37年後の新規格。
音楽系統合規格
一般社団法人音楽電子事業協会、通称AMEIが、米国のMIDI管理団体であるMMA(MIDI Manufacturers Association)と協議してきた5つのMIDI 2.0主要規格書を承認し、この規格書一式を無償公開した。但し内容は英文表記である。
MIDI 1.0が規定されたのが1983年なので、実に37年後に新規格が登場した事になる。
かつてDTM(Desktop Music)という言葉が流行った時期があるが、その時はGeneral MIDI規格以外にもRolandのGS規格やYAMAHAのXG規格が存在し、GS規格もXG規格も内部にGM(General MIDI)の要素を含んでいたとはいえ、大きく拡張された規格だった事から、規格そのものが乱立した時代があった。
GM規格に準じて作られたMIDIファイルをスタンダードMIDIファイル(SMF)というが、この規格が登場した事で、GM規格に準じた音源を持つ者同士が楽曲データを共有する事が可能になり、音楽の世界は飛躍的に進歩した。
GS音源やXG音源は、そのGM規格を取り込んでいたのでSMFを鳴らす事はできたが、GS音源のファイルをXG音源で聞くと、GS規格で拡張された部分には共通性がないため、完全再現はできず、その逆もまた然りであった。
ただ、これらのGM、GS、XGといった規格は、その後に発展するPCの性能向上の影に隠れてしまった。というのは、音の生データ(オーディオデータ)をそのまま扱えるほどPCの性能とメモリ及びストレージ容量が増えた事で、MIDI規格そのものの有用性が以前ほど高まらなくなったのである。
ただ、外部音源を扱う場合に於いて、やはりMIDIという規格そのものには有用性があり、今回MIDI 2.0を策定するにあたってはMIDI 2.0機器間での双方向通信を実現させている。
これにより、例えばA機器からB機器に対して特定のMIDI 2.0機能への対応状況や設定値などを問い合わせて取得し、接続されたA-B機器間の設定を自動的に行なうといった自動セットアップ機能も実現可能になるわけである。
また、MIDI 2.0はMIDI 1.0の後方互換性も盛っているので、双方向通信ができない場合には通信相手がMIDI 1.0機器であると判断し、MIDI 1.0のプロトコルで通信するようになっている。
時代に合わせた変化点ではあるが、これによって複数の機器を扱うにあたって、大きく便利になる事は間違いない。
より繊細になった
また、MIDI 2.0では扱うパラメータの粒度も随分と細かくなっている。
従来より分解能の高いベロシティやコントロールデータを扱う事ができるようになり、その表現は以前のものより大きく進化したと言える。
例えば、分解能が8bitデータの場合、その変化の区切りは8段階でしか分けられなかったものが、16bitだと16段階になるわけで、単純に2倍の分解能で滑らかさが表現されるようになる。これと同じ様な事がMIDI 2.0のデータには含まれたというわけである。
オーディオデータを直接扱えるようになると、音源データを別々にオーディオデータ化して後から全てを統合する、なんて事が簡単にできるようになったワケだが、それだと編集データは膨大なものになる為、扱う機器の負荷は当然大きくなる。だが、MIDI 2.0なら、細かい指示を出す事で、機器コントロールをより粒度の高い精度でコントロールし、各機器の負荷を大きくせずに編集できる。そういったメリットを、MIDI 2.0では可能にしたわけである。
この意味はとても大きいと言える。
MIDI 2.0規格に準じた機器がいつぐらいから登場するのかはまだ分からないが、あらゆる機器がネットワークにつながり、統合コントロールできるようになるメリットは、音楽を本業にしている人からすると計り知れないモノがある。その分、予算もかかるかもしれないが、コンピュータのパワーで押し切る必要がなくなる要素がある事を考えれば、普及は順当に進んで行くのではないかと思う。
…ま、個人ではあまり大きな意味はないかもしれないが(爆)