがもつリソースをゲーム開発ではなく、プラットフォームの改良やサードパーティへのパートナーシップ強化に集中させる、という事を言っている。
だがこの言葉は詭弁ではないか?
Googleは臨機応変な経営判断や失敗から学ぶサイクルの早さでは群を抜く企業として有名である。この見切りの早さをサードパーティはどう捉えるだろうか?
1980年代のゲーム開発と、現在のゲーム開発を比較すると、そこに必要となる予算には大きな隔たりがある。
最近のゲーム機の表現力の上昇は、明らかに開発費が爆発的に上昇する傾向が見て取れる。だから昔からゲーム開発していたメーカーにしても、現代のゲーム開発の手法を見直してきたメーカーは多数ある。日本なら、コナミなどは良い例だと思う。
昔はクソゲーと呼ばれるどうしようもないゲームを作ったとしても、そこで売れなかった被害はまだ小さい枠で収まったが、今の時代はその枠がとてつもなく大きくなり、大規模ゲームが失敗する事の損失は計り知れない。
つまり、Googleが執った判断は、プラットフォームで確実に稼げる道を採り、売れるかどうかわからない博打的要素のゲーム開発を外部に委託した、という言い方もできる。
大規模投資が可能なGoogleならではの狡猾さ…今回の判断は私にはそう見えてならない。
どちらにしてもまだ日本ではサービスも開始されていない「Stadia」だが、開始して早々のウチにこのような大規模な変化が訪れた。
今後の展開はとても興味深いものになるだろう。