22年ぶりのIntel製dGPU

外付け(dGPU)といってもTiger Lake向けの内蔵GPUを採りだしたものなワケだが。

Iris Xe

Intelが開発コード「DG1」として開発を続けていた薄型ノートPC向けディスクリートGPU「Intel Iris Xe MAX Graphics」を正式発表した。
久々の単体Intel製GPUIntelという企業がディスクリートGPU(dGPU)を提供するのは、1998年に発表されたIntel 740以来の話で、当時はまだGPUという名称すら確定していなかった時代である。
今回発表された「Intel Iris Xe MAX Graphics」は、Tiger Lake、つまり第11世代Coreの内蔵GPUユニットである「Iris Xe」を抜き出して単体チップとした製品と言い換える事ができる。なので性能的にはCPU内蔵GPUと同程度とみることができるが、実行ユニット(EU)はCPU内蔵時は48基のものも存在するが、今回の「Intel Iris Xe MAX Graphics」は96基が内蔵されたものになり、性能的にはハードウェアエンコード/デコード性能が従来製品の2倍を保持していると言える。
また、特徴としてDP4Aと呼ばれるFP32をINT8に置き換えてディープラーニングの推論を行う「DL Boost」に対応し、PCI Express4.0にも対応している。
CPU内蔵のGPUともう一つ大きな違いは、最大で68GB/sのメモリ帯域をもった専用のVRAMが4GB用意されているという事である。ノートPCに搭載するiGPU(内蔵GPU)では、メインメモリの一部をVRAMとして使用する事が前提になるので、専用のVRAMを持つ事でメモリアクセスはかなり有利になると考えられる。但し、メモリコントローラーはTiger Lakeのメモリコントローラーと同等で128bit(実際には64bitのデュアルチャネル仕様)幅となる。
また外付けとした事で動作するクロック周波数も引き上げられている。内蔵のIris XeではTurbo Boost有効時でも最大1.35GHzに留まるが「Intel Iris Xe MAX Graphics」では最大1.65GHzへと引き上げられている。
NVIDIAやAMDのGPUのハイエンド製品とは比較できない製品だが、ノートPCクラスで運用するGPUとしては、違った性能指標となる為、有意義といえるかもしれない。それは次に説明する「Deep Link」とも密接に関係していると言える。

Deep Link

「Intel Iris Xe MAX Graphics」は、現状では第11世代Coreとの組合せで提供される。
もともと第11世代Coreには内蔵GPUも含まれているので、何故に外付けGPUが組合せで提供されるのか疑問に思う人もいるかもしれないが、セット利用する事でいくつかのメリットが実現するという。
このメリットは、実は私が昔から望んでいた事であり、CPUの中にGPUを内包した頃から実現するとよいと思っていた事でもある。
それは、CPUに内蔵されているGPUと、外付けGPU(ここでいうIntel Iris Xe MAX Graphics)が協調して動く仕組みで、ソフトウェア的なフレームワークとハードウェアの両面でそれぞれのGPUを使って演算したり、電力をより効率よく使って性能を向上させたりする仕組みの事である。
現状そのメリットとして言われているのは、以下である。

1.CPUとGPUで電力を動的にシェアして両者の性能を最大限引き出す。
2.AIアプリケーションでの性能向上
3.内蔵GPUしと外付けGPUでメディアエンコードを高速化

私は常々、CPUに内蔵されているGPUを深層学習などに利用しつつ、画像処理を外付けGPUに行わせるという合わせ技ができないか? と考えていた。AMDのRadeonなどでも内蔵GPUと外付けGPUの連動を実現させる技術Hybrid CrossFireがあったが、結果的にあれは低性能のGPUを多重化させて性能を引き出す技術だった。最終的に高性能GPUで演算させた方が性能を引き出せた事から、あまり効果のあるものではなかった、という結論に行き着いた経緯がある。
しかし、今回の「Intel Iris Xe MAX Graphics」は前述の3つのパターンに関して内蔵と外付けのそれぞれのGPUがかなり密接に連動するように設計されている。かつてのAMDのHybrid CrossFireより、余程高速処理が可能になっていると言える。
絶対的な性能はそう高くない「Intel Iris Xe MAX Graphics」としては、ノートPCのような限られたリソースの中で実現するGPU処理としては「Intel Iris Xe MAX Graphics」は有効といえるかもしれない。

この先のIntel GPU

Intelはこの先GPU分野としてどのような方向で動いていくのだろうか?
現時点ではノートPCに内蔵されているような小規模なGPUの開発に留まっているが、開発を進めていけばいずれは高性能なGPUへの開発へと進んで行くかも知れない。
現在、GPU分野ではNVIDIAとAMDの2大メーカーがその覇権を争っているところだが、これにいずれIntelが飛び込んでいくことになるのかが気になる所である。
個人的にはIntelの高性能GPU開発への参加は喜ばしいと思っているが、いきなり参加して他メーカーと対等に渡り合えるかと言われればそれは難しい話。
なので、徐々にその性能と精度を高めていくかのように市場へGPUを投じていくだろうと考えられる。その第一弾として「Intel Iris Xe MAX Graphics」が投入され、試験的にいろんな機能を実装して便利に使える機能を盛り込んでいるものと思われる。
ちょうど、今回のRadeon RX 6000シリーズの「Rage Mode」と呼ばれるオーバークロック機能とスマートアクセスメモリという機能をCPUと連動させて実現したように、CPUを開発するIntelがCPUとGPUの合わせ技で実現可能とする機能をもってNVIDIAに対抗していく姿が予想できる。AMDは…既にその方向に進んでいるので、それに追従する、という言い方が正しいのかもしれない。

というわけで、Intelも遂に動き出した、という感じか。
この先、数年後にはなるだろうが、GPU分野で今とは違う市場が形成されている事を楽しみにしたい、そう考える人も多いのではないかと思う。私もその一人である。

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武上

18歳の時、人生の最大の選択ミスをしてしまい、いきついた場所として山梨県人となる。 その後、建設業に身を投じ、資格をいくつか取得するものの、結局自分の性格と合わない事を理由に上京。 上京後、世間で話題になりつつあったアニメ・ゲームを主体とする業界の人間となり、デジタルコンテンツ業界を含む数々の著名人と同じ土俵でマルチメディアな仕事をするに至る。 一見華やかなメディアの世界の、その闇の深さたるやハンパない事こそ世間に何となく知られてはいるが、業界人しか知らないその氷山の全体像を十分すぎるほど目の当たりにした後、家庭の事情で再び甲州へと帰還。 しかし、この帰還も人生の選択ミスだったかもしれないなぁ…と今では思うものの、時既に遅し。 今は地元の製造業を営む会社の総務・品質保証という地味ではあるものの堅実な職につき、いつか再びやってくるだろう夢の実現を信じて隠者的生活を送っている…ハズだったのだが、またしても周囲の事情で運命は波乱の様相を見せ始めた。 私の人生は一体どの方向を向いているというのだろうか? ちなみに筆者はPCとの付き合いはかなり長いと思っている。 古くはPC-8801 mk2 SR、X1 Turbo、X68000、FM-Towns、PC-9801シリーズ(互換機含む)、PowerMAC 9500等をリアルタイムで使い、その後は、Windows PCの自作機を中心に現在に続いている。 デジタルガジェットに関しては興味もある事から、その時代の時々において、いろいろ使ったり調べたりして、専門家ほどではないが知識は蓄えてきたと思っている。 そうした経験を元に、今の時代へ情報発信させてもらっている。少々くどい言い回しが多いかも知れないが、お付き合いいただけるとありがたい。 連絡先:takegami@angel-halo.com (@を小文字にしてください)

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