Ryzen5 7600Xにて一割程度の性能差が出る当たり外れが確認されたとか。
個体差があるのは当然だが…
CPUは生鮮青果と同じだと言った人がいた。
何を言っているんだという人も居るかもしれないが、青果と同じほど一つのまとまりから作られるCPUの個体性能はバラバラで1つたりとも同じモノはない、という意味で青果に例えられるのだが、この話を本当の事と考える人は案外と少ない。
半導体製品が青果と同じ…にわかには信じられないという人も多いわけだが、1本の木から取れる果物の糖度がバラバラのように、1枚のシリコンウェハからとれるCPUもまた、全てが同じ性能を持つものではない。
理由は、シリコンウェハを製造する際に化学薬品を注入して半導体(条件によって電気を流したり流さなかったりする特性)にするのだが、この注入する薬品をシリコンウェハにできるだけ均一に注入するようには製造しているものの、なかなか確実に均一化できない問題があり、一枚のシリコンウェハの部分によって電気特性のよい個体もできればよくない個体が出来たりする。
通常はそれを性能別により分けて、さらに有効化するコアの数などを揃えてIntelならCore i7やCore i5、AMDならRyzen7や5といったCPUに利用していく。
AMDはCCD毎にそうした違いを有効活用できる仕組みなので、時にはCCDの中でも活かせないコアが含まれているものが見つかればRyzen9 7900Xに搭載してみてCCD 1個あたり6個活かせるコアとして利用したり、と歩留り向上に役立てている。
コアが有効化できるかできないかだけでなく、電流を流した時により温度が上がりやすい個体は高クロックCPUには利用できないところもあるので、そうした特性に合わせて商品ランクを変えて製品化している。
だから、総合的に見てCPUには当たり外れは確実に存在してしまうのだが、品質管理上、それらをできるだけ均一化する事で、ブランドを維持するのが常である。
ところが…私がよく見るサイトの一つで、個体差では説明が付かないほどの差が生まれた記事が掲載されていた。
性能差5~8%
前述記事によると、Ryzen5 7600Xにおいて、同一型番のCPUで性能差が5~8%にも及ぶ個体が確認されたという。
実動クロック5.4GHz前後のものもあれば、5.0GHz前後という違いであり、自費で追加購入して調査した結果でもバラツキが出たというのである。
しかも雑誌レビューで使われた個体だけが特別によい性能を見せているなら、メーカー側が選別したものを特別用意した、という事も考えられるが、普通に店頭購入したものの中で、性能が出ているものとそうでないものが確認されている。
さらに、生産国は中国、マレーシアと複数にわたっているが、この生産国の違いで性能差が出ているわけでもなさそうで、どういった条件で性能差がでているのかが今一つわからないようである。
性能が伸び悩む個体は、CPU温度も上がりやすい傾向にあるようで、特に温度でクロックを絞るという特性を持つZen4なだけに、顕著に性能差が出ているのかもしれない。
7600Xだけの問題なのか?
この話を聞いて真っ先に思うのは、Ryzen5 7600Xでだけの話で済むのか? という事である。私が使用しているのはRyzen7 7700Xだが、これにも同じ事が言えるような気がしてならない。
私が使用しているRyzen7 7700Xの動作温度をモニタリングしていて思ったのは、あまり負荷を掛けていないからかもしれないが、動作温度の上がり具合がかなり穏やかで低いという事だった。
電力制限設定をドノーマルに戻してテストした時でも、情報誌などで言われているほど温度が高いイメージがなかった。もちろん、FF14ベンチなどでぶん回せばそれなりに温度は上がるし、それに合わせてCPUクーラーの動きも大きくなるのだが、私のイメージでは比較的大人しい感じだった。
レビュワーに配られる個体の性能が悪い事はないと思われるので、私の使用している個体がレビュワーの個体を上回る個体になるという事は考えにくいが、おそらくは同程度の性能が出ている個体なのかもしれない。もっと詳しく調べてみる必要はあるが、このように調べてみる必要があるなどと言っている事に問題がある。
ほとんどの消費者にしてみれば、このレビュワーの情報を信じて製品の購入を検討しているわけで、それがアテにならないという事は、AMDの消費者に対する裏切りみたいなものである。
AMDの品質管理はどうなっているのか?
どういった経緯でこのような事になったのか、より詳しい話が聞きたいところである。
正直、この結果に納得できる説明がなければ、AMDはこういう事はしないだろうと私も思っていただけに、とても残念な現状結果である。
できるなら、AMDからの正式な見解を聞きたいところ。
一体どういった品質管理体制なのか、またどの程度を性能のバラツキを製品ブランドに課しているのかなど、聞きたいと思っている人も多いのではないかと思う。